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EU ELV規則案 修正素案 – 炭素繊維規制の追加や再生プラ含有率などの緩和を提案

弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「欧州議会の担当議員がELV規則案の修正素案まとめる――炭素繊維規制の追加や再生プラ含有率などの緩和を提案」について紹介します。

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欧州連合(EU)では「使用済み自動車(ELV)規則案」について、共同立法機関の欧州議会とEU理事会(各加盟国の大臣で構成)が並行して審議中で、各々、修正案のとりまとめを進めている。欧州議会では、環境委員会(ENVI)と域内市場・消費者保護委員会(IMCO)が本件の所轄委員会となり、両委員会の担当議員が合同で本規則案の修正素案(Draft Report)を2025年1月29日にまとめた。そのうち特に次のような内容は注目される。

炭素繊維含有制限の追加

この修正素案では、「車両の炭素繊維の含有を規則の附属書IIIに定める条件の下で、且つ同附属書に定める最大濃度までとする」ことや、そうした制限を将来的に欧州委員会が行政立法(委任法)で強化することを認める旨をELV規則に盛り込むことも提案されている。これは欧州委員会の原案(2023年夏に公表)には無かった内容である。

再生プラスチック含有義務の緩和

修正素案は、新車に使用されるプラスチック全体に占める再生プラスチックの割合を20%に引き下げ(欧州委員会の原案は25%)、このうちELV由来の再生プラスチック(いわゆるクローズドループリサイクル)による再生プラスチックの割合を15%(原案は25%)にすることも提案。また、原案は、新車の再生プラスチック含有率に算入できるプラスチックを「ポストコンシューマ廃棄物から再生されたプラスチック」に限定しているが、これに加え、「プレコンシューマ廃棄物から再生されたプラスチック」と「バイオベースプラスチック」も算入できるようにすることを提案。

修正素案は、ELV規則案に対する欧州議会の修正案をまとめるための叩き台としての位置付けである。既にENVIとIMCOでは同素案に対し、1929件の修正が他の委員から提案されており、今後の委員会審議で内容が変わることは十分予想される。ただし、この修正素案を起草した2名の担当議員が欧州議会最大会派「欧州人民党グループ(EPP)」所属である点は見逃せない。EPPは中道右派であり、右派が過半数を占める現在の欧州議会で大きな影響力を誇る(EPPには欧州委員会のフォンデアライエン委員長も所属)。その意味で、欧州議会としての修正案に、本邦企業への多大な影響が懸念される炭素繊維規制などの内容が含まれる可能性もある。委員会での票決は2025年6月、本会議での票決は2025年9月に暫定的に予定されており、ひとまずその結果に注目すべきだろう。

なお、ELV規則案の最終的な内容には、EUの共同立法機関のもう一方である、EU理事会の同意も必要となる。EU理事会での本法案に関する審議で、同様の炭素繊維規制の話が出ているかは現段階で確認できない。

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