プラスチックペレット規制動向
プラスチックペレットは使用済みプラスチックを破砕、洗浄、溶融し、加工しやすいように直径3~5mm程度の粒状に成型した素材のことで、ほぼすべてのプラスチック製品の原料として使用されるものである。
扱いやすいこと、原料としての均一性が高いこと、成形加工が効率的に行えること、といった理由で様々な産業分野において製品の成型や加工に利用される。
プラスチックペレットの問題点・課題
プラスチックペレットは軽量かつ小さい素材であるために、管理が十分ではないと製造工場や輸送中のトラックなどから容易に環境中へ漏れ出してしまう。
2021年5月、スリランカのコロンボ沖でプラスチックペレットの大規模な流出事故が起きた。インドからスリランカまで各種ポリマーのペレットを積載した422本のコンテナを含む1377本のコンテナを輸送中の船、X-Press Pearl 号が火災に見舞われ、一部が沈んだことによる流出であった。流出したペレットはスリランカの海岸線300km以上にわたって漂着し、回収作業には多くの時間を費やすこととなった。
国際における規制動向
現在、プラスチックペレットの輸送やそれによる海洋汚染に特化した国際規則はない。
関連する国際的なプラスチック規制は以下の通りである。
バーゼル条約
2021年1月1日、国連環境計画は、バーゼル条約のプラスチック廃棄物に関する改正(PWA:Plastic Waste Amendments)が、同日に条約締約国186ヵ国に発効したことを発表した。この改正によって、2021年1月1日以降、規制対象となるプラスチックの廃棄物を輸出する際に事前に輸入国の同意が必要となる。改正では、バーゼル条約の3つの附属書に廃プラスチックに係る規定が新設され、全ての廃プラスチックが、規制対象(附属書Ⅱ(2)又はⅧ(8))または規制対象外(附属書Ⅸ(9))という形で網羅的に規定されることとなった。附属書8には「有害なプラスチックの廃棄物」、附属書Ⅸには「非有害なプラスチックの廃棄物」、そして両者いずれにも入らない廃プラスチックは、附属書Ⅱ「特別の考慮が必要なプラスチックの廃棄物」として規制対象に位置付けられた。
2020年10月1日に日本の環境省はプラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準を策定し、下記のA~Dの条件を全て満たすプラスチックを規制対象外と定めた。
A:飲食物、泥、油等の汚れが付着していない
B:プラスチック以外の異物が混入していない
C:単一のプラスチック樹脂で構成されている
D:リサイクル材料として加工・調整されている
この規制対象外となるプラスチックの例として、ペレット状のプラスチックがある。ペレット状のプラスチックは、その加工の過程で、洗浄・選別され、リサイクル材料として調整されるため、A~Dの条件を全て満たすからである。ただし何らかの理由により汚れが付着していたり、異物が混入したりしていれば、規制対象となる可能性がある。
プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書
2022年2月28日から3月2日まで行われた第5回国連環境総会の2部(UNE-5.2)において、175カ国の代表によってプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を2024年中に策定する決議が採択され、2022年に国際文書策定のための政府間交渉委員会(INC)を設置することが決定された。この決定に伴い、2022年11月28日から12月2日まで、ウルグアイのプンタ・デル・エステにおいて、国際文書の策定に向けた第1回政府間交渉委員会(Intergovernmental Negotiating Committee、INC-1)が開催された。INCは、INC-1期間中に多数の提案を受け取ったため、第2回政府間交渉委員会(INC-2)に先立ち、プラスチックの全ライフサイクルに対応する包括的なアプローチに基づいて国際文書の構成要素に関する選択肢を概説する文書の作成をINC事務局に要請した。INC-2は、2023年5月29日から6月2日まで、フランスのパリにある国連教育科学文化機関(UNESCO)本部において開催され、次回の会合までの国際文書の初期草案(ゼロ・ドラフト)の作成をINC議長に委任して閉会した。2023年9月4日、2023年11月13日から11月19日までの期間で開催されるINC-3に先立ち、ゼロ・ドラフトが公表された。
EU(欧州連合)における規制動向
2023年5月4日、Rethink Plasticなど7つの環境団体がEUレベルでのプラスチックペレット(プラスチックペレット、フレーク、パウダー)の規制を求める共同勧告を公表した。7団体は、EUに対し、プラスチックのサプライチェーン全体でプラスチックペレットを規制し、環境中に流出するペレットの量を効果的に減らすために必要なあらゆる措置を講じるべきと呼び掛けている。また、サプライチェーン要件を制定し、供給源にアプローチすることが、費用効果が高く行政負担が少なく簡単な解決策であるとした。
プラスチックペレットは、ほぼすべてのプラスチック製品の原料として使用されており、その大きさやサプライチェーンでの取り扱いのせいで環境中に流出することが多く、マイクロプラスチックによる一次汚染の主因の一つとなっていると7団体は指摘している。その上で、コンサルティング会社Eunomiaの調査を引用し、EUはサプライチェーンを対象とした強制的措置を通じてプラスチックペレットの供給源に働きかけるべきとしている。それにより排出量の95%が削減可能であり、これは費用効果が高く、行政負担も少なく、公正な競争条件を確保しながら業界レベルでの標準化を促進する簡単な解決策であると提言している。
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