欧州連合(EU) 欧州連合(EU)の主要規制テーマ

EU 医療機器規則(MDR)

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基本情報・概要

医療機器規則

医療機器規則(EU) 2017/745(略称:MDR)は、欧州連合(EU)で2017年に発効された規則である。MDRは、医療機器とその付属品の上市に関するルールを定めたもので(第1条)、1993年に導入された医療機器指令93/42/EEC(略称:MDD)の改正規則である。MDDからMDRへの変更点としては、主に対象機器(devices)の拡大や、適合性評価、機器の分類の変更などが挙げられる。

医療機器による廃棄物の増加問題

医療機器を使用する上で、使い捨て医療機器(SUD:single-use device)による廃棄物の増加が問題視されており、医療業界の循環型経済の実現を妨げている。そのため、分解や洗浄、滅菌などの工程を通じたSUDの再使用が注目されている。

世界的に循環型経済を目指す今日の社会において、廃棄物のリサイクルや再利用は取り組むべき大きな課題の一つになっている。なかでも医療廃棄物は衛生面への配慮という性質から、特別な処遇がとられる場合や、個別の規制が存在する。医療廃棄物は、新型コロナウイルスが流行した頃から注目が集まり始めた。例えば、パンデミックであった当時、EUへのフェイスマスクの輸入はパンデミック前と比べ2倍以上に増加し、手袋は80%ほど増加した。

また、医療機器は年々構造が複雑化している。使い捨て医療機器という概念がまだなかった1980年代では、医療機器の構造は簡素であり、金属、ガラス、ゴムで構成されていたため、再利用が比較的簡単であった。しかし、技術が進歩して新しい種類のプラスチックが使用されたりなど、複雑な構造かつ滅菌することが難しい医療機器が増加している。

医療機器の定義

MDRでは、医療機器(medical device)を以下のように定義している:

製造者(manufacturer)が単独あるいは組み合わせて人に使用することを意図した、あらゆる器具、装置、器械、ソフトウェア、インプラント、試薬、材料その他の部品であって、以下のいずれか1つ以上の特定の医療目的のために用いられるものをいう。

  • 疾病の診断、予防、監視、予測、予後判定、治療または緩和
  • 傷害または障害の診断、監視、治療、緩和または代償
  • 解剖学的構造または生理学的・病理学的過程または状態の検査、置換または変更
  • 臓器、血液、組織の提供を含む、人体から得られた検体の体外検査による情報の提供

ただし、人体の内部または表面において、薬理学的、免疫学的または代謝的作用によって主たる意図された作用を達成するものではなく、その機能がこれらの作用によって補助される場合があるものとする。

また、以下の製品も医療機器とみなされる:

  • 受胎の制御または補助を目的とする機器
  • 第1条第4項に言及される機器および本稿第1段落に言及される機器の洗浄、消毒または減菌を特に目的とした製品

医療機器の分類

医療機器には多数の製品があるが、医療機器規制国際整合化会議(GHTF: Global Harmonization Task Force)が人体に与えるリスクの程度によって分類し、この分類に応じて規制の内容などを規定している。MDRも医療機器をリスクに応じて分類しており(第51条)、クラスはI〜IIIまである。Ⅲになるにつれ危険度が高まり、生命に大きく関わる。これらのクラスに分類するために、MDRでは附属書VIIIにて、22の分類ルール(classification rules)が定められている。以下にその一部を示す。

  • クラスⅠ
    • 規則に適用されていない非侵襲性機器(車椅子、病院用ベッド、尿収集ボトル、圧縮ストッキング、矯正用眼鏡、聴診器など)
    • 損傷した皮膚に触れる器具など(絆創膏、ガーゼなど)
    • 外科的侵襲性機器を除いた身体開口部に関する器具
    • 再利用可能な外科用器具(メス、ドリルビットなど)
  • クラスⅡa
    • 最終的に体内に注入、投与、導入される目的で血液や体液を保管するための非侵襲的機器(輸血ポンプ用注射器や血液を流すための機器、容器など)
    • 損傷した皮膚の微小環境を管理するための機器(ハイドロゲルドレッシングなど)
    • 一時的使用を目的としたすべての外科的侵襲機器(縫合に使用する針、使い捨てメスなど)
    • エネルギーの投与を目的としたすべての能動治療機器
    • 医療機器の消毒、滅菌に使用されるすべての機器
    • X線放射によって生成された診断画像の記録装置
  • クラスⅡb
    • 真皮または粘膜に発生する重度の傷に使用する器具(火傷用の包帯など)
    • 埋め込み型機器及び長期外科侵襲機器(慰安プラント、長期使用を目的とした末梢神経カテーテル)
    • 心臓の機能、呼吸、中枢神経の活動の変動、臨床状況での診断を目的しているなど数値の変動が患者に危険をもたらす場合に使用される機器
    • 健康状態の深刻な悪化
    • 機器の処理の最終段階で使用される消毒液、洗浄消毒液
  • クラスⅢ
    • 外科的侵襲機器のうち、心臓や中心循環系の監視、修正、診断に特化した機器(心臓血管カテーテル)
    • 心臓や中心循環系に直接接触して利用することを目的とした機器(神経内視鏡、脊髄針、神経カテーテルなど)
    • 能動的な埋め込み装置またはその付属品である機器
    • 患者の声明を機器によって管理するための能動治療機器(自動体外除細動器、自動インスリン注入システム)

また、MDRの第17条では、SUDとその再処理について規定されている。EU加盟国には、同17条で規定されるSUDの再処理や、再処理に対する制限・禁止に関する国内規定を欧州委員会に通知する義務がある。欧州委員会の関連サイトでは、SUDの再処理を国内レベルで制限・禁止している国のリストや加盟国ごとの関連法規が掲載されている。

 

そのほか、EUでは2025年6月25日に、「医療機器の使用説明書を電子形式で提供することに関する実施規則(EU) 2025/1234」がEU官報で公布された。同規則は、欧州委員会が医療機器の使用指示を電子で受け取ることを可能とするもの。これはあくまで医療機器自体がデジタル化することを示唆しているわけではないが、将来的に医療廃棄物や医療に関する紙媒体がさらに減少していき、医療機器分野における再処理と媒体のデジタル化も進んでいくと思われる。

(最終更新:2026年2月3日)

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