米国 GHG規制の根拠となる「判断」を撤回する提案に対する産業界などの反応と懸念
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2025年8月1日、米国環境保護庁(EPA)長官は、『2009年危険性判断』を撤回する提案を官報で発行しました。本判断は、工場や自動車などから排出される温室効果ガス(GHG)の規制を正当化するために使用されています。本判断の撤回が最終化されると、上記のようなGHG排出規制全般が撤廃されます。一方で、依然、中国メーカーの欧州市場進出の勢いが加速しようとしており、その関税対策の一環としてトルコやモロッコへの進出も進められています。
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2025年8月1日、米国環境保護庁(EPA)長官は、『2009年危険性判断(2009 Endangerment Finding)(以降、本判断)』を撤回する提案を官報で発行し、2025年9月22日までコメントを求めていた。本判断は、工場や自動車などから排出される温室効果ガス(GHG)の規制を正当化するために使用されている。また、EPAは、2027年モデル以降の小型・中型車両および大型車両のGHG排出規則を排除することも提案していた。本判断の撤回が最終化されると、上記のようなGHG排出規制全般が撤廃される。発電業界と自動車業界団体は、本判断の廃止に賛成であるものの、現在の政権の政策にいくつかの懸念を持っている。その中で共通する懸念は、規制の不確実性、つまり政権により大幅に振れてしまう政策、に対する懸念である。また環境保護団体や民主党優勢の州の司法長官などは、「EPAによる判断の廃止は恣意的で根拠のないものである」としておりEPAに対する訴訟の可能性が高いとしている。
本判断の撤回に関しては約17,000件のコメントが寄せられている。以下のコメントはメディア等が紹介しているコメントの中から選び出した。
自動車イノベーション連合(AAI: Alliance for Automotive Innovation):米国で販売される自動車製造及び関連部品、技術会社を代表する業界団体。
コメントのURL:
https://www.autosinnovate.org/posts/agency-comments/energy-environment/2025-energy-environment/EPA%20on%20GHG%20Endangerment%20and%20Standards%20Rescission%209-22-2025
賛成理由:以下のようにEPAの判断撤回理由を支持する。
GHGは、現在および予測されるレベルで、人間の健康や福祉に危険をもたらさないと考えられる。したがってEPAは有害でないGHGを規制する法的権限を持っていない。
懸念:
- 自動車業界はすでに大幅なGHG排出削減を遂げている。排出基準の撤回、もしくは緩和は、これまでの削減に対する投資の価値を減少させる。
- 規制の不確実性:最も重大な問題である。安定した科学的根拠に基づく規制は、産業界の長期的な計画と投資に不可欠である。本判定の撤回は、規制の確実性を損ない、低排出技術に関する継続的な革新を妨げる。
- 規制のパッチワーク:カリフォルニア州等がより厳しい規則を維持しており、GHG基準撤廃もしくは緩和は、規制環境のパッチワークを作り出す可能性があり、企業の規制対応を複雑にする。また世界市場において米国競争力を弱める可能性がある。
上記の懸念は、DOEの連邦省エネ・プログラムの規制緩和の動きに対する懸念と共通している。
エジソン電気協会(EEI: Edison Electric Institute):EEIは米国における全ての投資家所有の電力会社を代表している。
賛成意見:EEIは、今後5年間で、米国全土のエネルギーインフラに1兆1000億ドル以上を投資する見込みである。EEIは、新たなエネルギーインフラへの障壁を低減するEPAの取り組みを支持する。EEIはEPAに対し、新たな天然ガス発電設備やその他の重要インフラを稼働させるための持続可能な規制枠組みを確立し、こうした重要な取り組みを継続するよう強く求める。
懸念:
- 自動車業界と同様に永続的な規制を求める。
- 厳しい規制を継続する州もあり、規制のパッチワークを懸念している。
環境保護団体のコメント
非常に多くの環境保護団体からコメントが寄せられているが、その中で代表的なコメントは、以下の通り。
- EPAの分析は何兆ドルもの社会への影響コストを無視している。
- その一方で、製造者の遵法コストを過大評価している。
EPAの本判断を撤回しようとしている提案は、恣意的で根拠がなく多くの法的争いを予感させると述べている。
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