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ELV規則案の修正案を欧州議会の所轄委員会が可決、再生プラ含有義務を緩和

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欧州議会で「使用済み自動車(ELV)規則案」の所轄委員会を共同で務める環境委員会(ENVI)と域内市場・消費者保護委員会(IMCO)が2025年7月7日、同法案の修正案を賛成多数で可決した。今後、9月の本会議に諮り、そこで採択されると、欧州議会としての修正案となる。今回のENVI/IMCOの修正案は、「新車の再生プラスチック含有義務」について、規則発効6年後に「20%」とし、これを10年後に「25%」に引き上げるよう提案(欧州委員会の原案は、発効6年後に25%)。一方、今年1月公表の修正「素」案の段階で含まれていた炭素繊維の使用制限に関する文言は一切、無くなっている。ELV規則案は欧州委員会が2023年7月に提案した。欧州連合(EU)の共同立法機関のもう片方であるEU理事会は既に6月17日に自身の修正案「全般的方針(GA)」を採択済み。欧州議会側の修正案がまとまり次第、双方の代表による妥協案作りの交渉が始まる。

新車の再生プラスチック含有義務

ELV規則案の最大の焦点の一つ「新車の再生プラスチック含有義務」(第6条)に関して、ENVI/IMCO修正案は全般的に要件を緩和している。この点について、欧州委員会、EU理事会、欧州議会の提案内容を表1にまとめる。なお、繰り返しになるが、ENVI/IMCO修正案は所轄委員会レベルのものであり、まだ正式な「欧州議会の修正案」ではない。


表 ELV規則案の「新車の再生プラスチック含有義務」に関する各EU機関の提案内容
(出所:各EU機関の情報をもとにEnviX作成)

炭素繊維の使用制限案は見送り

2025年4月上旬、ENVI/IMCOの修正「素」案(2025年1月29日付)の中に、車両における「炭素繊維(carbon fibres)」の使用制限が含まれていることが日本で広く報じられ、企業の株価にも影響を及ぼしたことは記憶に新しい。しかし、今回公表されたENVI/IMCO修正案では、修正「素」案に含まれていた炭素繊維への言及(第5条3項および4項)はすべて消去されている。

備考:EU理事会の修正案では、附属書VIIのパートC「ELVからの取り外しが義務付けられる部品とコンポーネント」のリストに「炭素繊維強化プラスチック(carbon fibre reinforced plastics)部品」を追加することが提案されている。(文末の関連記事を参照)

その他

欧州議会プレスリリースの中で挙げられている、ENVI/IMCO修正案のその他のポイントは以下のとおり:

  • 適用範囲:適用除外規定を、軍隊・民間防衛・消防・救急医療サービス用に設計・製造された車両や、特別な文化的価値を持つ車両にも拡大。
  • 部品・コンポーネントの取外しと交換を可能にする設計:「製造者は、ソフトウェアのアップデートを使った、部品やコンポーネントの交換を妨げてはならない」旨を追加。
  • 再生材含有:「欧州委員会は、実行可能性調査を実施した上で、鉄鋼ならびにアルミニウムおよびその合金の再生材含有目標を導入すべきである」旨を追加。
  • ELV管理の改善およびルールの執行強化
  • 中古車輸出規制の強化

今後の見通しとスケジュール

2025年9月8日~11日:ENVI/IMCO修正案の欧州議会本会議での採決
2025年末まで:欧州議会とEU理事会の代表が妥協案をまとめるための交渉を開始(欧州委員会も仲介役で入るので3者協議、トリローグと呼ばれる)。最終決定は2026年初頭か。

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