米国 大気汚染防止法(固定発生源)
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基本情報・概要
法規・政策の名称(現地語名) | 公布日・施行日等 |
---|---|
大気浄化法 Clean Air Act(CAA) |
1963年制定。 その後、1970年、1977年、および1990年に大掛かりな改正が行われている。 |
大気浄化法(CAA)は、大気を汚染する排出物から人間の健康と環境を保護することを目的として制定された。この法律のもと、米国環境保護庁(EPA)は大気環境に関する最低限の国家基準を策定し、その基準の遵守責任を州に与えている。また、基準を達成できない地域には、特別な大気汚染対策の実施が義務付けられる。
CAAの主な要素には次のものがある。
(1)「基準(criteria)汚染物質」と呼ばれる一般的な大気汚染物質(粒子状物質、地上オゾン、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素、鉛の6物質)の一掃
- 6物質それぞれに国家大気環境基準(NAAQS)を設け、これらを5年ごとに見直す。
- NAAQSとして、1次基準(人々の健康を保護することを目的とする基準)と2次基準(環境や建物への悪影響を防ぎ、それにより人々の快適な生活を保護することを目的とする基準)を設ける。
- 州は、NAAQSを達成するための州実施計画(SIP)を策定する。SIPには、排出制限値や遵守スケジュールのほか、風下にあたる他州の大気環境に重大な影響を与える排出を禁じる規定を盛り込むものとする。
- NAAQSを達成している地域(達成地域)で、対象物質の排出を増やすような新規施設の建設あるいは既存施設の拡張を行う場合、大気質を維持できるような対策をSIPに盛り込み、工事前に許可を取得していなければならない(顕著な大気質悪化の防止(PSD)プログラム)。NAAQSを達成していない地域(未達成地域)、および達成、未達成と分類されない地域(国立公園など)にも同様の許可プログラムがあり、これら3つのプログラムは集合的に「新規発生源審査」(NSR)と呼ばれている。
- 産業施設など、人々の健康や環境、建物に重大な悪影響を与え得るカテゴリーの固定発生源の新設または拡張に対し、新規発生源排出基準(NSPS)を設ける。NSPSは、基準汚染物質やその前駆物質以外の汚染物質(温室効果ガスを含む)にも適用可能である。
(2) 移動発生源からの汚染物質排出抑制(「大気汚染防止(移動発生源)」の情報参照)
(3) 酸性雨対策(二酸化硫黄と窒素酸化物対策)
(4) 水銀、PCBなどの有害大気汚染物質の削減
- 新規および既存のすべての大規模な産業発生源(「主要発生源(major source)」)――単一のHAPを年間10トン以上、あるいはHAPを合計で年間25トン以上排出する、あるいは排出する能力を持つ施設――のカテゴリーごとに、CAAに定められた187種(2020年6月1日現在)の有害大気汚染物質(HAP)の国家有害大気汚染物質排出基準(NESHAP)を設ける。
- NESHAPは、最大達成可能制御技術(MACT)基準に基づき、新規発生源と既存発生源に分けて定められる。MACT基準は、排出量の多い発生源に対し、他の同様の発生源が達成しているのと同じレベルまで排出量を減らすことを求めている。
- いっぽう、より排出量の少ない「地域発生源(area source)」については、都市部で人々の健康にとって大きな脅威となっている30種のHAPを特定したうえで、地域発生源による各物質の排出量の90%を占める発生源カテゴリーが規制される。適用されるのは、一般に利用可能な抑制技術(GACT)と呼ばれる、MACTほど厳しくない排出抑制基準である。
(5) オゾン層の保護
- 基本的にモントリオール議定書の要求事項の実施を目的としており、重要新規代替物質政策(SNAP)プログラムのもと、オゾン層破壊物質(ODS)の代替物質を、それぞれのリスクを比較しながら評価し、それらの使用が容認可能か不可能かを決定する。
- 対象となる産業部門は、1) 接着剤、コーティング剤、およびインク、2) エアゾール、3) 洗浄用溶剤、4) 消火剤・爆発防護剤、5) 発泡剤、6) 冷凍冷蔵・空調機器、7) 殺菌剤、および8) タバコ葉膨張、の8つである。
(6) 大気汚染物質の主要発生源を対象とした包括的な操業許可システムの設立
- ・CAAのTitle Vに定められている。
- ・操業許可は基本的に、EPAの認可プログラムのもと、州や地方認可当局から発給される。
- ・操業許可が必要なのは、主要発生源、ならびに酸性雨対策要件、NSR、NSPS、NESHAP、およびCAAのTitle Iに定められた許可要件に従わなければならないそのほかの発生源である。
(7) 地域的なヘイズ(煙霧)対策
(8) 温室効果ガス報告
- 2010年1月1日より温室効果ガス(GHG)が報告義務の対象となる(GHG報告プログラム参照)。
- 特定の発生源カテゴリーを含む施設や規定の量を超えて温室効果ガスを排出するなどの要件を満たす施設(e.g. CO2換算で年間2万5000 t 以上温室効果ガスを排出する電子機器製造業)は、連邦規則40 CFR Part 98に定められた温室効果ガスの報告要件を満たさなければならない。
また、地域に存在する化学物質に関する情報を住民に提供することなどを目的とする「緊急時対応計画および住民の知る権利法」(EPCRA)の有害物質排出インベントリー(TRI)プログラムは、製造業、金属鉱業、電力ユーティリティ、有害廃棄物処理業など、特定の産業セクターに属する各事業所に対し、毎年7月1日までに、前年に大気中など環境中へ排出した化学物質に関する情報や取り組んでいる汚染防止策をEPA、州政府、および先住民部族政府に提出するよう義務付けている。
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無料情報は以上となります(2020年7月7日最終更新)。本規制テーマに関する最新情報、中長期動向報告書のご要望、また個別調査等のご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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