日本 日本の主要規制テーマ

日本 騒音・振動・悪臭に関係する規制

環境省、「日・サウジアラビア間の環境協力に関する覚書の署名」を発表

2020年12月17日、環境省は、日本環境省とサウジアラビア環境・水・農業省の間の環境協力に関する協力覚書について、署名を行なったことを発表した。今後、同協力文書に基づき、廃棄物管理、海洋プラスチックごみ対策、自然保護対策等の分野において、相互協力を強化、発展することとしている。両国の環境協力を安定的な基盤の上で、一層の推進を図るため、様々な分野で対話及びプロジェクト等を実施、促進する予定。

このプロジェクトの中には、「騒音公害の削減及び振動制御」が含まれる。

環境省、「令和元年度版環境統計集(試行版)」を公表

環境省が上記統計集を公表していることを、当社では2020年12月30日に確認した。掲載されているデータのうち「大気汚染」の項目には、「騒音・振動・悪臭」が含まれる。

基礎情報(騒音・振動・悪臭)

騒音や振動、悪臭の規制については、まず環境基本法での位置づけを確認する必要がある。

環境基本法

第2条の定義では、「公害」の定義の中に、「環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる…(中略)…騒音、振動…(中略)…及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(略)に係る被害が生ずることをいう」と規定し、騒音、振動および悪臭も公害に含む旨を規定している。

さらに、第21条では、事業者等の遵守すべき基準を定めること等により行う公害を防止するために必要な規制の措置を国が定めるべき行為の対象として、「悪臭の原因となる物質の排出、騒音又は振動の発生」が含まれている。

騒音

日本における騒音規制は、環境基本法と騒音規制法により一般に規制されている。それとは別に特定の騒音については個別に規制が設けられている。

環境基本法

第16条において、「政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする」と騒音基準の策定について規定している。

誰が基準を定めるのか、という点については、「騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長」(第16条2項2号イ)と規定されている。

騒音規制法

騒音規制法のもとには次の下位法令が整備されている。

  • 政令:騒音規制法施行令
  • 省令:騒音規制法施行規則
  • 省令:騒音規制法第二条第四項の自動車を定める省令
  • 省令:騒音規制法第十七条第一項の規定に基づく指定地域内における自動車騒音の限度を定める省令
  • 省令:交通公害に係る大気の汚染、騒音及び振動を定める命令

騒音規制法の目的は、「工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる騒音について必要な規制を行なうとともに、自動車騒音に係る許容限度を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資すること」(第1条)とあるように、事業活動・建設工事・自動車騒音を対象とした規制を敷くことである。

著しい騒音を発生する施設を「特定施設」(特定施設を設置する工場又は事業場は「特定工場等」)、建設工事を「特定建設作業」と定義し、「特定施設」と「特定建設作業」、「自動車騒音」を主な規制対象としている。

具体的には、都道府県知事が規制基準を定める地域を指定し(第3条)、「特定工場等」は都道府県知事が規制基準を策定し(第4条)、指定地域内に特定工場等を設置している者は、基準を遵守しなければならない(第5条)。

他方、「特定建設作業」についての騒音基準は環境大臣が定めるものとなる。指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者は、届出が必要になると共に、基準への適合が求められる。

「自動車騒音」についても、環境大臣がその許容限度となる基準を定めなければならないとある。また、国土交通省が省令で定める技術基準もある。「道路運送車両法」の第41条により、自動車は、「消音器その他の騒音防止装置」について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならないと規定されている。

このほかにも航空機に関連して下記の法律とそれに関係する下位法令が存在する。

  • 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律
  • 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法

さらに、航空機騒音や新幹線鉄道騒音に係わる環境基準については、環境基本法第16条1項の規定に基づき、環境省が告示で基準値を公表している。

振動

日本における振動規制は「振動規制法」および下記下位法令により規制されている。

振動規制法

  • 政令:振動規制法施行令
  • 省令:府省令交通公害に係る大気の汚染、騒音及び振動を定める命令
  • 省令:振動規制法施行規則

振動規制法の目的は、「工場及び事業場における事業活動並びに建設工事に伴つて発生する相当範囲にわたる振動について必要な規制を行うとともに、道路交通振動に係る要請の措置を定めること等により、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資すること」である(第1条)。

規制の焦点は、「事業活動」、「建設工事」、「道路交通振動」となる。

著しい振動を発生する工場又は事業場に設置される施設を「特定施設」(特定施設を設置する工場又は事業場を「特定工場等」と定義)、同様にそのような建設工事作業を「特定建設作業」と定義し、自動車が道路を通行することに伴い発生する振動を「道路交通振動」と規定し、規制を敷いている(第2条)。

「特定工場等」に関する振動基準は、都道府県知事が指定した地域において、都道府県知事が策定し(第4条)、指定地域内に特定工場等を設置している者はその遵守が求められる(第5条)。

「特定建設作業」に関する振動基準は、環境大臣が定めることとなっており、指定地域内において特定建設作業を伴う建設工事を施工しようとする者は、届出が必要になるとともに、基準への適合が求められる。

「道路交通振動」については、環境省が省令で許容限度を定めることとなっている。

悪臭

日本の悪臭規制は、「悪臭防止法」とその下位法令で規制されている。

悪臭防止法

  • 政令:悪臭防止法施行令
  • 省令:悪臭防止法施行規則
  • 省令:悪臭防止法第十三条第二項に規定する指定機関を指定する省令

悪臭防止法の目的は、「工場その他の事業場における事業活動に伴つて発生する悪臭について必要な規制を行い、その他悪臭防止対策を推進することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資すること」である。

アンモニア、メチルメルカプタンその他の不快なにおいの原因となり、生活環境を損なうおそれのある物質であつて政令で定めるものを「特定悪臭物質」として定義し、都道府県知事が規制地域を指定するとともに、規制基準も特定悪臭物質の種類毎に定めることとなっている。

規制基準は[1]敷地境界線、[2]気体排出口、[3]排出水について定めるとされており、「臭気指数」と呼ばれる人間の嗅覚によってにおいの程度を数値化したものが用いられる。

第15条では、「悪臭が生ずる物の焼却の禁止」について、「住居が集合している地域においては、みだりに、ゴム、皮革、合成樹脂、廃油その他の燃焼に伴つて悪臭が生ずる物を野外で多量に焼却してはならない」と規定している。

また、「水路等における悪臭の防止」については第16条に規定があり、「下水溝、河川、池沼、港湾その他の汚水が流入する水路又は場所を管理する者は、その管理する水路又は場所から悪臭が発生し、周辺地域における住民の生活環境が損なわれることのないように、その水路又は場所を適切に管理しなければならない」とされている。

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