
CLP規則、二酸化チタン粉末の「発がん性:カテゴリー2」としての調和化分類を無効とする欧州連合司法裁判所判決
弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「欧州連合司法裁判所、二酸化チタン粉末のCLP規則に基づく「発がん性:カテゴリー2」としての調和化分類が無効であると判決」について紹介します。
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欧州連合司法裁判所(CJEU)は2025年8月1日、「規則(EC) No 1272/2008(CLP規則)」に基づく二酸化チタン粉末の調和化分類に関する上訴審(C‑71/23 PおよびC‑82/23 P)において、2022年11月23日に下された一般裁判所の判決(第一審判決)を支持し、フランスと欧州委員会の訴えを棄却する判決を下した。CJEUによる裁判は二審制であり、上訴審での棄却により第一審判決が確定となる。すなわち、2020年2月18日に公布された「欧州委員会委任規則(EU) 2020/217」における「直径10 μm以下の粒子を1%以上含有する粉末状の二酸化チタン」の「発がん性:カテゴリー2」としての調和化された分類および表示に関する部分は、2025年8月1日をもって無効となる。
本裁判の経緯を以下にまとめる。
- 2020年2月18日、「直径10 μm以下の粒子を1%以上含有する粉末状の二酸化チタン(二酸化チタン粉末)」を「発がん性:カテゴリー2」に分類し、ハザード情報および警告表示を義務付ける「欧州委員会委任規則(EU) 2020/217」が公布された。
- CWS Powder Coatingsは、「当局による二酸化チタン粉末の発がん性評価には誤りがある」として、上記規則のうち二酸化チタン粉末の調和化分類および表示に関する部分の取り消しを求め、2020年5月12日にCJEUに提訴した(T-279/20)。同様の内容で、2020年5月13日にBillions Europeを含む8社が提訴(T-283/20)、さらにBrilluxおよびDaw SEが提訴した(T-288/20)。
- CJEUの一般裁判所(通称ECG)は2022年11月23日、上記3件の訴えに基づき、二酸化チタン粉末の調和化分類および表示に関する部分を無効とする判決を下した(第一審判決)。判決の理由として、「分類の根拠となる研究データと評価に明らかに誤りがある」、「CLP規則の分類クライテリアに違反している」とした。
- 二酸化チタン粉末の調和化分類の提案国であるフランス、および欧州委員会は、第一審の判決について、データに基づく根拠の確実性、法的正当性、ECGの越権などを理由に、2023年2月8日および2023年2月14日にCJEU対して第一審の判決を取り消すよう上訴した(C‑71/23 PおよびC‑82/23 P)。
- CJEUの司法裁判所(通称ECJ)は2025年8月1日、第一審の判決を支持し、フランスおよび欧州委員会の上訴を棄却する判決を下した。棄却の理由として、フランスおよび欧州委員会の主張は「理由として不適格および根拠がない」とした。
EnviX解説
本判決に基づき、二酸化チタン粉末の“「発がん性:カテゴリー2」としての調和化分類、およびそれに関連する義務”が無効化される。すなわち、CLP規則に基づく義務のほか、「発がん性:カテゴリー2」としての調和化分類を参照するその他の指令/規則における義務も無効となる。例えば、「発がん性:カテゴリー2」の物質は、「規則(EC)1223/2009(化粧品規則)」に基づく化粧品への使用の禁止、および「指令2009/48/EC(玩具安全指令)」に基づく玩具への使用の禁止が適用されるが、二酸化チタン粉末については、本判決に基づき、これらの禁止措置の適用から外れることになる。
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欧州連合(EU)の環境法・環境規制動向
欧州連合(EU)の化学物質規制情報に関連する製品を下記に紹介します。
規制分野 | 製品区分 | 製品・サービス名 | 発売・更新日 |
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全般 | 法体系ガイド |
![]() 英語情報とはいえ、その情報量の多さ、複雑さ、活発な動向から、体系的な把握が難しいEUの環境法体系を把握する一助となるよう作成されたガイドとなります |
2018年10月17日 |
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化学物質 | 法規和訳 |
![]() 食品接触材料を取扱う企業の担当者の方にとって重要なプラスチック規則、適正製造規範規則/GMP規則、再生プラスチック規則を修正する規則。 |
2025年3月21日 |
法規和訳 |
![]() 2025年1月20日発効。欧州委員会規則(EU) 2024/3190の前文24件、条文14件、附属書3件の参考和訳と解説を提供。 |
2025年1月9日 | |
法規和訳 |
![]() 2024年3月25日にWTO/TBT通報、意見提出期限は2024年5月24日です。 |
2024年4月5日 | |
法規和訳 |
![]() 2011年1月15日付け官報公布、2011年5月1日適用開始、「食品に接触することを意図するプラスチック材料及び製品に関する2011年1月14日付け欧州委員会規則(EU) No 10/2011(欧州経済領域に関連する法文)」。 |
2024年4月5日 | |
法規和訳 |
![]() 2006年12月29日付け官報公布、2008年8月1日適用開始、「食品に接触することを意図する材料及び製品の適正製造規範に関する2006年12月22日付け欧州委員会規則(EC) No 2023/2006(欧州経済領域に関連する法文)」。 |
2024年4月5日 | |
法規和訳 |
![]() 2004年11月13日付け官報公布「指令80/590/EEC及び指令89/109/EECを廃止する食品に接触することを意図する材料及び製品に関する2004年10月27日付け欧州議会及び理事会規則(EC) No 1935/2004」。 |
2024年4月5日 | |
報告書 |
![]() 複雑で理解が困難なREACH規則の基礎を解説する音声付き資料です。「高懸念物質(SVHC)」、「認可対象物質」および「制限物質」とは何か、これら物質に規定された場合の義務について説明しております。 |
2023年1月31日 | |
報告書 |
PFAS規制解説レポート
欧米のPFAS規制対応のための情報源としてご活用ください。各PFASの規制内容については、解説に必要な範囲で原文および和訳の対照表(必要に応じて草案を含む)を記載。 |
2021年10月11日 | |
法規和訳 |
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2020年11月9日 | |
法規和訳 |
![]() 2021年8月5日付け欧州連合官報。当該規則は2021年8月25日に発効し、2023年2月25日から適用が開始される。 |
2020年10月1日 | |
法規和訳 |
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2020年7月13日 | |
法規和訳 |
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2014年5月14日 | |
法規和訳 |
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2013年11月13日 | |
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2013年11月13日 | |
法規和訳 |
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2013年5月9日 | |
法規和訳 |
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2013年4月22日 | |
法規和訳 |
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2013年3月5日 | |
法規和訳 |
![]() 2012年12月12日改訂。改正RoHSの要求と狙いについて理解を助けるため資料です。 |
2013年1月9日 |
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海外環境規制トレンド・レポート
下表は欧州連合(EU)の化学物質規制情報に関する報告書の一覧です。
規制分野 | 規制テーマ(報告書の名称) | 更新日 |
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化学物質 |
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2024年4月5日 |
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2023年6月22日 | |
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2021年11月8日 | |
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2021年11月7日 | |
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2021年11月6日 | |
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2021年11月5日 | |
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2021年1月9日 | |
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2020年10月1日 | |
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2020年10月1日 | |
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2020年8月12日 | |
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2020年7月4日 | |
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2018年12月1日 | |
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2018年12月1日 |
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