日本 日本の主要規制テーマ

化管法(PRTR法) 化学物質の排出・移動管理、情報伝達等

化管法施行令の一部改正政令の閣議決定

2021年10月15日、環境省は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令の一部を改正する法令」が閣議決定されたこと、並びに下記紹介する2020年12月4日から2021年1月4日にかけて実施された改正案に関するパブコメ募集の結果概要とそれらに対する考え方を取りまとめ、公表した。

改正の概要

最新の有害性知見に基づき対象物質が見直された結果、有害性が原稿の選定基準に合致し、かつ暴露情報の新たな選定基準に合致する物質が649物質となった。新基準で649物質が選定された一方で、164物質が指定化学物質から削除されたため、実質251物質が指定化学物質として指定されることになった。この政令の施行日は2023年4月1日で、PRTR制度については、改正対象物質の排出量・移動量を2023年度から把握し、2024年度から届出が実施される予定。

PRTR及びSDSに関する規制の対象となる第一種指定化学物質の見直しについて

現在、462物質が第一種指定されているところ、改正後は515物質が指定される予定。また、特定第一種指定化学物質は、現在15物質であるが、改正後は23物質が指定される予定。
新たに特定第一種指定化学物質となる「鉛及びその化合物」については、現在、特定第一種とされているのは「鉛化合物」のみであり、鉛そのものは第一種に分類されている。この2つが統合され、鉛化合物のみでの特定第一種の扱いがなくなるため、便宜上9つの化学物質が追加されることとなる。

化管法施行令改正案

― 第一種指定化学物質および第二種指定化学物質の追加と削除
(当社「国内環境法規制モニタリング」12月号より一部抜粋)

2020年12月4日、環境省は、上記政令案に対するパブコメの募集を開始したことを公表した。募集期間は2020年12月4日から2021年1月4日まで。特定の化学物質の環境への排出・移動量に関する措置、PRTRとして知られる制度は、事業者による化学物質の性状及び取扱いに関する情報(SDS:Safety Data Sheet)の提供に関する措置等を講ずることと合わせ、事業者による化学物質の管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止するための化管法の主な手段である。

背景

PRTR及びSDSの対象となる「第一種指定化学物質」、SDSのみの対象となる「第二種指定化学物質」については、化管法第 18 条により、政令の制定又は改正の立案をしようとする場合には、あらかじめ審議会等(薬事・食品衛生審議会、化学物質審議会及び中央環境審議会)の意見を聴くこととされている。また、化管法附則第3条により、施行後7年を経過した場合に見直すこととされている。2019年6月に公表された「産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会制度構築ワーキンググループ、中央環境審議会環境保健部会化学物質対策小委員会合同会合取りまとめ」も背景にある。

スケジュール

公布期日 2021年1月中(予定)
施行期日 2022年4月1日(予定)

改正内容

  • 第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の追加又は削除
    新旧対照表のとおり、第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の対象とすべき化学物質について、追加又は削除を行う。
  • 第一種指定化学物質等取扱事業者の要件に係る変更
    第一種指定化学物質の追加又は削除に伴い、施行令第4条第1号イ及びロに規定する第一種指定化学物質等取扱事業者の要件について、追加又は修正を行う。

具体的にどのような物質が追加され、削除される見込みなのかは、政令案新旧対照表にて確認できる。

基本情報

化管法の要点

「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(化管法)は次の体系を有する。

法体系

化管法のもとには次の下位法令が整備されている。

  • 政令:特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行令
  • 省令:特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律施行規則
  • 省令:指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報の提供の方法等を定める省令
  • 告示等:(独)製品評価技術基盤機構の案内ページ参照

化管法の目的は次の2点:

  • 特定の化学物質の環境への排出量等の把握に関する措置を講じること
  • 事業者による特定の化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供に関する措置等を講ずること

化管法は、以下の2つの制度で構成されている。

  1. PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出)制度
  2. SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)制度

化学物質の環境への排出量等の把握(PRTR制度)

PRTR制度の概要
PRTR制度は1974年のオランダでの化学物質の排出目録制度の制定に続き、1986年には米国での有害化学物質排出目録(TRI:Toxics Release Inventory)制度が開始された。1996年にOECD理事会が加盟国に対しPRTR制度導入を勧告したのを受け、日本では1999年に化管法を制定し、PRTR制度が導入された。

PRTR制度の趣旨
PRTR制度とは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が、事業所から環境(大気、水、土壌)へ排出される量及び廃棄物に含まれて事業所外に移動する量を、事業所ごとに把握の上都道府県経由で国に届け出をし、国は届け出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計・公表する制度である。

対象物質:第一種指定化学物質
第一種指定化学物質」とは?(第2条)

  • 人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがあるもの
  • 化学物質の自然的作用による化学的変化により容易に生成する化学物質が上記に該当するもの
  • オゾン層を破壊し、太陽紫外放射の地表に到達する量を増加させることにより人の健康を損なうおそれがあるもの

対象事業者:第一種指定化学物質等取扱事業者
第一種指定化学物質等取扱事業者」とは?(第2条)

  • 第一種指定化学物質の製造の事業を営む者
  • 業として第一種指定化学物質又は第一種指定化学物質を含有する製品であって政令で定める要件に該当するもの(第一種指定化学物質等)を使用する者その他業として第一種指定化学物質等を取り扱う者
  • 常時使用する従業員の数が二十一人以上であること(令第4条)

対象事業所:制度の対象となる事業所単位の基準
上記事業者単位の基準に加え、事業所単位の基準の基本的なものは次の通り。(令第4条)

  • 第一種指定化学物質を年間1トン以上製造する
  • 「特定一種指定化学物質」を年間0.5トン以上製造する

※この要件に満たない場合でも、「第一種指定化学物質を含有する製品」として、第一種特定化学物質を0.1%以上含有し、年間1トン以上(特定第一種指定化学物質は年間0.5トン以上)取り扱う場合、制度の対象となる。(令第4条)

※その他、特別要件施設を有する事業所の場合など、詳細は経済産業省の案内を参照のこと。

排出量・移動量の把握・算定・届出

  • 第一種指定化学物質等取扱事業者は、その事業活動に伴う第一種指定化学物質の排出量及び移動量を把握し、物質ごと及び事業所ごとに、毎年度、前年度の排出量及び移動量を主務大臣に届け出る必要がある。(第5条)

【算定方法】
排出量及び移動量の算定方法については、経済産業省よりマニュアルが公表されている。

【届出方法】
届出方法についても経済産業省より手引きが公表されており、届出事項に営業秘密がある場合の秘密請求についても案内がある。届出は、各事業所の所在地が属する都道府県を経由して、その事業者が行う事業を所管している省庁に届け出ることとなり、電子届出のほか、磁気ディスク届出、書面届出も可能。

 

化学物質の性状及び取扱に関する情報提供(化管法SDS制度)

SDS制度の概要
1992年の地球環境サミットでのアジェンダにおいてMSDS(Material Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)普及の重要性に言及されたのを受け、日本化学工業協会がMSDSに関する指針を作成・公表し、翌年にかけ通産省、厚生省、労働省がMSDSに関する告示を策定・公表した。その後我が国では2000年に労働安全衛生法、2001年に化管法、毒物及び劇物取締法の3法においてMSDS提供義務に関し法が施行された。2003年に国連でラベル表示・SDSに係る国際調和システム(GHS)が策定・発行され、日本でも2012年に化管法、労働安全衛生法の改正が行われた。

SDS制度の趣旨
化管法SDS制度は、化管法で指定された「化学物質又はそれを含有する製品」を他の事業者に譲渡または提供する際に、化管法SDSにより、その化学品の特性及び取り扱いに関する情報を提供することを義務付けるとともに、ラベルによる表示に努める制度である。取引先事業者から化管法SDSの提供を受けることにより、事業者は自らが使用する化学品について必要な情報を入手し、化学品の適切な管理に役立てることをねらいとする。

対象物質:第一種指定化学物質 第二種指定化学物質
第一種指定化学物質」は上述。「第二種指定化学物質」とは?(第)

  • 「第一種指定化学物質」の第2条の定義にある事項のいずれかを満たし、その有する物理的化学的性状からみて、その製造量、輸入量又は使用量の増加等により、相当広範な地域の環境において当該化学物質が継続して存することとなることが見込まれる化学物質。

対象事業者:指定化学物質等取扱事業者
指定化学物質等取扱事業者」とは?(第2条)

  • 第一種指定化学物質等取扱事業者
  • 第二種指定化学物質の製造の事業を営む者、業として第二種指定化学物質又は第二種指定化学物質を含有する製品であって政令で定める要件に該当するもの(第二種指定化学物質等)を使用する者その他業として第二種指定化学物質等を取り扱う者

性状及び取扱いに関する情報の提供

  • <情報提供義務>指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質等を他の事業者に対し譲渡し、又は提供するときは、その譲渡し、又は提供する時までに、その譲渡し、又は提供する相手方に対し、当該指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報を文書又は磁気ディスクの交付その他経済産業省令で定める方法により提供しなければならない。(第14条)
  • <ラベル表示努力義務>指定化学物質等取扱事業者は、指定化学物質等を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する場合において、性状取扱情報を提供する際は、その容器又は包装(容器に入れ、かつ包装して、譲渡し、又は提供する時にあっては、その容器)に次に掲げるものについて日本産業規格 Z 7253に適合する表示を行うよう努めるものとする。(省令第5条)

【SDSで提供する情報と記載方法】
「指定化学物質等の性状及び取扱いに関する情報の提供の方法等を定める省令」で詳細に規定されており、記載方法は日本産業規格 Z 7253に準じる。(省令第4条)
※JIS Z 7253 GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)

SDS記載項目:

1.化学品及び会社情報 7.取扱い及び保管上の注意 13.廃棄上の注意
2.危険有害性の要約 8.ばく露防止及び保護措置 14.輸送上の注意
3.組成及び成分情報 9.物理的及び化学的性質 15.適用法令
4.応急措置 10.安定性及び反応性 16.その他の情報
5.火災時の措置 11.有害性情報
6.漏出時の措置 12.環境影響情報

上記情報提供については、経済産業省よりSDS・ラベル作成ガイドが公表されている。

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規制分野 規制テーマ(報告書の名称)
化学物質 日本 安衛法 労働安全衛生、化学物質の分類・表示、GHS、特化則等
化管法(PRTR法) 化学物質の排出・移動管理、情報伝達等
日本 化審法 化学物質の審査・評価、製造・輸入規制等

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