米国 スーパーファンド法(CERCLA)
EnviXは「米国 スーパーファンド法(CERCLA)」について、規制動向の調査報告書を作成・提供しております。
基本情報・概要
法律名 | 包括的環境対策補償責任法(通称:スーパーファンド法) |
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現地語名称 | Comprehensive Environmental Response, Compensation, and Liability Act (CERCLA) |
公布日 | 1980年 |
包括的環境対策補償責任法(CERCLA)は1980年12月11日、適切に管理されずに廃棄または放置されていた有害物質に起因する汚染サイトの相次ぐ発見を背景として制定された。第一の目的は、有害物質で汚染されたサイトを浄化し、有害物質の放出のおそれがある場合はそうしたおそれを取り除くことで、公衆や環境を差し迫った危険から保護することであるため、国内の汚染サイトの浄化を直接実施したり命じたりする権限を連邦政府に与えるとともに、汚染サイトに関係する潜在的責任当事者を特定し汚染の責任を負わせるしくみを構築した。緊急時や責任当事者が特定できない場合に連邦政府が実施する措置の資金源として巨額の信託基金(スーパーファンド)が創設されたことから、日本では一般に「スーパーファンド法」として知られている。
特徴
CERCLAはすでに発生した汚染やすでにある汚染のおそれに対処することを目的としている。日本では米国の代表的な土壌汚染対策法としてこの法律が挙げられることが多いが、今後の汚染発生を回避するために事業活動を管理・抑制する法律ではない。
背景
1970年代末、ニューヨーク州ナイアガラフォールズ市郊外の住宅地で、地元の化学メーカーが過去に投棄した有害化学物質により住民が深刻な健康被害を受ける事件が発生した。当該地域はラブ・キャナルと呼ばれる運河建設跡地で、1940~50年代にかけて地元化学メーカーが大量の有害化学物質を投棄するのに使用していたが、埋め立てられて住宅や学校が建てられていた。健康被害の原因は、投棄された化学物質が漏出したことによる地下水の汚染で、調査の結果、重金属やダイオキシンなど80種以上の有害化学物質が検出された。当時、こうした投棄や埋立は合法で、化学メーカーの責任を問うことは困難だったが、ラブ・キャナルの事件を契機に、過去に有害物質が投棄または放置された各地のサイトが相次いで特定された。CERCLAは、こうしたサイトの危険性に対する人々の意識の高まりを背景に制定された。何度か改正が行われたが、特に重要視されているのが、1986年の『スーパーファンド改正・再授権法(SARA:The Superfund Amendments and Reauthorization Act)』と2002年の『中小企業免責およびブラウンフィールド再活性化法(Small Business Liability Relief and Brownfields Revitalization Act)(通称:ブラウンフィールド法)』である。
SARAのTitle IIIは『緊急時対応計画および地域住民の知る権利法(EPCRA:Emergency Planning and Community Right-to-Know Act)』という独立法で、有害物質排出目録(TRI)を定めている。
有害物質
有害物質リストは、以下の規則に収載されている。
連邦規則集(CFR) Title 40, Chapter I, Subchapter J, Part 302, §302.4
https://www.ecfr.gov/current/title-40/chapter-I/subchapter-J/part-302/section-302.4
有害物質は、以下を参照して定義している。(CERCLA第101条(14))
- 水質浄化法(CWA)の第311条の(b)項の(2)(A)で指定されている物質
- CERCLAの第102条の(a)項で指定されている物質
- 資源保全回復法(RCRA)の第3001条に基づいて特定または第3001条に従って掲載されている性質を有する有害廃棄物
- CWAの第307条の(a)項に基づいて掲載されている有害汚染物質
- 大気浄化法(CAA)の第112条に基づいて掲載されている有害大気汚染物質(HAP)
- 差し迫った危険有害性のある化学物質または混合物で、EPA長官が有害物質規制法(TSCA)の第7条に則って措置を講じたもの
米国環境保護庁(EPA)は、2024年5月8日付け連邦官報(89 FR 39124)および2024年4月19日付け報道発表で、当該有害物質に「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)」および「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」、それらの塩および構造異性体を追加する最終規則を公布した。当該最終規則は2024年7月8日に発効する。
対象となる企業は、CERCLA第103条(放出物質に関する通知要件)および第111条(g)ならびに付随する規制、および「緊急事態計画および地域住民の知る権利法(EPCRA)」第304条(緊急放出通知)に基づく放出通知要件が適用される。
スーパーファンド法の主な動き
2024年5月 | 米国EPA、PFOAおよびPFOSをCERCLAにおいて有害物質として指定する最終規則を公布 米国環境保護庁(EPA)は、2024年5月8日付け連邦官報(89 FR 39124)および2024年4月19日付け報道発表で、「1980年包括的環境対策補償責任法(CERCLA、スーパーファンド法)」の「第102条(追加の有害物質の指定および報告義務がある放出量の制定;規則)」の(a)項に基づいて指定される有害物質に「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)」および「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」、それらの塩および構造異性体を追加する最終規則を公布した。当該最終規則は2024年7月8日に発効する。 |
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2023年4月 | 米内国歳入庁、復活したスーパ―ファンド化学品税に関する実施規則案を提案 米内国歳入庁(IRS)は、2023年3月29日付け官報において、2021年インフラ投資・雇用法(IIJA)の規定により2022年7月に復活したスーパーファンド化学品物品税(Superfund Chemical Excise Tax)について定める規則の策定の提案に関する告示(NPRM)を行った。本規則案に対する意見の提出期限は同年5月30日である。本物品税は製造者、生産者、または輸入者による「課税対象化学物質(taxable chemical)」と「課税対象物質(taxable substance)」の使用や販売に課されるもので、CERCLAのもと、連邦政府が実施する汚染サイトの浄化などの資金源である信託基金「スーパーファンド」の原資の一部に充てられる。本物品税は復活にあたって税額や課税対象などの法的要件が改正されているため、IRSは今回の規則案について、復活した本物品税の適用に関する「ガイダンス」を提供するものだ、と述べている。 |
2023年4月 | 米国EPA、スーパーファンド法における複数のPFASの有害物質指定に対する意見等を求める提案規則制定事前公告を通知 米国環境保護庁(EPA)は、2023年4月13日付け連邦官報(88 FR 22399)および2023年4月13日付け報道発表で、「1980年包括的環境対策補償責任法(CERCLA、スーパーファンド法)」の「第102条(追加の有害物質の指定および報告義務がある放出量の制定;規則)」の(a)項に基づいて指定される有害物質に「ペルフルオロオクタン酸(PFOA)」および「ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)」をはじめとする複数の「ペル/ポリフルオロアルキル物質(PFAS)」を将来的に指定し、規制を策定することを検討する上で、当該PFASが公衆衛生や環境に対して実質的なリスクを及ぼすか否かを評価する際に必要な意見およびデータを求める提案規則制定事前公告(ANPRM)を通知し、2023年8月11日を期限とする意見募集を開始した。 |
本法律の詳細は、『米国環境法体系ガイド(工場編)の第4章 土壌』を参照ください。
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