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EUローカルコンテント要件に関するポジションペーパーを公表

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欧州自動車工業会(ACEA)は2025年9月1日、「Made in Europe‐ローカルコンテント要件」と題するポジションペーパーを公表した。欧州連合(EU)では現在、EUの戦略的部門(特に自動車)での調達を対象に、持続可能性、レジリエンス、ローカルコンテント関連要件を導入することが検討されている。EUのローカルコンテント要件(Local Content Requirements、以下「LCR」と略記)とは、域内で生産・販売を行う域外企業に対し、一定比率以上の域内産物の使用を義務付けるもの。自動車関連では、EVの電池セルとコンポーネントにLCR閾値を設定する可能性や、将来の「法人車両の脱炭素化を促進する法律」の下で、法人車両向けに鋼材・コンポーネント・電池のLCRを導入する可能性などが検討されている。ACEAは、LCRの義務化に伴う市場歪曲のリスクを指摘し、欧州委員会に、まずは包括的な影響評価およびバリューチェーン代表者との専門的協議を行うことを強く要請している。

ACEAの提言のポイント

LCRの設定を、欧州の競争力のある産業能力開発のための唯一の解決策と見なすべきではない。欧州に投資と製造を誘致するには、エネルギー価格の引き下げ、許認可手続きの簡素化、熟練労働力の確保、生産促進に対するインセンティブ(補助金支給や税優遇措置など)といった支援的な産業・通商政策が決定的な役割を果たす。LCRの義務化は市場を歪めるリスクを伴うため、慎重に検討する必要がある。欧州委員会は、関連法案の提出前に包括的な影響評価を実施し、バリューチェーンの代表者と専門的協議を行うべきである。

法的一貫性を確保し、実情に合ったルールを作る

現在、LCRの導入は、「産業脱炭素化加速法」や「法人車両の脱炭素化を促進する法律」などの複数のEU立法で並行して検討されている(文末の備考も参照)。このため、LCRの効果を上げるためには、法律間の整合性を確保する必要がある。いずれの措置も、一貫性のある定義に基づいていなければならない(特に電池に関してはEU電池規則と整合させること)。さらに、バリューチェーンのどの段階が影響を受けるのかを明確に規定し、追加報告義務は最小限に抑えるべきである。

導入は段階的に、かつ差別化して進める

自動車サプライチェーンの複雑性やグローバル性を考慮すると、LCRの導入は、十分なリードタイムを確保した上で、車両セグメントごとに調整しながら、段階的に進めるべきである。

インセンティブにも焦点を当てる

欧州の電池バリューチェーンに投資を誘致するには、既述のとおり、支援的な産業・通商政策が不可欠である。市場の歪みや製造コストの上昇を回避するには、LCR要件をインセンティブと組み合わせる必要がある。

貿易ルールと遵守し、国際パートナーシップを維持する

欧州の電池バリューチェーンはグローバルな協力に依存している。過度に厳しい義務的LCRは、既存の協力関係を危険にさらし、EU企業による世界市場へのアクセスを制限する可能性がある。摩擦を避けるには、互恵主義と明確な定義づけが不可欠である。

LCRの原産地特定

LCRの関税分類変更基準が最も簡便なオプションであるが、付加価値基準や特定の加工要件の設定は、管理上の複雑性や不確実性を招くリスクがある。また、現行の原産地規則(ROO)はすでに古く、適用は任意であるため、義務的なLCRには適していない。

備考:欧州委員会が2025年3月5日に発表した「欧州自動車部門の産業行動計画」の13ページにも、以下の記述がある。
EU域内で販売されるEVの電池セルとコンポーネントを対象とするLCRは、EUの国際的な法的義務に則って、「産業脱炭素化加速法」および「循環経済法」などの将来の法律の中で扱われる予定である。これらのLCRは、域内生産能力の段階的増加曲線(予測)に照らして設定されることになる。

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