欧州連合(EU) 欧州連合(EU)の環境法規制情報

EUの「環境主張指令案」と「修理する権利指令案」の強化と早期成立を環境NGOが要求

弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「EUの『環境主張指令案』と『修理する権利指令案』の強化と早期成立を環境NGOが要求」について紹介します。

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EUではいま、2020年3月の「新循環型経済行動計画」のもとで様々な新制度が検討されています。新循環型経済行動計画は、環境を軸としたEUの新成長戦略”欧州グリーンディール”の柱の一つで、2015年12月に出された初の循環型経済行動計画(54の行動を示し、大半が既に実行済み、残りも実行中)に続く政策です。エコデザイン指令の改正、包装廃棄物規則案、電池規則案などは新循環型経済行動計画にもとづき議論されており、EUの環境政策を語る上では重要キーワードと言えるでしょう。

この新循環型経済行動計画の最新動向として、その検討テーマの一部である以下の2つの指令案(2023年3月公開)について紹介します。

  • 修理する権利指令案
  • 明示的環境主張の裏付けと伝達に関する指令案(環境主張指令案)

それぞれの指令案の中身については以下の通りです。

修理する権利指令案

消費者の「修理する権利」を新たに導入し、品物に不具合が生じた際、より安く容易に修理が受けられるようにし、消費者が代替より修理を優先するようにするもの。修理需要の増加は、修理部門の活性化に加え、生産者や販売業者による、より持続可能なビジネスモデルの開発にもつながるという。修理提供義務を負う品物に関し、生産者は消費者に修理義務と修理サービスに関する情報を提供する義務を負う。なお、本指令案で言う生産者は、エコデザイン規則案で定義される製造者(製品を製造し、またはそのような製品を設計もしくは製造させ、その製品を自己の名称もしくは商標で販売する自然人もしくは法人、または、そうした者もしくは輸入者がいない場合は、製品を上市、または機能開始させる自然人もしくは法人)と同義。新指令は官報公布の翌日から20日目に発効し、その後2年以内に加盟国は新指令を国内法化して適用を開始する。

明示的環境主張の裏付けと伝達に関する指令案(環境主張指令案)

本法案は、企業が自社の製品やサービスについて環境に優しい旨を主張する場合、それをどのように裏付け、伝えるかについて、最低限の満たすべき基準を定めるもの。これにより消費者は、より信頼性の高い情報に基づき環境に優しい製品を選択可能になる一方、環境保護に真に取り組む企業は消費者に選ばれ売上を向上させることができる。環境主張を裏付けるべく企業が行う評価では、

  1. 主張が関係するのは対象製品・活動の一部か全部かを明確にする、
  2. 広く認知された科学的根拠に依拠する、
  3. 声明の対象となる環境影響、環境側面または環境性能がライフサイクルの観点から重要であることを証明する、
  4. 環境性能について主張する場合、その評価上、重要な環境側面・影響すべてを考慮するなどが要求される。

法案によると、新指令は官報公布の翌日から20日目に発効し、その後18カ月以内に加盟国は新指令を実施する国内法を整備し、指令発効2年後から適用する。

上記の2つの指令案が公開された後、欧州の環境NGOネットワークEEB(European Environmental Bureau)は迅速な立法化の要望と、現行の案に対するいくつかの問題点を指摘しました。前者の指令案については、修理する権利の対象製品が限定的であることや抜け穴が多い点を、後者については炭素中立に係る主張や有害化学物質を含む製品について環境主張を行うことを明確に禁止していない点が改善を要するなどが懸念されるとEEBは主張しています。

以上、EUでの2つの指令案の最新動向となります。完成品をEU域内に上市する企業にとっては重要トピックですので、これからも注視していく必要があるでしょう。また、「新循環型経済行動計画」についての全体像や現在の動向などが気になる方はエンヴィックスまでお問い合わせください。

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英語情報とはいえ、その情報量の多さ、複雑さ、活発な動向から、体系的な把握が難しいEUの環境法体系を把握する一助となるよう作成されたガイドとなります
2018年10月17日
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下表は欧州連合(EU)の環境政策全般情報に関する報告書の一覧です。

規制分野 規制テーマ(報告書の名称) 更新日
環境政策全般 欧州グリーンディール 2021年1月9日
EU 循環型経済政策(サーキュラー・エコノミー) 2017年6月1日

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