米国 米国の主要規制テーマ

米国 プロポジション65

EnviXは「米国 プロポジション65」について、規制動向の調査報告書を作成・提供しております。

基本情報・概要

1986年11月4日、米国のカリフォルニア州においてInitiativeと呼ばれる直接立法型住民投票により成立した法律。「プロポジション65」(Proposition 65)とはその際の提議番号で、現在も法律の通称として用いられている。

この法律は、主に以下の3つの要件から成っている。

  • 州は、発癌性であったり生殖機能に有害であったりする恐れがあると認識している物質(発癌性原因物質および生殖毒性原因物質)のリストを作成し、少なくとも年1回はこれを改定しなければならない。2021年1月10日時点の最新版リスト(2020年12月18日付け)には、約1000種の化学物質が記載されている。
  • 従業員10名以上の事業者(業種は問わず)に対し、規定の量を超える対象物質を、飲料水の水源に混入することが予見される水域へ意図的に放出することを禁じる。
  • 従業員10名以上の事業者は、取り扱う製品の使用や製造工程での就労などにおいてリストに掲載される対象物質への人体の曝露が考えられる場合、事前に「明確で妥当な(clear and reasonable)」警告を行わなければならない。

この法律は訴訟を通して執行され、一定の条件を満たせば、「公益のため」に一般市民でも訴訟を起こすことができる(「市民訴訟」と呼ばれる)。また、訴訟を起こす者(個人のみならず組織も含む)が勝訴した場合、企業が支払う罰金の25%を得ることができるため、カリフォルニア州では、同法の違反(特に曝露警告義務違反)を主張して公衆衛生や環境にはほとんど利益のない金銭目当ての訴訟が数多く起こされ、問題になっていた。こうした事態に対処するため、近年は公益をもたらさない訴訟に対処する規則の改正や警告規則の改正が実施されている。

主体となる実施当局は州環境衛生有害性評価室(OEHHA)だが、市民訴訟によるこの法律の執行については州司法局長室(OAG)が所管している。

警告義務の免除

事業者に課されている事前の曝露警告義務は、規制対象物質への曝露が以下であることを事業者が示す場合、適用が免除される。

  • 発癌性原因物質の場合:癌の有意なリスクを呈さない曝露、すなわち10万人が70年間の生涯にわたって曝露した場合に一人が癌を発症するレベルの曝露
  • 生殖毒性原因物質の場合:その1000倍のレベルでも観測できるような生殖への影響を生じさせない曝露

いっぽうOEHHAは、それらのレベル以下であれば警告義務や飲料水源への排出禁止を免れることができる「セーフハーバー・レベル」と呼ばれる曝露量を決定している。2021年1月10日現在、セーフハーバー・レベルが設けられている規制対象物質の数は、およそ320種である。

警告規則と警告例

プロポジション65は事業者に対し、予見される曝露に対して事前に「明確で妥当な警告」を行うことを義務付けているが、「明確で妥当」という要件は法規では明確に定義されていない。そのためOEHHAは、そのとおりに行えば「明確で妥当」とOEHHAがみなす警告の方法と内容を実施規則として定めた。すなわち、これらの警告方法や警告内容は、規則のかたちをとっているものの、実際には強制力を持たないガイダンスであり、事業者は自分たちが「明確で妥当」と考えるそれ以外の方法や内容で警告することができる。ただし、定義がないだけに、その警告が「明確で妥当」か否かをめぐって訴訟が起こされる可能性がある。

ガイダンスにのっとった消費者向け製品の警告例(発癌性原因物質の場合)

  • 黄色い三角の中に感嘆符が書かれた警告シンボル(シンボルが不要の警告もあり)
  • 曝露の可能性の明記(“can expose you to”)
  • 警告対象となる1つ以上の化学物質名の記載(“name of one or more chemicals”)
  • 警告ウェブサイトのURLの記載(www.P65Warnings.ca.gov)

最新動向

現行の警告規則は、消費者向け製品に限り警告対象となる化学物質名の記載がいらない簡易警告を容認しているが、OEHHAは2021年1月、簡易警告の使用を制限する規則の改正を提案した。

(2021年2月1日最終更新)

無料情報は以上となります。本規制テーマに関する最新情報、中長期動向報告書のご要望、また個別調査等のご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

また、EnviXでは無料のメールマガジンにて一部の規制情報を毎月配信しております。是非ともご登録ください。

セミナー・イベント情報

当社主催の米国関連セミナーをご紹介します。

規制テーマ セミナー・イベント名称 開催日
全般 世界環境法規制ウェビナー2023
EU、北米、中国、東南アジア、ラテンアメリカにおける環境規制の最新動向を総まとめする年に1度のウェビナーです。全4日間13講演、2023年10月17~26日開催。2023年12月末までオンデマンド受講可、視聴回数制限なし。
2023年10月17日
世界環境法規制ウェビナー2022(全10講演)
各国の1年間の主要規制動向を総まとめする、年に一度の弊社人気企画です。今回は第18回開催となります。規制担当者の研修・キャッチアップ、事業戦略・計画立案のための情報ソースとしてご活用ください!
2022年10月6日
無料ウェビナー ESG & コロナ時代の海外環境コンプライアンスを考える(終了) 2020年12月17日
化学物質 受付中 無料Webラジオ 化学物質法規制トレンド情報「ケミ☆トーク」
世界各国の化学物質法規制分野に特化したトレンド情報を真面目に楽しくお届けする、とことんマニアックなWebラジオ番組です。
2024年4月9日
米国TSCA PFASデータ報告規則 解説ウェビナー
約1,500件のPFAS(混合物、成形品を含む)を過去12年間に輸入・製造した事業者へデータ報告義務を規定、罰則あり。メーカーの観点で対応要件について詳細解説を行います。さらに解説レポート、最終規則和訳資料、公式ガイダンス和訳資料をただ今発売中!
2024年2月14日
プラスチック添加剤規制 最新動向報告ウェビナー/解説レポート(オンデマンド配信)
国際、欧州、北米、アジアの製造/輸出入/使用の禁止・制限が進められている化学物質について規制別/添加剤別・規制状況を報告・解説します。
2023年7月21日
PFAS規制 最新動向報告ウェビナー(オンデマンド配信)
EU REACH規則に基づくユニバーサルPFAS制限提案、米国メイン州での製品含有PFASの規制強化など、今年上期の再注目テーマであるPFAS規制動向について、弊社第4回となる報告ウェビナーを開催/解説レポートを発売します。 またPFAS規制に係る国際条例/各国・地域の法令について、初学者向けの基礎解説ガイドを順次発売します。
2023年5月30日
ビスフェノール類規制動向解説ウェビナー(オンデマンド配信)
米国、EUを中心に160種~のビスフェノール類に関する規制動向を解説!
2022年11月25日
TSCA PBT5物質規則 解説ウェビナー(オンデマンド配信)
5種類のPBT物質について、Subpart Eに関わるTSCAの条文(第3条および第6条)、PBT物質の選定根拠、PBT物質の最終規則公布までの経緯、各PBT物質の規定の内容などについて解説。
2021年12月7日

全開催履歴は下記リンクよりご覧ください。
セミナー・イベント一覧

毎年好評をいただいております「世界環境法規制セミナー(毎年秋頃開催)」に加え、不定期で専門セミナーを企画しております。セミナー開催情報は当サイトと合わせ、海外環境規制メルマガ(無料)でもご案内しております。 海外環境規制メルマガ(無料)

最新動向

米国の環境規制・市場動向を調査・分析し、その動向と法規・法令の公布・改正情報を「海外環境法規制モニタリング」で配信しております。企業様にとっては、日々ニュースソースを監視・選別する労力を大幅に軽減できるだけでなく、個別の質問にお応えするパートナーとして機能します。
海外環境法規制モニタリング

下記に、本サービスで配信中の記事タイトルを抜粋して紹介しております(不定期更新)。有償サービスでは速報、月例レポート、公布・改正法規リスト、WEB検索アーカイブをご利用いただけます。是非とも導入をご検討ください。

更新日 規制分野 記事タイトル(タイトル・記事全文は有料版で配信しております
2024年1月23日 化学物質 米国 米カリフォルニア安全化粧品プログラム、報告対象成分…
2024年1月8日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:ビスフェノールSをリストに収載、警告…
2023年12月20日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:エチレンオキシドの「無視できる…
2023年12月19日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:専門家委員会がビスフェノ…
2023年11月20日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:当局がコールタールピッチなど3物質の…
2023年11月1日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:簡易警告規則の新たな改正案公表 ネ…
2023年10月30日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:三酸化アンチモンの吸入曝…
2023年10月10日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:ビスフェノールSのリスト収載を検…
2023年9月25日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:コールタールピッチなど3物質の発がん…
2023年9月3日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:NSRLを優先的に策定中の…
2023年8月15日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:アントラセンなど3物質を発…
2023年7月30日 化学物質 米国 米カリフォルニア州当局、学校による購入が禁止される有害物質…
2023年7月17日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:三酸化アンチモンのNSRL案を…
2023年7月10日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、発がん性原因物質リスト収載の可…
2023年6月20日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:アントラセンなど3物質の発がん性…
2023年6月12日 化学物質 米国 米加州プロポジション65:アンチモン(3価化合物)のリス…
2023年4月24日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、ロイコマラカイトグリーンなど2物質…
2023年4月11日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、エチレンオキシドの「無視でき…
2023年3月6日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、2物質の発がん性原因…
2023年2月2日 化学物質 米国 米加州プロポジション65の発がん性原因物質…
2022年12月27日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、調理で食品中に生成されるアクリルア…
2022年12月19日 化学物質 米国 米加州プロポジション65の特定委員会、ビスフェノールAの発…
2022年12月7日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、IARCの評価にもとづき3物質…
2022年11月14日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、規則を改正し食品中のアクリル…
2022年11月9日 化学物質 米国 米カリフォルニア州安全化粧品プログラム、当局への…
2022年10月11日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、調理で生成される食品中のリスト収載…
2022年10月4日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、アンチモン(3価化合物)を発が…
2022年10月4日 化学物質 米国 米加州プロポジション65,12月開催の特定委員会でビスフェノ…
2022年9月19日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、規則改正でグリホサートへの曝露に対…
2022年9月7日 化学物質 米国 米カリフォルニア州当局、有害物質の含有により学校による購入が…
2022年8月29日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、三酸化アンチモンの「無視できる…
2022年7月11日 化学物質 米国 米加州SCP規則、ネイル製品中の有害化学物質について情報要…
2022年7月5日 化学物質 米国 米加州最高裁、Amazonのプロポジション65に…
2022年5月24日 化学物質 米国 米加州プロポジション65の簡易警告規則改正規則策定が失効、数…
2022年4月18日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、連邦控訴裁がアクリルアミド警…
2022年4月7日 化学物質 米国 米加州プロポジション65警告規則、最新改正案でラベルのサイズ…
2022年3月7日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、ビスフェノールSの生…
2022年2月28日 化学物質 米国 米加州プロポジション65,発がん性原因物質…
2022年2月3日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、ビスフェノールAの発…
2022年1月5日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、生殖毒性原因物質リスト…
2021年12月23日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、発がん性原因物質リス…
2021年12月21日 化学物質 米国 米加州プロポジション65の発がん性原因物質リスト…
2021年12月14日 化学物質 米国 米カリフォルニア州プロポジション65当局、簡易警告…
2021年10月22日 化学物質 米国 米加州DTSC、ネットで購入する製品中の懸念物質をスクリー…
2021年10月5日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、PFNAとPFDAの生殖毒性原…
2021年10月1日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、PFOSの発がん性原因物…
2021年9月17日 化学物質 米国 米加州プロポジション65、3種のハロ酢酸の「無視でき…
2021年8月23日 化学物質 米国 米加州当局、学校による購入が禁止される有害物質含有図…
2021年6月21日 化学物質 米国 米加州プロポジション65当局、発がん性原因物質リストにTH…
2021年4月7日 化学物質 米国 米加州当局、専門家がプロポジション65の規制対象追加の…

関連製品

EnviXは企業の環境コンプライアンスや経営・市場戦略立案に役立つ情報を提供を提供しております。
米国の環境法・環境規制動向

米国の化学物質規制情報に関連する製品を下記に紹介します。

規制分野 製品区分 製品・サービス名 発売・更新日
全般 法体系ガイド 米国環境法体系ガイド 概観
煩雑な米国の法体系の整理を目的として作成されており、米国で環境規制に関わる代表的な法律を取りまとめた資料です。
2022年4月15日
法体系ガイド 米国環境法体系ガイド 工場編
米国の工場系環境法規をまとめた、事業者必携のガイドです。
2021年9月13日
法体系ガイド 米国環境法体系ガイド 製品編
膨大な法律や規則の情報から、日本の事業者に関連が大きい環境規制の要件を概説!
2020年10月6日
- 海外環境法規制モニタリング
世界全体の環境法規制の動向をお届けする基幹サービス。同分野の豊富な知識と経験、高度な翻訳能力を兼ね備えた当社研究員が厳選した価値ある情報を速報、月例報告書、検索可能なWEBアーカイブでご提供します。
常時更新
- 海外環境規制トレンド・レポート
世界主要国における環境法規制の直近6ヶ月から1年間の動向を中心に調査し、ご報告する調査報告書です。
年2回更新
- 海外環境法規制メルマガ(無料)
海外の環境規制情報を要約して月1回、毎月上旬に配信します。累計1千人以上が購読する、環境規制担当・経営担当必読のメールマガジンです。
毎月配信
化学物質 法規和訳 米国 TSCA PBT5物質に係わる規則 和訳
米国TSCA PBT5物質に係わる規則の日本語版和訳を販売しております。直近版をを購入された方へはお求めやすい価格で更新版をご提供します。
2021年10月11日
報告書 PFAS規制解説レポート
欧米のPFAS規制対応のための情報源としてご活用ください。各PFASの規制内容については、解説に必要な範囲で原文および和訳の対照表(必要に応じて草案を含む)を記載。
2021年10月11日

EnviXは各国の環境規制テーマについて、その中長期動向の調査報告書を作成・提供しております。
海外環境規制トレンド・レポート

下表は米国の化学物質規制情報に関する報告書の一覧です。

規制分野 規制テーマ(報告書の名称)
化学物質 米国 緊急対処計画および地域住民の知る権利法(EPCRA)
米国 汚染防止法(PPA)
米国 有害物質排出目録(TRI)
米国 TSCA(有害物質規制法)
米国 TSCA PBT規則
米国 TSCA PBT PIP(3:1)規制
米国 PFAS規制(有害物質規制)
米国 PFOA 規制動向
米国 PFOS 規制動向
米国 プロポジション65
米国 RoHS 製品含有有害物質規制に関する州法規
米国 有害物質規制-消費者製品、分類・表示、殺虫剤・殺菌剤等

EnivXでは日々の海外の環境規制動向の情報提供業務に裏付けられた、様々なノウハウやネットワークを活用し、お客様の様々な個別のご要望にお応えする調査のご相談も承っております。委託調査ページでは実績例等のご紹介もしておりますので、参考にされた上で、まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。
個別調査・海外現地調査

コラム・無料記事

米国に関連するコラム・無料記事(不定期更新)の一覧です。

規制テーマ コラム・無料記事 更新日
化学物質 米メイン州、製品含有PFASのCUU決定に関する提案を要請
DEPはPFAS汚染防止法のもと、「現在避けられない用途(CUU)」を特定する規則策定プロセスを2024年初旬に開始する。
2024年2月7日
米国EPA、TRI報告対象のPFASに関して報告義務を強化する最終規則を公布
当該最終規則の発効日は2023年11月30日で、2024年1月1日からはじまる報告年(報告期日:2025年7月1日)から適用される。
2023年12月4日
米NY州、特定の難燃剤含む電気電子機器などの消費者製品の販売や提供を禁止する法律が成立
NY州は15.5平方インチ以上の住宅用電子ディスプレイの筐体やスタンドにおける難燃剤の使用を禁止する米国で初めての州となり、2021年3月より同じ内容の禁止を実施しているEUを追いかけるものとなりました。
2022年2月7日
EPA、PIP(3:1) 遵守期日再延長に関する提案規則の意見公募を開始
意見提出期限は2021年12月27日。
2021年10月29日
EPA、PIP(3:1)の遵守期日を2024年10月31日に再延長へ
2021年10月21日公表。当該提案規則については、連邦官報への掲載日から60日間の意見公募が実施される。
2021年10月26日
米EPA、FIFRA違反で約699万ドルの罰金を科す 2020年11月20日
米国 危険有害物質規則(HMR)の改正を公示、国際規定に調整
改正内容は主にIMDGコードやICAO技術指針、国連危険物輸送モデル規則などの危険物輸送に係わる国際規定の更新と整合性を取るものとなっている。
2020年6月1日
米EPA、CBI保護請求に不備があった場合の請求者への通知を取りやめ 2019年8月1日