国際、その他の国・地域の環境法規制情報

ぺンタクロロベンゼン(PeCB)規制状況

ぺンタクロロベンゼン(PeCB)について

ぺンタクロロベンゼン(Pentachlorobenzene/PeCB/EC番号:210-172-0)

参考:ポリ塩化ビフェニル(PCB)

「ぺンタクロロベンゼン(PeCB)」は、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の第4回締約国会議において「附属書A 廃絶」および「附属書C 非意図的生成物」に掲載することが決議されたグローバルに製造および使用が禁止される化学物質である。

現時点での国際条約、欧州連合、米国・連邦およびカナダ・連邦における規制内容を以下に紹介する。

世界のPeCB規制

国際

POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)

PeCBは、2009年5月4日から5月8日までの期間で開催された第4回締約国会議で「附属書A 廃絶」に掲載することが決議された(決議書SC-4/16)。PeCBの製造活動および使用活動における「個別の適用除外」は定められていない。

参考情報

バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)

ストックホルム条約の「附属書A、附属書Bおよび/または附属書Cに掲載されている残留性有機汚染物質から成る、当該物質を含有するまたは当該物質で汚染されている廃棄物(POP廃棄物)」は、ストックホルム条約の「第6条 在庫及び廃棄物から生ずる放出を削減または廃絶するための措置」の第2項に基づいて制定されるバーゼル条約の「環境上適正な管理に関する技術ガイドライン」に従って処分しなければならない。

PeCB廃棄物については、バーゼル条約の第14回締約国会議で採択された以下の技術ガイドラインがある。
Technical guidelines on the environmentally sound management of wastes containing or contaminated with unintentionally produced polychlorinated dibenzo-p-dioxins, polychlorinated dibenzofurans, hexachlorobenzene, polychlorinated biphenyls, pentachlorobenzene or polychlorinated naphthalenes

上記の技術ガイドラインの第III章の「A. 低POP含有量」で定めるPeCBに対する「50 mg/kg」以上のPeCB廃棄物は、ストックホルム条約の「附属書D情報要件及びスクリーニング基準」の第1項に定める残留性有機汚染物質の特性が示されなくなることを確保するために必要な破壊または不可逆的な変換が可能な方法で処分しなければならない。

上記のPeCB廃棄物の具体的な処分方法については、PeCB廃棄物の技術ガイドラインに以下の総合技術ガイドラインの第IV章の「G. 環境上適正な処分」を参照すると規定されている。
General technical guidelines on the environmentally sound management of wastes consisting of, containing or contaminated with persistent organic pollutants

欧州連合(EU)

POPs規則 – 規則(EU) 2019/1021

POPs規則は、欧州連合のストックホルム条約の担保法である。

PeCBは、2010年8月25日付け欧州連邦官報で公布された「欧州委員会規則(EU) No 757/2010(廃止)」によりPOPs規則の「附属書I」の「Part A:条約及び議定書に掲載されている物質並びに条約のみに掲載されている物質」に掲載された。Part Aの「中間体用途またはそれ以外の仕様に関する個別の適用除外」に、PeCBの「個別の適用除外」は定められていない。

また、PeCBは、2014年12月14日付け欧州連邦官報で公布された「欧州委員会規則(EU) No 1342/2014(廃止)」で「附属書IV第7条に定められている廃棄物管理規定の対象となる物質のリスト」に追加された。「50 mg/kg」以上のPeCBから成る、PeCBを含有するまたはPeCBで汚染された廃棄物は、「附属書V 廃棄物管理」の「Part 1 第7条の第2項に基づく処分及び回収」に定める方法で処分または回収されなければならない。

参考情報

米国・連邦

有害物質規制法(TSCA)

米国は、ストックホルム条約を批准していないことから、担保法は制定されていない。ただし、製品中にPeCBが意図的に含有していた場合、TSCAに基づく連邦規則の「40 CFR Part 721」の重要新規利用規則(SNUR)で規制される。

PeCBは、「40 CFR Part 721」の「Subpart E 特定の化学物質の重要新規利用」に規定されている。要件を満たす場合、米国内の輸入者は、米国への輸入開始の90日前までに環境保護庁(EPA)に「重要新規利用届出(SNUN:Significant New Use Notice)」を提出しなければならない。

721.1430 Pentachlorobenzene.
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-R/part-721/subpart-E/section-721.1430

ただし、40 CFR Part 721の「Subpart A 総則」の「§721.45 免除」により、以下の何れかに該当する場合、上記のSNUNは免除される。

  • 「不純物(impurity)」としてのみ当該物質を製造または加工する〔§45(d)〕
  • 燃料として焼却するなどの公的機関または私的機関限定で使用される「副生成物(byproduct)」としてのみ当該物質を製造または加工する〔§45(e)〕
  • 「成形品(article)」の一部として当該物質を輸入または加工する〔§721.45(f)〕

参考情報

カナダ・連邦

1999年カナダ環境保護法(CEPA)

CEPAは、カナダのストックホルム条約の担保法である。

PeCBは、CEPAの別表1(Schedule 1)のPart 1の「9」に掲載されている。また、PeCBは、CEPAに基づく「2012年特定有害物質禁止規則」のPart 1.2に規定されている。

ただし、2025年春に「2024年特定有害物質禁止規則」が公布される予定であるため、上記のPart 1.2の要件の概要は省略する。

参考情報

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下表は国際、その他の国・地域の化学物質規制情報に関する報告書の一覧です。

規制分野 規制テーマ(報告書の名称) 更新日
化学物質 デカブロモジフェニルエーテル(DecaBDE)規制動向 2023年9月15日
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)規制動向 2023年9月15日
ビスフェノールB(BPB)規制動向 2023年8月30日
ビスフェノールF(BPF)規制動向 2023年8月30日
ビスフェノールS(BPS)規制動向 2023年8月30日
ビスフェノールAF(BPAF)規制動向 2023年8月30日
EEA-NH4 規制動向 2023年8月25日
ADONA 規制動向 2023年8月25日
GenX(HFPOダイマー酸およびそのアンモニウム塩)規制動向 2023年8月24日
ペンタクロロフェノール(PCP)規制状況 2023年7月31日
PVC(ポリ塩化ビニル)規制動向 2022年8月10日
ビスフェノールA(BPA)規制動向 2022年7月28日
中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)規制動向 2022年6月18日
UV-328 規制動向 2022年6月18日
デクロランプラス(DP)規制動向 2022年6月18日
バーゼル条約 2021年12月17日
水銀規制・水俣条約 2021年12月17日
PIC条約(ロッテルダム条約) 2021年12月17日
POPs条約(ストックホルム条約) 2021年12月17日
PFHxS 規制動向 2021年12月2日
PFOA(ペルフルオロオクタン酸)規制動向 2021年11月17日
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)規制動向 2021年11月17日
PFHxA(ペルフルオロヘキサン酸)その塩および関連物質 2020年8月1日

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