米国 州レベルのPFAS含有製品規制
2010年代後半から、米国各州でペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)と呼ばれる有機フッ素化合物を含有する製品を規制する動きが目立ってきた。PFASは、熱や薬品に強い、水や油をはじく、光を吸収しないなどの特性を生かし、泡消火剤や消防士の防護服から洗剤、調理器具、衣料品、化粧品といった身近な日用品まで、さまざまな製品に幅広く使用されている。
2024年10月現在、少なくとも15州でいずれかのPFAS含有製品を規制する法律が制定されている。規制の対象製品や措置の詳細は法律によってさまざまだが、全体として次のような特徴を指摘することができる。
- ほとんどの州法は、PFASを「完全にフッ素化された炭素原子をひとつ以上含むフッ素化された有機化学物質のクラス」と定義している。
- 多くの州法は、規制対象を「製品に意図的に添加されたPFAS」に限定している。
- 規制措置は、「当局への報告/通知やラベル表示などの製品中のPFAS含有情報の開示」か「当該製品の州内における製造、販売、流通の禁止」が中心。「より安全な代替策」が合理的に利用可能か否かが「禁止措置」を選択する要因となり得る。
州レベルのPFAS規制法の対象製品
2024年10月時点で確認されたPFAS規制法を制定している州と主な規制対象製品を以下に示す。なお、製品の定義は州によって異なるため、要注意である。
カリフォルニア州
消費者向け製品全般(PFOA、PFOS、PFNAのみ、プロポジション65)、カーペットおよびラグ、加工された布・革用処理剤、食品包装材、調理器具、子ども向け製品、テキスタイル・アーティクル、化粧品、生理用品、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具
コロラド州
洗浄製品、調理器具、デンタルフロス、生理用品、スキーワックス、人工芝、テキスタイル・アーティクル、厳しい湿潤条件下で用いられるアウトドア用衣料品、主に商業用の食品に直接接触する食品装置、ファブリック処理剤、食品包装材、子ども向け製品、カーペットおよびラグ、テキスタイル・ファニシング、化粧品、布・革張り家具、石油・ガス製品、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具
コネチカット州
衣料品、カーペットまたはラグ、洗浄製品、調理器具、化粧品、デンタルフロス、ファブリック処理剤、子ども向け製品、生理用品、テキスタイル・ファニシング、スキーワックス、布・革張り家具、過酷な湿潤条件対応のアウトドア用衣料品、クラスB泡消火剤、防火服、アパレル、カーペットおよびラグ、食品包装材
ハワイ州
食品包装材、クラスB泡消火剤
インディアナ州
消防士用ギア、クラスB泡消火剤
メイン州
メイン 適用免除製品、「現在避けられない用途」決定製品を除く、すべての意図的添加PFAS含有製品
メリーランド州
食品包装材、カーペットおよびラグ、プレイグラウンド(遊び場)の表面材料、化粧品、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具
マサチューセッツ州
消防用個人防護具
ミネソタ州
適用免除製品、「現在避けられない用途」決定製品を除く、すべての意図的添加PFAS含有製品
ニューハンプシャー州
ニューハンプシャー カーペットまたはラグ、化粧品、テキスタイル処理剤、生理用品、食品包装材および容器、子ども向け製品、布・革張り家具、テキスタイル・ファニシング、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具、消防署ウェア
ニューヨーク州
子ども向け製品(特定のPFAS、提案中)、食品包装材、アパレル、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具
オレゴン州
オレゴン 子ども向け製品(PFOSのみ)、食品容器・食器、化粧品
ロードアイランド州
ロードアイランド カーペットまたはラグ、調理器具、化粧品、ファブリック処理剤、子ども向け製品、生理用品、スキーワックス、テキスタイル・アーティクル、人工芝、過酷な湿潤条件対応のアウトドア用衣料品、クラスB泡消火剤、消防用個人防護具、食品包装材
バーモント州
化粧品、生理用品、アフターマーケット防汚・撥水処理剤、人工芝、調理器具、失禁保護用品、子ども向け製品、ラグまたはカーペット、スキーワックス、テキスタイルまたはテキスタイル・アーティクル、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具、食品包装材、過酷な湿潤条件対応のアウトドア用衣料品
ワシントン州
子ども向け製品(PFOA、PFOSのみ)、食品包装材、化粧品、カーペットおよびラグ、レザーおよびテキスタイル・ファニシング、アフターマーケット防汚・撥水処理製品、クラスB泡消火剤、消防士用個人防護具
これらの州法のうち、意図的に添加されたPFAS含有製品を包括的に規制するメイン州とミネソタ州の法律の概要を以下に示す。
メイン州の包括的なPFAS含有製品規制法
2021年7月に制定されたメイン州のPFAS汚染防止法(38 MRSA § 1614 Products containing PFAS)は、意図的に添加されたPFASを含有する製品の包括的な規制を米国で初めて試みた法律である。その後、2023年6月と2024年4月に改正され、適用免除対象製品の追加や要件の適用対象の限定などの変更が加えられたが、影響を受ける製品は依然として広範に及んでいる。
主な規定
- 「現在避けられない用途(CUU)」以外の、意図的添加PFASを含有する製品の州内における販売・流通を以下のスケジュールにのっとって禁止する。日付は禁止発効日。
- 2023年1月1日
カーペットまたはラグ、布地処理剤 - 2026年1月1日
洗浄製品、調理器具、化粧品、デンタルフロス、子ども向け製品、生理用品、テキスタイル・アーティクル、スキーワックス、布・革張り家具 - 2029年1月1日
人工芝、厳しい湿潤条件下で用いられるアウトドア用品(適用免除条件あり) - 2032年1月1日
まだ禁止されていない製品(一部を除く) - 2040年1月1日
冷房、暖房、換気、空調、冷蔵機器;冷媒、フォーム、エアゾール用推進剤(例外あり)
- 2023年1月1日
- 製品におけるPFASの使用がCUUと決定された製品は、禁止要件が5年間免除される。
- PFASの使用がCUUと決定された製品の製造者は、法規が定める情報を当局の州環境保護局(DEP)へ通知し、かつ規則が定める料金を支払う。通知を怠ると、2032年1月1日より、CUU決定された製品であっても販売・流通は禁止される。
ミネソタ州の包括的なPFAS含有製品規制法
ミネソタ州のPFAS含有製品規制法(Minnesota Statutes, Environmental Protection Chapter 116, § 116.943 Products Containing PFAS )は、メイン州のPFAS汚染防止法のオリジナル版と多くの点で類似した内容で、2023年5月に制定された。適用免除対象製品が少なく、例外規定もほとんどないため、メイン州の法律改正後は、米国の州レベルで最も厳しいPFAS含有製品規制法とみなされている。
主な規定
- 2026年1月1日までに、州内で販売・流通される、意図的に添加されたPFAS含有製品の製造者は、法律が定める情報を当局の州公害防止庁(MPCA)に提出する。
- 2025年1月1日より、意図的に添加されたPFASを含有する以下の製品の州内における販売・流通を禁止する。カーペットまたはラグ、洗浄製品、調理器具、化粧品、デンタルフロス、布地処理剤、子ども向け製品、生理製品、テキスタイル・ファニシング、スキーワックス、布・革張り家具
- 2032年1月1日より、当局がPFAS用途を「現在避けられない用途(CUU)」と決定しない限り、意図的に添加されたPFASを含有する製品のミネソタ州における販売・流通を禁止する。
州レベルのPFAS含有製品規制の主な動き
2024年10月 |
米加州知事、PFAS、DEHP、ビスフェノール類の製品含有を規制する複数の法案に署名 |
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2024年9月 |
米ミネソタ州当局、2025年の意図的添加PFAS含有製品禁止に関する質問に助言的回答 |
米ミネソタ州当局、策定中のPFAS含有製品規制法実施規則に関する質問に助言的回答 |
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米ワシントン州SPWAプログラム、PFAS含有優先製品を規制する暫定規則案を公表 |
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2024年8月 | 米マサチューセッツ州新法、2027年より意図的添加PFAS含有する消防用個人防護具を禁止 米マサチューセッツ州政府は2024年8月15日、同州のヒーリー知事が同日、消防士が着用する個人防護具に含有されるペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)を規制する法案(法案番号:S.2902)に承認の署名を行ったことをニュースとして発表した。この署名をもって同法案は法律として成立した。 |
米ミネソタ州、特定の製品へのPFAS、鉛、カドミウムの使用規制を2025年7月まで停止 米ミネソタ州で2024年5月21日に制定された環境天然資源予算および政策法(法案番号:HF3911)のもと、特定の製品におけるペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)、鉛、またはカドミウムの使用に対する規制が、2025年7月1日まで停止または延期されることになった。本法の§31は、州公害防止庁(MPCA)に対し、以下に挙げる化学物質と製品について、併記されている規定を2025年7月1日まで施行してはならない、と定めている。 |
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米メイン州PFAS汚染防止法、改正法を反映させた実施規則の初期草案公表 米メイン州環境保護局(DEP)は2024年8月5日、同年4月に制定されたペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)汚染防止法の改正法(法案番号:LD1537、2024年8月9日発効)を実施する規則の初期草案であるコンセプト・ドラフトを公表した。この文書は、2024年8月30日までの非公式アウトリーチ・プロセスのために公開されているもので、改正法では詳細が不明であった、製造者による「現在避けられない用途(CUU)」決定の提案のしかたが示されている。 |
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米NH州、PFASとノンポリマー耐火性化学物質含有消防署ウェアを規制する法律が成立 米ニューハンプシャー(NH)州で2024年8月2日、ペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)含有消防用個人防護具(PPE)を規制する法律を改正し、2025年よりPFASまたはノンポリマー耐火性化学物質(non-polymeric fire-resistive chemical)を含有する消防署ウェア(消防用PPEの下に着用する制服などの衣類)の規制を追加する法案(HB 1352)が、州知事の承認の署名により法律として成立した。本法は2024年10月1日に発効する。 |
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米NH州、2027年より特定のPFAS添加製品の販売・流通を禁止、PFAS定義は連邦にならう 米ニューハンプシャー(NH)州で2024年8月2日、ペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)を添加されたカーペットまたはラグなど8種類の消費者向け製品の販売と流通を2027年より禁止する法案(HB 1649)が、州知事の承認の署名により法律として成立し、そのうち禁止に関連する条項が併せて発効した。本法は、PFASの定義として、連邦有害物質規制法(TSCA) PFASデータ報告規則のPFASの定義を採用している。 |
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米NY州、特定の難燃剤含む電気電子機器などの消費者製品の販売や提供を禁止する法律が成立
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EPA、PIP(3:1) 遵守期日再延長に関する提案規則の意見公募を開始
意見提出期限は2021年12月27日。 |
2021年10月29日 | |
EPA、PIP(3:1)の遵守期日を2024年10月31日に再延長へ
2021年10月21日公表。当該提案規則については、連邦官報への掲載日から60日間の意見公募が実施される。 |
2021年10月26日 | |
米EPA、FIFRA違反で約699万ドルの罰金を科す | 2020年11月20日 | |
米国 危険有害物質規則(HMR)の改正を公示、国際規定に調整
改正内容は主にIMDGコードやICAO技術指針、国連危険物輸送モデル規則などの危険物輸送に係わる国際規定の更新と整合性を取るものとなっている。 |
2020年6月1日 | |
米EPA、CBI保護請求に不備があった場合の請求者への通知を取りやめ | 2019年8月1日 |