米国 電子廃棄物(e-waste)リサイクル法
EnviXは「米国 廃電気電子機器(WEEE)リサイクル法」について、規制動向の調査報告書を作成・提供しております。「米国 製品に含まれる有害物質の規制に関する州法規」も合わせてご確認ください。
基本情報・概要
2024年10月現在、米国の連邦レベルで、欧州連合(EU)の廃電気電子機器(WEEE)指令に相当する法律は存在していない。代わりにカリフォルニア州など25の州が、一般家庭から出る消費者向けの電子廃棄物(e-waste)を主な対象として、それぞれの事情にあったリサイクル法を制定し運用している。
以下に成立年順にみたe-wasteリサイクル法制定州の一覧を示す。
| 成立年 | 州名 |
|---|---|
| 2003年 | カリフォルニア |
| 2004年 | メイン |
| 2005年 | メリーランド |
| 2006年 | ワシントン |
| 2007年 | コネチカット、ミネソタ、オレゴン、テキサス、ノースカロライナ |
| 2008年 | ニュージャージー、オクラホマ、バージニア、ウェストバージニア、ミズーリ、ハワイ、ロードアイランド、イリノイ、ミシガン |
| 2009年 | インディアナ、ウィスコンシン |
| 2010年 | バーモント、サウスカロライナ、ニューヨーク、ペンシルベニア |
| 2011年 | ユタ |
州レベルのe-wasteリサイクル法制定の経緯
もともと消費者向けの電気電子機器の多くは、州や地方自治体が管理する一般廃棄物として埋立処分されていた。しかし、1) 環境汚染、2) 大型のものが多いことによる処分スペース不足、3) 処分費用による地方自治体の財政圧迫、などの問題が深刻化したことにより、WEEE指令制定に向かう欧州に続き、米国でもe-wasteリサイクル・プログラム策定に向けた機運が高まり、2001年、連邦レベルで政府、産業界、および環境団体による協議が始まった。しかし、費用負担などの問題を解決できず、2004年に協議が決裂してしまったため、この問題は州レベルで取り組まざるを得なくなった。
米国で最初のe-wasteリサイクル法は、2003年にカリフォルニア州で制定された。同様の法律制定のピークは2007年~2008年だが、これは、2009年6月の地上デジタル放送への移行を前にテレビが買い替えられ、大量のアナログテレビが廃棄されることを想定して法律の整備を急いた州が多かったためである。
法律の概要と改正の動き
各リサイクル法の内容は、対象機器、報告要件、リサイクル目標の有無など州によってさまざまだが、プログラムの資金調達方法は、前払い制度を採用しているカリフォルニア州と教育に重点を置いているユタ州を除くほとんどの州が、製造者がプログラムの実施に必要な資金を負担する「拡大生産者責任」(EPR)方式を採用している。また、EUのRoHS指令を参照して電子機器の含有有害物質に言及しているリサイクル法も、2024年10月現在、カリフォルニア、ニュージャージー、インディアナ、ミネソタ、ニューヨーク、ロードアイランド、およびウィスコンシンの7州で制定されている。
全米50州のうち半分が制定しているe-wasteリサイクル法だが、2011年のユタ州を最後に、新たに法律を制定する州は出てきていない。その理由のひとつとして、制定法の多くがブラウン管(CRT)を主な対象としているため現状にそぐわなくなり、これまでに確立されたリサイクル・サービスのしくみがたちゆかなくなってきたことが考えられる。このため近年、複数の州が、現行のe-wasteリサイクル法をより現実に即したものにする改正に取り組み始めており、特に利用者にとっての「便利さ(convenience)」を重視する収集・リサイクル・サービスの提供を試みる傾向が目立ってきている。
また、リサイクル対処となる電子機器も多様化してきた。たとえば、オレゴン州のe-wasteリサイクル法は従来、「コンピューター・モニター、デスクトップまたはポータブル・コンピューター、テレビ、周辺機器、およびプリンター」を対象としてきたが、2023年7月の法改正により、「ファックス、ビデオカセットレコーダー、ポータブルデジタル音楽プレーヤー、デジタルビデオディスクプレーヤー、デジタルビデオディスクレコーダー、ビデオゲームコンソール、デジタルコンバーターボックス、ケーブルレシーバー、衛星放送受信機、スキャナ、小規模サーバー、ルーター、およびモデム」の13装置が追加された。カリフォルニア州のe-wasteリサイクル法も2022年9月に改正され、「容易に取り外すことができない電池」を内蔵する「電池内蔵製品」が新たに対象装置に加えられた。
連邦のe-waste政策
連邦レベルでは、2009年に始まったオバマ政権下でe-waste問題、とりわけe-wasteの不法輸出問題への取り組みが活発化した。2011年7月20日には、2010年に創設された連邦省庁間タスクフォースが「電子機器スチュワードシップに関する米国の国家戦略」(NSES: National Strategy for Electronics Stewardship)を発表し、連邦政府から排出されるe-wasteの管理問題に取り組むために、中核となる4つの目標を定めた。それらの目標を目指して行われている取組の成果は、2014年と2017年に発表された成果報告書にまとめられている。
(2024年11月1日最終更新)
無料情報は以上となります。本規制テーマに関する最新情報、中長期動向報告書のご要望、また個別調査等のご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
また、EnviXでは無料のメールマガジンにて一部の規制情報を毎月配信しております。是非ともご登録ください。
セミナー・イベント情報
当社主催の米国関連セミナーをご紹介します。
| 規制テーマ | セミナー・イベント名称 | 開催日 |
|---|---|---|
| 全般 |
世界環境法規制ウェビナー2024(終了)
2024年10月16日(水)より全4日間12講演をライブ&オンデマンド配信 欧州、米州、中国、東南アジアにおける環境規制の最新動向を総まとめする年に1度のシリーズ・ウェビナーです。 |
2024年10月17日 |
|
無料ウェビナー 世界の最重要環境規制トレンド解説(終了)
2024年6月20日に発売した世界環境規制トレンド・レポート第32号の中から最も重要な10テーマをピックアップして解説する無料ウェビナーを開催します。 |
2024年7月24日 | |
| 無料ウェビナー ESG & コロナ時代の海外環境コンプライアンスを考える(終了) | 2020年12月17日 | |
| 廃電気電子機器 |
WEEE/RoHS規制ウェビナー2025(終了)
EU、米国、インド、ASEANを対象として、WEEE/RoHSに関する基本的な法規制の概要から、その最新動向、日本企業の皆様が注目すべき点などを中心に解説します。 |
2025年8月28日 |
全開催履歴は下記リンクよりご覧ください。
セミナー・イベント一覧
毎年好評をいただいております「世界環境法規制セミナー(毎年秋頃開催)」に加え、不定期で専門セミナーを企画しております。セミナー開催情報は当サイトと合わせ、海外環境規制メルマガ(無料)でもご案内しております。 海外環境規制メルマガ(無料)
最新動向
米国の環境規制・市場動向を調査・分析し、その動向と法規・法令の公布・改正情報を「海外環境法規制モニタリング」で配信しております。企業様にとっては、日々ニュースソースを監視・選別する労力を大幅に軽減できるだけでなく、個別の質問にお応えするパートナーとして機能します。
海外環境法規制モニタリング
下記に、本サービスで配信中の記事タイトルを抜粋して紹介しております(不定期更新)。有償サービスでは速報、月例レポート、公布・改正法規リスト、WEB検索アーカイブをご利用いただけます。是非とも導入をご検討ください。
| 更新日 | 規制分野 | 記事タイトル(タイトル・記事全文は有料版で配信しております) |
|---|---|---|
| 2025年8月28日 | 廃電気電子機器 | 米イリノイ州、知事がPFAS削減法と電子廃棄物リ…
|
| 2025年7月28日 | 廃電気電子機器 | 米加州当局、対象電池内蔵製品の定義を明確にする緊…
|
| 2025年6月29日 | 廃電気電子機器 | 米イリノイ州で電子機器リサイクル法の改正法案が州議会を通過…
|
| 2025年6月18日 | 廃電気電子機器 | 米ハワイ州で対象電子装置を拡大する廃電子機器リ…
|
| 2025年6月10日 | 廃電気電子機器 | 米加州廃棄物リサイクル当局、消費者が支払う電池内蔵…
|
| 2025年5月11日 | 廃電気電子機器 | 米加州電子廃棄物リサイクル法、対象電池内蔵製品の製造者に…
|
| 2025年4月9日 | 廃電気電子機器 | 米ユタ州の廃電子機器処分法が改正、製造者による「適格プログラ…
|
| 2025年1月7日 | 廃電気電子機器 | 米カリフォルニア州、電池内蔵製品のリサイクル費用支払い請求プ…
|
| 2024年12月2日 | 廃電気電子機器 | 米加州当局、電池内蔵製品のリサイクル費用支払い請求プロセ…
|
| 2024年9月10日 | 廃電気電子機器 | 米ニューハンプシャー州、法改正で埋立処分禁止の対象にリチ…
|
| 2024年7月3日 | 廃電気電子機器 | 米国バーモント州、スチュワードシップ改正、バッテリー…
|
| 2024年4月11日 | 廃電気電子機器 | 米ウィスコンシン州の電子廃棄物リサイクル法が改正、目標リ…
|
| 2024年3月12日 | 廃電気電子機器 | 米国DOE、e-wasteから貴重な材料を回収するプ…
|
| 2023年7月24日 | 廃電気電子機器 | 米オレゴン州で廃電子機器リサイクル法の改正法が成立 対象機器…
|
| 2023年4月10日 | 廃電気電子機器 | 米オレゴン州廃電子機器リサイクル法改正法案が議会下院を通過…
|
| 2022年9月21日 | 廃電気電子機器 | 米カリフォルニア州電子廃棄物リサイクル法の対象に電池…
|
| 2022年9月20日 | 廃電気電子機器 | 米ハワイ州、法律改正でコンピューター類とテレビのリサ…
|
| 2022年9月6日 | 廃電気電子機器 | 米カリフォルニア州、電子廃棄物リサイクル法の規制対象に電池内…
|
| 2022年8月8日 | 廃電気電子機器 | 米国の廃電気電子機器輸出入がバーゼル条約の附属…
|
| 2022年7月25日 | 廃電気電子機器 | 米サウスカロライナ州で廃電子機器リサイ…
|
| 2022年6月21日 | 廃電気電子機器 | 米EPA、使用済電池収集の最良事例とラベルのガイド…
|
| 2022年4月11日 | 廃電気電子機器 | 米NY州がプロダクト・スチュワードシップおよび製品ラベル表示規…
|
| 2022年3月14日 | 廃電気電子機器 | 米EPAが電子機器リサイクルに貢献した企業を表彰、継続的…
|
| 2021年12月17日 | 廃電気電子機器 | 米カリフォルニア州当局、電子廃棄物リサイクル法の対象…
|
| 2021年12月13日 | 廃電気電子機器 | 米EPA、責任ある電気製品処分プログラムで成果…
|
| 2021年9月10日 | 廃電気電子機器 | 米ウィスコンシン州で電子廃棄物リサイクル法の改正法が成立 地…
|
| 2021年4月6日 | 廃電気電子機器 | 米国EPA、電子機器の模範的回収とリサイクルに多大な貢献をし…
|
| 2020年11月8日 | 廃電気電子機器 | 米EPA、責任ある電気製品処分プログラムで成果…
|
| 2020年6月13日 | 廃電気電子機器 | 米国、ふたつの廃電子機器リサイクル業者認証プログ…
|
| 2020年5月11日 | 廃電気電子機器 | 米国、新型コロナウイルス感染拡大の影響で廃電…
|
| 2020年5月4日 | 廃電気電子機器 | 米EPAのスマート・セクターズ・プログラム、電子製品・半導体…
|
| 2020年1月5日 | 廃電気電子機器 | 米EPA、電子機器リサイクルの…
|
| 2019年10月10日 | 廃電気電子機器 | 日本メーカー設立の米廃電子機器リサイクル会社MRM、リサ…
|
| 2019年9月17日 | 廃電気電子機器 | 米議会上院にも廃電子機器輸出規制…
|
| 2019年7月16日 | 廃電気電子機器 | 米議会下院に廃電子機器輸出規制法案…
|
| 2019年1月24日 | 廃電気電子機器 | 米EPA、電子機器リサイクルの…
|
| 2018年11月15日 | 廃電気電子機器 | 米ミズーリ州当局、最新R2基準の採用のみ規定し廃電…
|
| 2018年11月5日 | 廃電気電子機器 | 米商務省産業安全保障局、廃電子機器の輸出制限する…
|
| 2018年7月23日 | 廃電気電子機器 | 米非政府組織BAN、GPSで廃電子機器の移動を追跡す…
|
| 2018年7月22日 | 廃電気電子機器 | 米廃電子機器リサイクル業者認証プログラム、イリノイ州の廃CR…
|
| 2018年6月6日 | 廃電気電子機器 | 米ミズーリ州当局、廃電子機器リサイクル法の実施規則の削除を提…
|
| 2018年6月6日 | 廃電気電子機器 | 米加州当局、廃電子機器リサイクル・プログラムの改善…
|
| 2018年5月7日 | 廃電気電子機器 | 米メイン州の廃電子機器リサイクル法改正法成立、製造…
|
| 2018年1月15日 | 廃電気電子機器 | 米国EPA、電気電子機器業界の先進企業の持続可能な製…
|
| 2017年11月7日 | 廃電気電子機器 | 米ロードアイランド州、廃電子機器リサイクル法の改正法が…
|
| 2017年9月22日 | 廃電気電子機器 | 米イリノイ州、廃電子機器リサイクル法を全面…
|
| 2017年7月19日 | 廃電気電子機器 | 米イリノイ州、廃電子機器リサイクル法全面改正案が議会通過…
|
| 2017年5月22日 | 廃電気電子機器 | 米WEEEリサイクル業者認証R2、「カリフォルニア州のCRT…
|
| 2017年3月21日 | 廃電気電子機器 | 米連邦議会下院に「安全廃電気電子機器輸出…
|
| 2017年3月16日 | 廃電気電子機器 | 米e-Stewards認証プログラムが規格を改定 非通知査察な…
|
関連製品
EnviXは企業の環境コンプライアンスや経営・市場戦略立案に役立つ情報を提供を提供しております。
米国の環境法・環境規制動向
米国の廃電気電子機器規制情報に関連する製品を下記に紹介します。
| 規制分野 | 製品区分 | 製品・サービス名 | 発売・更新日 |
|---|---|---|---|
| 全般 | 法体系ガイド |
米国環境法体系ガイド 工場編
米国の工場系環境法規をまとめた、事業者必携のガイドです。 |
2025年9月25日 |
| 法体系ガイド |
米国環境法体系ガイド 製品編
膨大な情報量を有する米国の環境法規制情報、その中から日本の事業者に関連が大きい事項を抽出し、要点をまとめ、体系的に編纂しました。 |
2024年9月3日 | |
| 法体系ガイド |
米国環境法体系ガイド 概観
煩雑な米国の法体系の整理を目的として作成されており、米国で環境規制に関わる代表的な法律を取りまとめた資料です。 |
2022年4月15日 | |
| - |
海外環境法規制モニタリング
世界全体の環境法規制の動向をお届けする基幹サービス。同分野の豊富な知識と経験、高度な翻訳能力を兼ね備えた当社研究員が厳選した価値ある情報を速報、月例報告書、検索可能なWEBアーカイブでご提供します。 |
常時更新 | |
| - |
海外環境規制トレンド・レポート
世界主要国における環境法規制の直近6ヶ月から1年間の動向を中心に調査し、ご報告する調査報告書です。 |
年2回更新 | |
| - |
海外環境法規制メルマガ(無料)
海外の環境規制情報を要約して月1回、毎月上旬に配信します。累計1千人以上が購読する、環境規制担当・経営担当必読のメールマガジンです。 |
毎月配信 |
EnviXは各国の環境規制テーマについて、その中長期動向の調査報告書を作成・提供しております。
海外環境規制トレンド・レポート
下表は米国の廃電気電子機器規制情報に関する報告書の一覧です。
| 規制分野 | 規制テーマ(報告書の名称) |
|---|---|
| 廃電気電子機器 |
米国 電子廃棄物(e-waste)リサイクル法
|
EnivXでは日々の海外の環境規制動向の情報提供業務に裏付けられた、様々なノウハウやネットワークを活用し、お客様の様々な個別のご要望にお応えする調査のご相談も承っております。委託調査ページでは実績例等のご紹介もしておりますので、参考にされた上で、まずはお気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。
個別調査・海外現地調査
米イリノイ州、知事がPFAS削減法と電子廃棄物リ…