
日本 安衛法 労働安全衛生、化学物質の分類・表示、GHS、特化則等
労働安全衛生法施行令・労働安全衛生規則の改正
(当社「国内環境法規制モニタリング」12月号より一部抜粋)
2020年12月2日、下記2つの改正法令が公布され、2021年1月1日に施行された。
「労働安全衛生法施行令」の別表第9を改正する政令では、同表に次が追加された。施行令の別表第9とは、「別表第九 名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物(第十八条、第十八条の二関係)」であり、第18条「名称等を表示すべき危険物及び有害物」の対象となる物質、いわゆる名称公表化学物質を意味する。
- 530の2 ベンジルアルコール
同様に、労働安全衛生規則の別表第2も第30条「名称等を表示すべき危険物及び有害物」、第34条の2「名称等を通知すべき危険物及び有害物」の対象物質として、次の項目が追加された。
物質 | 第30条に規定する含有量(重量パーセント) | 第34条に規定する含有量(重量パーセント) |
---|---|---|
ベンジルアルコール | 一パーセント未満 | 一パーセント未満 |
基本情報
安衛法と環境規制
安全規制と環境規制の境界を明確に区切るのは難しい。環境規制は往々にして化学物質の人や環境への影響が主となっている。このとき、「環境」への影響だけでなく、「人」の健康への影響も扱われ、広義においては環境規制の持つ意味合いは非常に広い。
この点を中核に据え、本ページでは次のようにその境界を考えるものとする。
広義の環境規制制度 | 安全・健康被害 |
---|---|
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法体系
労働安全衛生法(安衛法)のもと、基本的なものとして次の下位法令が整備されている。
- 政令:労働安全衛生法施行令
- 省令:労働安全衛生規則
また、上記整理にもとづき、化学物質関連では次の省令も主なものとして確認できる。
- 省令:特定化学物質障害予防規則(特化則)
安衛法の目的:
- 労働基準法と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進すること(第1条)
危険物及び有害物に関する規制(安衛法第二節)
環境規制という観点から事業者が注目すべき安衛法の要点は、第二節「危険物及び有害物に関する規制」にある。
製造・輸入・譲渡・提供・使用の禁止(第55条)
- 黄りんマツチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物(令第16条)
製造許可(第56条)
- ジクロルベンジジン、ジクロルベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物(令第17条)
ラベル表示義務(第57条)
【対象物質と対象者】
- 爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの(令第18条)又は前条第一項の物を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者
【義務】
- その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあつては、その容器)に次に掲げるものを表示しなければならない。
- ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。
表示事項:
化学物質の名称 | 貯蔵又は取扱い上の注意 | 注意喚起語 |
---|---|---|
人体に及ぼす作用 | 表示をする者の氏名(法人名称)、住所及び電話番号 | 安定性及び反応性 |
(第57条, 省令第33条)
文書通知(SDS公布)義務(第57条の2)
【対象物質】:「通知対象物」
- 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの(令第18条の2)又は第五十六条第一項の物(=製造許可対象物質)
【対象者】
- 「通知対象物」を譲渡し、又は提供する者
通知事項:
化学物質の名称 | 物理的及び化学的性質 | 貯蔵又は取扱い上の注意 |
---|---|---|
成分及びその含有量 | 人体に及ぼす作用 | 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置 |
氏名・法人名 | 住所及び電話番号 | 危険性又は有害性の要 |
安定性及び反応性 | 適用される法令 | その他参考となる事項 |
(第57条の2, 省令第34条の2の4)
リスクアセスメント義務(第57条の3)
【対象物質】:「通知対象物」(=SDS交付義務がある化学物質)
【対象者】:事業者(対象となる化学物質の製造・取扱いを行うすべての事業場が対象)
- 事業者はその調査(リスクアセスメント)結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。
【実施時期】:(第34条の2の7)
- 原材料等として新規に採用し、又は変更するとき
- 製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を新規に採用し、又は変更するとき
- 調査対象物による危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき
【調査結果の周知】:(省令第34条の2の8)
- 調査結果は、対象物を製造製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。
具体的には、厚生労働省が指針と実施支援を行うことが要請され、実施支援ページにて案内がなされている。
※曖昧さ回避※ 第28条の2に基づくリスクアセスメント
労働安全衛生法では、第57条の3に基づくリスクアセスメント実施義務のほかに、化学物質に関連して、第28条の2に基づくリスクアセスメント実施に関する努力義務もある。
- 目的の違い:
-
-
- 建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査
-
- 実施時期の違い:
-
- 建設物を設置し、移転し、変更し、又は解体するとき
- 設備、原材料等を新規に採用し、又は変更するとき
- 作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき
- 建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき など
第28条に基づくリスクアセスメントについても厚生労働省が関連資料を公表している。
上記の他、化学物質の細かな性状や有害性等に合わせた規制を敷いているのが、特化則である。
特定化学物質障害予防規則(特化則)
特化則の目的:
第1条に事業者の一般的な責務を規定している。
事業者は、化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するため、使用する物質の毒性の確認、代替物の使用、作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もつて、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、化学物質にばく露される労働者の人数並びに労働者がばく露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならない。 |
以下、第一類物質、第二類物質、特別有機溶剤など、細かな化学物質分類を規定し、それに応じた規制を敷く規則となっている。
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