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EU電池規則案 電池パスポート対象拡大等提案の委員会報告書草案

2022年2月10日、欧州議会で電池規則案を担当する環境・公衆衛生・食品安全(ENVI)委員会は、同規則案を巡る自身の立場をまとめた報告書草案を採択した。同報告書草案は3月に欧州議会総会での採決にかけられる。報告書草案は、欧州委員会提案に対する議会からの修正案をまとめたもので、例えば「軽量輸送手段用電池」との新たな電池分類を導入し一部要件の対象に含めるよう提案している他、電池パスポートの対象拡大やカーボンフットプリント要件の適用開始の6か月の前倒し、リサイクル効率目標・材料リカバリー目標の引き上げなども提案している。

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弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「欧州議会の担当委員会が電池規則案に対する立場を採択」について紹介します。続けて全文をご覧ください。

日本企業はもちろんのこと、世界中の多くの企業が注目している環境規制動向のひとつとして、2020年12月に公開されたEUの電池規則案が挙げられます。従来の電池指令(Directive 2006/66/EC)を規則(Regulation)に格上げすることで、各加盟国の国内法化なしに、一律に規制が課されるという点が大きな変更点です。また、規制内容も大幅に強化されており、特に持続可能性と安全性(カーボンフットプリント・ルール、最低リサイクル率、性能と耐久性の基準、安全性のパラメーターなど)、ラベル表示と情報(持続可能性に関する情報、電池の状態や期待寿命に関するデータの保存など)などは企業からも懸念されています。

この電池規則案ですが、2022年2月10日、欧州議会内の担当部署である環境・公衆衛生・食品安全(ENVI)委員会は、同規則案を巡る自身の立場をまとめた報告書草案を採択しました。報告書草案は、欧州委員会提案に対する議会からの修正案をまとめたものとなり、具体的には以下のような点が挙げられています。

  • 軽量輸送手段用の電池
    電動自転車や電動キックボードなどに使用される「軽量輸送手段用の電池」を新たな電池分類として導入し、同電池分類をカーボンフットプリント要件やリサイクル材の最低含有率目標、回収目標などの要件の対象に含める。例えば、「軽量輸送手段用の電池」回収目標に関しては、2023年に45%、2025年に65%、2030年に70%との目標値が提案された。
  • 電池パスポート
    電池パスポートの対象である「2 kWhを超える産業用・EV用電池」という規定について、『2 kWhを超える』という文言を削除し、対象となる電池の範囲を拡大する。
  • カーボンフットプリント
    カーボンフットプリント要件の適用開始時期の6か月前倒し(つまり2027年1月1日~適用開始)や、リサイクル効率や材料のリカバリー率目標の引き上げる(例えば2026年の材料リカバリーレベルをコバルトで90→95%、銅90→95%、リチウム35→70%など)。

このENVI委員会による修正案に対して、2022年2月11日、欧州自動車・産業用電池生産者協会(EUROBAT)は即座に批判意見を発表しました。このなかでEUROBATは、議会の修正案はEUの脱炭素化計画の実現や欧州における新電池産業の創出を遅らせるとの懸念を表明し、議会総会での採択までに対応すべき点を提言として挙げています(既得権条項の詳細化や対象拡大、電池の定義・分類の見直し、生産者の定義の見直しなど)。特に、自動車用電池や産業用電池のメーカーの負担軽減につながるような修正を求めています。

このほかにも、様々な業界団体が電池規則案について意見書を公開しております。例えば、2022年1月21日には、上記のEUROBATや充電式電池業界(RECHARGE)、欧州自工会(ACEA)、自動車部品業界(CLEPA)をはじめとした欧州電池業界の11団体が共同ポジションペーパーを発表しました。そこでは、以下の5つの要点について欧州電池業界としての懸念点を表明しております。

  • リサイクル材料
    最低含有量の義務化による域内での電池材料不足や域外への依存強化等の懸念もあるため、リサイクル材料の最低含有量目標に関しては、強力な見直し条項の導入など非常に慎重なアプローチが必要である。
  • 設計要件とセカンドライフ
    電池の健全な状態に関するデータ保存義務や電池の再使用・再製造・再利用に関する要件は、それに適した電池(EV用リチウムイオン電池や定置用蓄電池)のみを対象とすべき。
  • 材料リカバリー目標
    過度に厳格なリカバリー目標はリサイクル工程における資源使用量の増加や世界的な排出量の増加につながる可能性があり、電池のカーボンフットプリント軽減という目的と矛盾する可能性がある。
  • カーボンフットプリントと性能・耐久性の範囲
    同じ種類の電池でさえ異なるサービスを提供し技術的要件も大きく異なるため、カーボンフットプリントや性能・耐久性に関する要件は、EV用と定置用蓄電池に関する製品分類ルールを策定し、特定の電池技術と用途別の特定の製品グループごとに適用すべき。
  • 有害物質規制
    電池規則案の有害物質規制化プロセスは、既存のEU規制(REACH規則、労働安全衛生関連規制、産業排出指令)の下ですでに規定されている既存プロセスと重複しているため、電池規則では既存規制を参照するにとどめるべき。

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電池 法規和訳 EU電池規則案 日本語版和訳&解説書
規則案の公表により、将来的に各加盟国の国内法化なしに、一律に規制が課される見通しとなりました。
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電池 EU 電池指令・電池規則案 2020年12月23日

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