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米国カリフォルニア州 プロポジション65 基礎解説ガイド

EnviXは「米国カリフォルニア州 プロポジション65」の解説資料を作成・提供しております。

基本情報・概要

法律名 1986年安全飲料水・有害物質取締法(通称:プロポジション65)
現地語名称 Safe Drinking Water and Toxic Enforcement Act of 1986(Proposition 65)
公布日 1986年11月4日

米国カリフォルニア州で1986年11月4日、州の住民投票制度(ballot initiative)のもと、住民が発議し、有権者の支持を得て制定された法律。「プロポジション65」(Proposition 65)とはその時の提議(proposition)の番号で、現在も法律の通称として用いられている。法規要件を実施するのは州環境保護局(CalEPA)の環境衛生有害性評価室(OEHHA)だが、法律の執行については州司法局長室(OAG)が所管している。

この法律は、主に以下の3つの要件から成っている。

  • 州は、発癌性であったり生殖機能に有害であったりする恐れがあると認識している物質(発癌性原因物質および生殖毒性原因物質)のリストを作成し、少なくとも年1回はこれを改定しなければならない。2024年8月時点の最新版リスト(2023年12月29日付け)には、1000種を超える化学物質が収載されている。
  • 従業員10名以上の事業者(業種は問わず)に対し、規定の量を超える対象物質を、飲料水の水源に混入することが予見される水域へ意図的に放出することを禁じる。
  • 従業員10名以上の事業者は、取り扱う製品の使用や製造工程での就労などにおいてリストに掲載される対象物質への人体の曝露が考えられる場合、事前に「明確で妥当な(clear and reasonable)」警告を行わなければならない。

この法律は訴訟を通して執行され、一定の条件を満たせば、「公益のため」に一般市民でも訴訟を起こすことができる(「市民訴訟」と呼ばれる)。ただし、訴訟に勝訴すると民事罰等の金額の25%を原告側が得られるうえ、訴訟における曝露の証明は企業側にあるという手軽さも手伝って、このシステムは現状、金銭目当ての市民訴訟の横行という結果を招いている。州議会やOAGは規則の改正で状況の改善を試みているが、市民訴訟は和解で解決されることが多い。

警告義務の免除

事業者に課されている事前の曝露警告義務は、規制対象物質への曝露が以下であることを事業者が示す場合、適用が免除される。

  • 発癌性原因物質の場合:癌の有意なリスクを呈さない曝露、すなわち10万人が70年間の生涯にわたって曝露しても、癌の発症者が1人を超えないレベルの曝露
  • 生殖毒性原因物質の場合:その1000倍のレベルでも観測できるような生殖への影響を生じさせない曝露

いっぽうOEHHAは、それらのレベル以下であれば警告義務や飲料水源への排出禁止を免れることができる「セーフハーバー・レベル」と呼ばれる曝露量を決定している。2024年8月末現在、セーフハーバー・レベルが定められている規制対象物質の数は309種である。

警告規則と警告例

プロポジション65は事業者に対し、予見される曝露に対して事前に「明確で妥当な警告」を行うことを義務付けているが、「明確で妥当」という要件は法規では明確に定義されていない。そのためOEHHAは、そのとおりに行えば「明確で妥当」とOEHHAがみなす警告の方法と内容を実施規則として定めた。すなわち、これらの警告方法や警告内容は、規則のかたちをとっているものの、実際には強制力を持たないガイダンスであり、事業者は自分たちが「明確で妥当」と考えるそれ以外の方法や内容で警告することができる。ただし、定義がないだけに、その警告が「明確で妥当」か否かをめぐって訴訟が起こされる可能性がある。

ガイダンスにのっとった消費者向け製品の警告例(発癌性原因物質の場合)

  • 黄色い三角の中に感嘆符が書かれた警告シンボル(シンボルが不要の警告もあり)
  • 曝露の可能性の明記(“can expose you to”)
  • 警告対象となる1つ以上の化学物質名の記載(“name of one or more chemicals”)
  • 警告ウェブサイトのURLの記載(P65Warnings.ca.gov

プロポジション65に関する最新の動き

2024年6月

米加州プロポジション65:簡易警告規則改正案、新警告への移行期間を「3年間」に修正
OEHHAは2024年6月13日、2023年10月に公表したプロポジション65の警告規則の改正案を一部修正した旨、告示した。修正案では、消費者向け製品のみ使用できる簡易警告(short-form warning)に関する改正案が承認された場合に新たな要件への適用に認められる移行期間が、当初提案された2年間から3年間に延長された。

2024年5月

米加州プロポジション65:特定の二酸化チタンの「無視できるリスクのレベル」を提案
2024年5月10日付け告示によると、OEHHAは、プロポジション65が発がん性原因物質として規制する「吸入可能な大きさの空気中を浮遊する非結合粒子である二酸化チタン」について、直径10マイクロメートル(μm)以下のものは1日あたり440マイクログラム(μg)、直径0.8μm以下のものは44μgという「無視できるリスクのレベル」(NSRL)の採用を提案した。提案された規則案は、「毎日の曝露量がこれら以下であれば、無視できるリスクをもたらすとみなされる」としている。

2024年1月

米加州プロポジション65:ビスフェノールSをリストに収載、警告要件発効は2024年12月29日
OEHHAは2023年12月29日、プロポジション65のもと、同月12日に開催された発生・生殖毒性物質特定委員会(DARTIC)の会合で生殖毒性原因物質リスト(エンドポイントは女性生殖毒性)への収載が決定されたビスフェノールS(BPS)(CAS登録番号:80-09-1)が、同日12月29日付けで当該リストに収載されたことを告示した。BPSへの曝露に対する警告要件は、リスト収載から1年後の2024年12月29日に発効する。

基礎解説ガイド

本基礎解説ガイドは、概要、対象物質、警告要件といった、「プロポジション65」の基本的な要素を簡潔にまとめるとともに、今後の動向を把握するうえでポイントとなるであろう、この法律が抱える主な問題点を挙げています(音声による解説なし)。

製品名 米国カリフォルニア州プロポジション65 基礎解説ガイド
発売・更新日 2024年9月4日
納品物 PDFファイル(約30頁)
同一法人組織内で共有利用可
価格 20,000円(税別)
連絡先 ご注文はWEBフォームより承ります(最短同日、メールにて納品)。
ご請求について。支払期限は請求日翌月末を基本とします。
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米国の環境法・環境規制動向

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規制分野 製品区分 製品・サービス名 発売・更新日
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法体系ガイド 米国環境法体系ガイド 概観
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2022年4月15日
法体系ガイド 米国環境法体系ガイド 工場編
米国の工場系環境法規をまとめた、事業者必携のガイドです。
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化学物質 報告書 米国カリフォルニア州 プロポジション65 基礎解説ガイド
概要、対象物質、警告要件といった、「プロポジション65」の基本的な要素を簡潔にまとめるとともに、今後の動向を把握するうえでポイントとなるであろう、この法律が抱える主な問題点を挙げています。
2024年9月3日
法規和訳 米国 TSCA PBT5物質に係わる規則 和訳
米国TSCA PBT5物質に係わる規則の日本語版和訳を販売しております。直近版をを購入された方へはお求めやすい価格で更新版をご提供します。
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欧米のPFAS規制対応のための情報源としてご活用ください。各PFASの規制内容については、解説に必要な範囲で原文および和訳の対照表(必要に応じて草案を含む)を記載。
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下表は米国の化学物質規制情報に関する報告書の一覧です。

規制分野 規制テーマ(報告書の名称)
化学物質 米国 緊急対処計画および地域住民の知る権利法(EPCRA)
米国 汚染防止法(PPA)
米国 有害物質排出目録(TRI)
米国 TSCA(有害物質規制法)
米国 TSCA PBT規則
米国 TSCA PBT PIP(3:1)規制
米国 PFAS規制(有害物質規制)
米国 PFOA 規制動向
米国 PFOS 規制動向
米国カリフォルニア州 プロポジション65 基礎解説ガイド
米国 RoHS 製品含有有害物質規制に関する州法規
米国 有害物質規制-消費者製品、分類・表示、殺虫剤・殺菌剤等

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個別調査・海外現地調査

コラム・無料記事

米国に関連するコラム・無料記事(不定期更新)の一覧です。

規制テーマ コラム・無料記事 更新日
化学物質 米NH州、2027年より特定のPFAS添加製品の販売・流通を禁止、PFAS定義は連邦にならう
米ニューハンプシャー州で2024年8月2日、PFASを添加されたカーペットまたはラグ、化粧品など、8種類の消費者向け製品の販売と流通を2027年より禁止する法案(HB 1649)が、州知事の承認の署名により法律として成立した。
2024年9月10日
米メイン州のPFAS汚染防止法の改正法が成立、通知義務は「現在避けられない用途」製品に限定
2024年4月16日、意図的に添加されたPFASを含有する製品の販売禁止などを定めるPFAS汚染防止法の改正法案(LD1537)は法律として成立した。
2024年5月13日
米メイン州、製品含有PFASのCUU決定に関する提案を要請
DEPはPFAS汚染防止法のもと、「現在避けられない用途(CUU)」を特定する規則策定プロセスを2024年初旬に開始する。
2024年2月7日
米国EPA、TRI報告対象のPFASに関して報告義務を強化する最終規則を公布
当該最終規則の発効日は2023年11月30日で、2024年1月1日からはじまる報告年(報告期日:2025年7月1日)から適用される。
2023年12月4日
米NY州、特定の難燃剤含む電気電子機器などの消費者製品の販売や提供を禁止する法律が成立
NY州は15.5平方インチ以上の住宅用電子ディスプレイの筐体やスタンドにおける難燃剤の使用を禁止する米国で初めての州となり、2021年3月より同じ内容の禁止を実施しているEUを追いかけるものとなりました。
2022年2月7日
EPA、PIP(3:1) 遵守期日再延長に関する提案規則の意見公募を開始
意見提出期限は2021年12月27日。
2021年10月29日
EPA、PIP(3:1)の遵守期日を2024年10月31日に再延長へ
2021年10月21日公表。当該提案規則については、連邦官報への掲載日から60日間の意見公募が実施される。
2021年10月26日
米EPA、FIFRA違反で約699万ドルの罰金を科す 2020年11月20日
米国 危険有害物質規則(HMR)の改正を公示、国際規定に調整
改正内容は主にIMDGコードやICAO技術指針、国連危険物輸送モデル規則などの危険物輸送に係わる国際規定の更新と整合性を取るものとなっている。
2020年6月1日
米EPA、CBI保護請求に不備があった場合の請求者への通知を取りやめ 2019年8月1日