EU 循環型経済政策(サーキュラー・エコノミー)
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新循環型経済行動計画
欧州委員会は2020年3月11日、「新循環型経済行動計画」を発表した。環境を軸としたEUの新成長戦略”欧州グリーンディール”の柱の一つで、2015年12月に出された初の循環型経済行動計画(54の行動を示し、大半が既に実行済み、残りも実行中)に続くもの。
温暖化ガス総排出量の半分が資源の採取・加工から生じる中、2050年までに気候ニュートラルになるとの目標達成には、循環型経済への完全移行が欠かせないとの考えから、新行動計画は、EUの消費フットプリントを減らし、原料循環使用率を10年で倍にすべく、製品のライフサイクル全体(設計、製造、消費、修理、再利用、リサイクル)を対象に、資源を経済に戻して循環させるための施策を打ち出している。その骨子は次のとおり(同計画の付属書に、主な施策と実施時期の一覧表あり)。
持続可能な製品をEUの標準とするための措置
エコデザイン指令の対象をエネルギー使用製品以外に拡大する改正案を中心に、他の補完的な法案も適宜準備し、EUで上市される製品が、もっと長く使え、再利用・修理・リサイクルが容易で、できる限りリサイクル原料を多く含むようにする。また、使い捨てを規制し、早過ぎる陳腐化に対処し、売れ残り耐久財の破壊処分を禁止する。
消費者の力を強化する措置
消費者に製品の修理可能性や耐久性などについて信頼できる情報へのアクセスを提供し、環境的に持続可能な選択を助ける。消費者・製品政策において”修理を受ける権利”の確立を図る。グリーン公共調達については、最低限順守すべき環境基準や調達目標などを導入し、促進する。
資源利用が最も多く、潜在的な循環可能性が高い部門に重点を置いた具体的措置
電子機器とICT:
”循環型電子機器イニシアティブ”を立ち上げ、再利用可能性、修理可能性、早過ぎる陳腐化を回避するための部品・ソフトのアップグレード可能性を通じて、製品の耐用期間を延ばす一方、廃棄品の回収・処理の改善も図る。この部門での”修理を受ける権利”の普及を優先。エコデザイン指令下で携帯電話、タブレット、ラップトップに関する新規制の採択を目指す。充電器に関する措置の採択も目指す。古い携帯電話、タブレット、充電器の返還・売却のためのEU共通の引き取り制度も検討。
EU WEEE指令
電池と車両:
電池の持続可能性と循環性を高める新たな規制の枠組みを提案する。これには、すべての電池の回収・リサイクル率を改善し、希少原料の再生を確実にする措置や、電池の持続可能性要件、新品のリサイクル成分レベル、消費者への情報提供規定などが含まれる。このほかリサイクル効率改善のため、使用済み車両や廃油の適正処理に関する規定のレビューを行う。
EU 電池指令・電池規則案
包装材:
包装廃棄物の発生抑制策(削減目標の設定など)と、包装材が順守すべき基本要件の厳格化を提案する。2030年までにEUで上市される全ての包装材を経済的に実行可能な形で再利用またはリサイクル可能にすることを目指す。
EU 廃棄物規制(枠組み指令、輸送、包装材等)
プラスチック:
包装材や建材、車両など主要製品に係わるプラスチック廃棄物の抑制とリサイクル・プラスチックの一定割合以上での使用義務付けを提案する。意図的添加の規制などマイクロプラスチック対策も強化。バイオベースまたは生分解性のプラスチックの調達・使用にも対応。
EU プラスチック規制
繊維:
この部門の競争力と技術革新を強化し、持続可能で循環型の繊維市場(再利用を含む)を増進するため、新たなEU繊維戦略を出す。繊維廃棄物の分別回収に関するガイダンスも出す(加盟国は2025年までに守る)。
建築と建物:
持続可能な建物環境のための新たな包括的戦略を出し、建物のライフサイクル全体で持続可能性の原則を促進する。建材規則の改正も提案する(特定建材に一定割合以上のリサイクル原料の使用を義務付ける可能性も)。
EU エネルギー効率指令(EED)、建物のエネルギー性能指令(EPBD)
食品:
食品バリューチェーン全体の持続可能性を確保すべく”農場から食卓まで(Farm to Fork)”戦略を出す。この中で食品廃棄物の削減目標を提案する。食品サービス業の使い捨て容器・食器を再利用可能なものに代替する法の立案に向け、大枠を定めるための分析作業に着手する。
廃棄物を確実に減らす措置
そもそも廃棄物の発生を回避し、発生した場合は高品質の二次資源に転換することに重点を置く。より複雑な廃棄物系統について削減目標を提案し、最近採択された拡大生産者責任制度の要件実施を強化する。廃棄物関連法の更新も続ける。域内でのリサイクル・再利用に資する廃棄物輸送についてルールを見直す。第三国で環境・健康影響を引き起こす廃棄物の輸出制限も目指す(輸出先の国や問題の多い廃棄物系統・取り扱いに重点)。また、EU共通の廃棄物分別回収・ラベル表示モデルを作り、市民による分別を助ける方法を検討する。
(最終更新:2021年1月9日)
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