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米加州、マイクロプラスチックの飲料水基準を定める世界初の政策ハンドブック

弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「米加州水資源管理委員会、世界で初めてマイクロプラスチックの飲料水基準を定める政策ハンドブックを承認」について紹介します。

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近年、マイクロプラスチックによる海洋や河川といった水環境の汚染が大きな注目を浴びています。現在、その対策が世界中で検討されており、例えば化粧品などへのマイクロプラスチックの使用禁止やプラスチック廃棄物の適切な管理(拡大生産者責任制度など)といった規制が各国で公布されてきました。

このようなマイクロプラスチックの発生を抑制するための制度はもちろん重要ですが、そのほかにも、その汚染度合いやヒトへの曝露量を定量的に把握していくことも今後の評価をするうえでは必須となります。そして、そういった取り組みを先駆けて進めているのがアメリカのカリフォルニア州です。2020年6月には飲料水中に含まれるマイクロプラスチックの公式な定義を採択したことを発表しましたが、そこではマイクロプラスチックは「化学添加物やその他の物質が追加された可能性がある固形高分子材料(solid polymeric materials)で、1ナノメートル(nm)超、5000マイクロメートル(μm)(=5ミリメートル(mm))未満の面(dimension)を少なくとも3つ持つ粒子」と定義されています。

そして、今回新たにカリフォルニア州で、飲料水に含まれるマイクロプラスチックの測定を具体的に実施するための文書である「飲料水中のマイクロプラスチックの検査と報告の標準方法を確立するための政策ハンドブック」が発表されました。

これは2022年9月7日にカリフォルニア州水資源管理委員会(SWRCB)によって承認されたもので、2021年までに飲料水中のマイクロプラスチック粒子を測定する計画を策定するよう要求した2018年の州法を実施するための文書です。本政策ハンドブックは、公共水道システムと水の卸売業者に対して4年間の飲料水検査で飲料水源と処理済み飲料水の両方をマイクロプラスチックについてモニタリングすることを義務付けるものです。これにより、マイクロプラスチックの飲料水基準が初めて設定される可能性があります。今日まで、世界のどの政府も飲料水中のマイクロプラスチックのモニタリングを義務付けておらず、本政策ハンドブックに詳述されている取り組みを通じて得られたデータは、飲料水を通じた消費者の曝露量を決定するための貴重な知見を提供することになると考えられています。

同ハンドブックによると、4年間の試験計画を2年間ごとのステップに分け、その間に6ヶ月の暫定期間を設けて、水道局のスタッフが第1段階の結果を評価し、それに基づいて第2段階のモニタリングを計画するとしています。そのタイムラインは以下の通りです。

第I段階(2023年秋~2025年秋)
第I段階においてモニタリングする可能性のある公共水道システムは、承認された標準化手法のいずれかを用いて、飲料水源に存在するマイクロプラスチックの試験を実施する。最低限、試験所は長さ50マイクロメートル又は研究所が採用する方法の仕様に記載された最小サイズのマイクロプラスチックのどちらか小さい方を報告しなければならない。より小さいマイクロプラスチックのモニタリングが強く推奨される。公共水道システムに発行されるモニタリング命令に別途記載がない限り、モニタリングは飲料水源のみに限定されるものとする。

第II段階(2026年秋~2028年秋)
2025年秋から2026年春までの6ヶ月間の暫定期間の後、州水道局は、第II段階の方法論に従った試験を要求される公共水道システムに対して、追加のモニタリング命令を発行する予定である。モニタリングの対象となる公共水道は、第I段階で要求されたシステムと同じシステム、および追加システムを含む場合がある。

マイクロプラスチックによる水質汚染がカリフォルニア州でどの程度まで進行しているのか?それが具体的に判明することで、その環境および健康リスクが明確化し、規制強化に繋がっていく可能性があります。また、こうした取り組みはアメリカの他の州だけでなく、世界中の国々でも広がっていくと予想されますので、今後の動向には注視する必要があるでしょう。

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