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EU新電池規則案 電池リサイクルをめぐり議論

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2021年3月22日、欧州廃棄物管理協会(European Waste Management Association:FEAD)は、EU産業デイズ2021の一環として、欧州委員会と共同で、「電池リサイクル:EU活性化」と題されたイベントを開催した。イベントでは、欧州委員会による新電池規則案に基づき、政策立案者や産業関係者が電池回収目標やデポジット制度など、リサイクルに関連する広範なテーマで議論を行った。

欧州委員会は、2020年12月、現行の電池指令に代わる新電池規則案を発表した。新規則案は、循環型経済への移行や2050年気候中立といったEUの掲げる野心的な目標に沿った新たに持続可能性要件などを含むとても野心的な提案となっており、電池リサイクル強化に向けた様々な措置が提案されている。

同欧州委員会提案に基づき、今後、EU理事会および欧州議会による交渉が進められていくが、今回のイベントは、そんな背景の中実施されたものである。イベントでは、政策・規制に関する政策立案者を交えた議論(第1部)と産業関係者による議論(第2部)が行われた。

第1部には、FEADのPeter Kurth代表やJose Rizo Martin欧州委員会シニアエキスパート、Maria Spyraki欧州議会議員(国際貿易委員会)、独環境調査機関Oeko InstitutのHartmut Stahlシニア研究員が参加し、欧州委員会提案をめぐる議論を行った。そこでは、特にポータブル電池の回収目標およびデポジット制度に関する議論が焦点となった。

ポータブル電池の回収目標に関しては、欧州委員会提案の下では、現行の45%目標から2025年までに65%、2030年までに70%への引き上げが提案されているが、リサイクル業界は欧州委員会提案には満足しておらず、FEADは、「循環性を保ち」、「企業がインフラに投資する」ためには、回収率の向上はとても重要であるとし、目標値のさらなる引き上げを要求した。第2部に参加した電池リサイクル産業の3企業も、このようなFEADの立場を支持している。一方、これに対し欧州委員会は、回収率70%というのは回収可能な廃電池のほぼ100%に相当し、65%目標はすでに野心的な数値であるとの点を強調。Spyraki欧州議会議員も、「実現可能な目標設定が重要である」としてこのような欧州委員会の立場への支持を示した。

また、自動車電池や産業電池といったポータブル電池以外の回収目標に関しては、新規則案の策定前の準備調査を行った調査機関Oeko InstitutのHartmut Stahlシニア研究員は、データ不足および計測方法の観点から目標設定が難しいとの点を説明した。これら電池は、ポータブル電池と用途も寿命も異なり、どれだけの廃電池が回収可能・輸出されているのかなど不明な点が多く目標の設定が困難だという。

デポジット制度に関しては、欧州委員会提案には盛り込まれていないが、リサイクル業界の関心は高い。FEAD のKurth代表は、回収率向上だけでなく、電池の発火リスクの削減の観点からも、同制度の導入が必要であると主張している。同氏は、デポジット制度の導入により、電池の不適切な処理による発火リスクを減らせると死しており、このようなFEADの立場は、第2部に参加した欧州企業も支持している。一方、この点に関してMartin欧州委員会シニアエキスパートは、ポータブル電池に関しては、調査の結果、同制度により導き出せる成果が3~5ポイントの回収率改善と僅かなのに対し、制度導入に伴う行政的障壁があまりに大きく成果に見合わないとし、検討していないと説明している。一方、自動車電池や産業電池といった大型電池に関しては、検討の可能性を残した。また、Spyraki欧州議会議員は、デポジット制度の導入に関しては、特に明確な立場を示さず、どちらかというと拡大された生産者責任(EPR)の強化を通して回収を強化していくべきとの見方を示している。

そのほかにも、第1部では、関連EU規制との整合性の確保(重複の回避)や研究イノベーションへの投資を通したリサイクル技術向上の重要性なども言及された。

続く第2部では、欧州の電池リサイクル企業3社が参加し、欧州委員会提案に対する産業界の見方が共有された。3企業は、ポータブル電池の回収目標の引き上げやリサイクル材に関する最低基準など、欧州委員会提案を広く歓迎しており、特に、これによりリサイクル需要が確保されれば投資にも繋がると期待を示した。3社の概要およびそれぞれの欧州委員会提案に対する立場は以下の通り:

オーストリアの電池リサイクル企業Saubermacher Dienstleistungs社(Ralf MITTERMAYR、CEOが参加):子会社Reduxの下で電池リサイクルに取り組み年間の電池リサイクル量は20万トン以上。

  • 今後の電池の発展を視野に入れ2030年リカバリー目標の対象にマンガンやアルミニウムを追加することを提案。
  • リサイクル効率の計算方法を早急に制定しないとリサイクル設備への投資ができないため、2022年までに策定するよう要求。
  • ポータブル電池の回収目標の引き上げ:2025年・2030年目標90%を支持。

イタリアのリサイクル企業E.VAL グループ(Alessandro DANESIコマーシャル・ダイレクターが参加):イタリアの3拠点で年間13万トンの電池を処理。

  • 電池に関連する廃棄物コードの分類を見直すべきと提案(現行コードではリチウムイオン電池などがその他電池に分類されており市場の現状に合っていない)。
  • 域内廃棄物輸送の容易化を呼び掛け。現行のプロセスでは、特定タイプの廃電池の域内輸送手続きに1年ほどかかる場合もありコストもとても高い。そのため、何が安全に輸送可能で何が高リスクなのかを明確に定めるために、ブラックマス(電池を解体し破砕した塊)に関する「廃棄物の終わり(End of waste)」規則を制定することで輸送の容易化につながるとの見方を共有。
  • ブラックマスの質は廃棄物の選別に左右されるが機械選別には限界があるため、電池の化学物質に基づいた色別ラベルを提案。

フィンランドの電力企業Fortum Recycling and Waste Solutions(Janne KOIVISTOパブリック・アフェアーズ・マネージャーが参加):EV電池のリサイクルがメインで、湿式製錬技術を使用した先進リサイクル技術を有し低排出かつ高いリサイクル率(80%)を実現。

  • EU市場に流通する全電池の規則への準拠の確保を要求。
  • EPR制度の下へのモジュレーション要件の導入を提案(モジュレーションとは、リサイクル容易性要件を満たすメーカーにはEPR料金優遇するなど、特定の要件に応じてEPR料金を変えること)。
  • 第3国への不正輸出を防ぐ他ために新タイプ電池に廃棄物コードを設定するよう提案。

また、上記3企業による議論の中では、電池メーカーとの連携に関する議論も行われた。その中で、電池の取り外しが可能な設計などをめぐりメーカーとの連携が可能ではないかとの見方が共有された一方で、電池が取り外せない場合のリサイクルコスト増をメーカーに負担させるような制度が必要との声も挙がった。

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規制分野 製品区分 製品・サービス名 発売・更新日
全般 法体系ガイド EU環境法体系ガイド2018(製品編)
英語情報とはいえ、その情報量の多さ、複雑さ、活発な動向から、体系的な把握が難しいEUの環境法体系を把握する一助となるよう作成されたガイドとなります
2018年10月17日
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電池 法規和訳 EU電池規則案 日本語版和訳&解説書
規則案の公表により、将来的に各加盟国の国内法化なしに、一律に規制が課される見通しとなりました。
2020年12月23日

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規制分野 規制テーマ(報告書の名称) 更新日
電池 EU 電池指令・電池規則案 2020年12月23日

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