
EU電池規則案 日本語版和訳&解説書
欧州委員会 2020年12月10日(木)公表
EU電池規則案
日本語版和訳・解説書 発売中
2020年12月10日(木)、欧州委員会は新たに電池規則の案を公表しました。
従来、電池指令(Directive 2006/66/EC)として知られ、各加盟国の国内法化を通じて各国で実施・運用されていたEUにおける電池・廃電池の管理法令。この度、規則(Regulation)として案が公表されたことで、将来的に各加盟国の国内法化なしに、一律に規制が課される見通しとなりました。
EUの電池指令の内容を参考に、EU以外の国・地域でも同様の規制が敷かれるなど、電池指令の影響は非常に大きいもので、EUのみならず世界各国、ひいては広範な事業者が注目する法令の一つです。
指令から規則となる。では、事業者対応の観点から実質的に変更があるのでしょうか?
新たな規則案の分量は電池指令の5倍以上と、これだけでもその変容の大きさが伝わります。
EU電池指令について
そもそも「電池指令」とはどういうものだったでしょうか、簡単に振り返ります。電池指令の特徴的な規制項目には次のものがあります。
- 有害物質の含有規制(上市の禁止)
- 廃ポータブル電池および蓄電池の回収スキームの創設と維持管理
- 加盟国へ回収率目標を設定
- 電池の取り外しができるよう環境配慮設計を要求
- 廃電池および蓄電池の最低限の処理、リサイクル要件を設定
- 産業用および自動車用電池および蓄電池の埋立て処分または焼却処分を禁止
- エンドユーザーへの情報提供要件(回収方法やヒト健康への影響、シンボルや記号の意味など)
- ラベル表示要件(指定のシンボル表示や、有害物質の元素記号表示など)
電池指令では、「指令(directive)」であるために、要求事項が加盟国政府を対象としたものが多く、国内法化する際に盛り込まなければならない要件を規定することが主旨となっていました。
しかし、「規則(Regulation)」となった場合、国内法化プロセスを経ずに、事業者に要件を課す内容が主となるため、注意が必要です。
欧州委員会、EU電池規則案をWTO/TBT通報
2021年1月25日、欧州委員会は、従来の電池指令を廃止し、新たな規制を設ける内容が盛り込まれたEU電池規則案をWTO/TBT通報した(G/TBT/N/EU/775)。
電池指令は、欧州における電池・蓄電池の有害物質含有制限による上市規制や情報提供・ラベル表示義務、廃電池・廃蓄電池の回収・リサイクル目標遵守、最低限の処理・リサイクル要件、埋立て・焼却制限など多彩な要件を「指令(directive)」として規定しており、これまでは各加盟国が国内法化を通して運用していた。
2020年12月10日に公表され、今回1月25日にWTO通報された新たな規則案は、「規則(Regulation)」という形をとっており、各加盟国に一律に規制が適用されるものとなる。
12月に公表された規則案の文書番号と、今回WTO通報がなされた文書番号が一致しているため、これらは同一文書と思われる。
2021年4月26日まで意見募集期間が設定されており、2021年中または2022年の規則採択が見込まれているという。
欧州議会の担当委員会が電池規則案に対する立場を採択
2022年2月10日、欧州議会で電池規則案を担当する環境・公衆衛生・食品安全(ENVI)委員会は、同規則案を巡る自身の立場をまとめた報告書草案を採択した。同報告書草案は3月に欧州議会総会での採決にかけられる。報告書草案は、欧州委員会提案に対する議会からの修正案をまとめたもので、例えば「軽量輸送手段用電池」との新たな電池分類を導入し一部要件の対象に含めるよう提案している他、電池パスポートの対象拡大やカーボンフットプリント要件の適用開始の6か月の前倒し、リサイクル効率目標・材料リカバリー目標の引き上げなども提案している。
全文は「EU電池規則案 電池パスポート対象拡大等提案の委員会報告書草案」をご覧ください。
EU理事会が欧州議会との交渉に向けた基本方針を採択
2022年3月17日、EU理事会は欧州委員会の電池規則案を巡る基本方針(General Approach)を採択した。今後の欧州議会との交渉に向けたEU理事会の立場(修正案)をまとめたものである。なお、欧州議会はすでに3月10日の総会にて自身の修正案を採択しており、これにより交渉に向けた両者の立場が定まったことになる。
EU理事会案の主な内容は以下の通り:
- 対象範囲:
電池の定義にすぐに使える、または組み立てられる状態で市場に投入されるモジュールを含めることなどを提案。また、EV用電池に関して容量2kWhという閾値を削除(特に持続可能性・安全性要件およびデューディリジェンス要件の対象拡大)。 - 定義:
電池のカテゴリーに電動キックボードや電動自転車に使用される「軽移動手段用(LMT)電池」という新カテゴリーを導入することを提案。「再製造」に関する定義の追加なども提案。 - 持続可能性・安全性要件:
電池に含まれる化学物質の規制化プロセスの強化(特に加盟国当局の権限強化)、カーボンフットプリント規定の適用開始時期を産業用電池とEV用電池で別々に設定することなどを提案。 - 情報および電子情報交換システム:
QRコードや電池パスポート、情報共有システムなどの異なる情報提供ツールの適応開始時期を発行から48か月後に統一することなどを提案。電池パスポートに関しては、欧州委員会に対し発行から36か月以内に詳細を定める実施法を制定するよう要求。 - デューディリジェンス:
規定明確化や国際レベルの既存の文書やガイドラインへの言及強化するための修正などを提案。 - 廃電池の管理:
回収目標に関してLMT電池専用の目標設定を提案。ポータブル電池、LMT電池ともに市場投入による回収率の算出方法は回収の可否に基づく方法へと修正することや、廃電池が中古品と偽って輸出されることを防ぐため、輸出に際して使用済み電池と廃電池を区別するための基準を定める新しい付属書なども提案。
和訳・解説書のご案内
EnviXでは下記2点の文書を作成・販売しております。
- 【和訳】EU電池規則案(114頁)
- 【和訳解説】EU電池規則案の和訳と解説-EU電池指令から電池規則へ(149頁)
- 電池指令の概要(4頁)
- 電池規則案の背景(6頁)
- 電池規則案の和訳解説(136頁)
【和訳解説】のサンプルをご覧ください。
製品サンプル:電池規則案の和訳解説 (PDFファイル)
※ 12月23日同日に発売される和訳は規則案そのもの(附属書含む)を対象としたものであり、規則案を含む欧州委員会の提案文書で最初に記載のある「EXPLANATORY MEMORANDUM(説明覚書)」や、規則案本文の後、附属書の前に記載のある「LEGISLATIVE FINANCIAL STATEMENT(立法財務諸表)」は和訳の対象外となります。
製品名 | ![]() 日本語版和訳・解説書 |
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発売・更新日 | 2020年12月23日(水) |
納品物 | PDFファイル(A4判 和訳114頁・和訳解説書149頁) |
提供価格 | 40,000円(税別) ※ 正式な規則公布後に本製品の改訂版を発売。本製品購入者向けに割引価格での提供を予定しております。 ※ ウェビナー受講費は金額に含みません。本ページ記載のフォームより別途お申込みください。 |
ご注文・お問い合わせ | 予約注文は「WEBフォーム」より承ります。完成後直ちにメール添付にて納品いたします。 お支払い方法・期限につきましては「納品・ご請求について」を予めご確認ください。 ご質問・お問い合わせはお電話(03-5928-0180)もご利用ください。平日10~17時受付。 担当:村松 |
解説ウェビナー(終了)
2021年3月10日(水)開催(本ウェビナーは終了しました)
ウェビナー「EU電池規則案の解説 – 指令から規則へ(再開催)」
電池指令から電池規則となると何が変わるのか? 事業者の観点で基礎から解説!
電池指令についてもう少し詳細に振り返り、規制対象の電池は何であったか、輸入の場合はどうか、生産者が気をつけなければいけない要件は何であったかなど、規則案を見るにあたって予め把握しておくべき事柄についても概説します。
前回開催時の評価・参加者様の声
急遽開催した前回(2020年12月23日)につきましては、多忙な年末にもかかわらず、僅か1週間の受付期間に50社を超えるお申込みをいただきました。本規制案への注目度の高さが伺えます。
開催後のアンケートでいただいたコメントの一部を紹介します。
- 長大で複雑な規則案の概要を掴めた。
- 現行の指令と規則案の比較・差分が分かりやすく解説された。
- 講演を踏まえ、和訳・解説書を確認するとより理解が深まると感じた。
- ポイントをしっかり捉えられており、他の規制との関連性もわかりやすかった。
※ 本企画は2020年12月23日(水)に開催した同タイトルのウェビナーの再開催となります。講演内容の大半に変更はありませんが、規則案の意見募集(2021年2月14日期限)とその反応についての情報や関連動向があればその最新動向を追加予定です。
開催概要
名称 | ![]() |
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開催日時 |
2021年3月10日(水)14:00-15:30 |
受講費 |
1名につき20,000円(税別) 2020年12月23日(水)の前回分にお申込みいただいた方へ、大半の講演内容に変更はありませんが、参加をご希望の場合は1名につき10,000円(税別)の割引価格を適用します。 |
視聴・資料受領方法 | 視聴方法; 本ウェビナーは「Zoom.us」で配信します。お客様の環境での利用可否について事前に必ずご確認ください。 » ウェビナー参加要領(Zoom.us)・免責事項 講演資料の配布方法:
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お申込み・お問い合わせ |
本企画は終了しました。 |
講演プログラム
講演プログラム |
講演「EU電池規則案の解説 – 指令から規則へ」
※ 講演資料は前日17:00まで送付予定。 |
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電池 | 法規和訳 |
![]() 規則案の公表により、将来的に各加盟国の国内法化なしに、一律に規制が課される見通しとなりました。 |
2020年12月23日 |
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電池 |
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2020年12月23日 |
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