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欧州連合、「新」大気質指令を公布、WHOガイドラインに近い2030年基準を設定

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欧州連合(EU)は2024年11月20日、現行の大気質関連2指令(指令2008/50/ECおよび指令2004/107/EC)を改正すると同時に一本化して再編纂(recast)する「新」大気質指令(EU) 2024/2881をEU官報で公布した。2024年12月10日に発効し、加盟国は発効から2年以内に、その内容を実施するための国内法を整備することになる(ほとんどの条項が2026年12月12日から適用開始となる)。新指令の主な目的は、2050年までに大気汚染ゼロを達成することを目標とし、その中間的基準として、より厳格な2030年大気質基準を定め、WHOの大気質ガイドラインの基準値にEU基準を近づけることである。そのほか、新指令は市民による司法アクセスや補償を受ける権利も明確化している。

大気質基準の強化

新指令は、2030年元日までに達成すべき大気汚染物質に関する新基準を定めており、同基準はWHOの2021年大気質ガイドラインに、より近いものとなっている。これらの汚染物質には、呼吸器系疾患の原因となることが知られている粒子状物質PM10およびPM2.5、二酸化窒素、二酸化硫黄などが含まれる。大気質基準は、最新の科学的証拠に基づき2030年までに見直され、その後5年ごとに定期的に見直される。大気質はEUレベルで共通の方法と基準を用いて評価されており、新指令は大気質の監視とモデリングを、さらに改善するものとなる。また、新指令は、2030年までに新基準が達成されないリスクがある場合に、2030年より前に大気質ロードマップを作成するよう加盟国に義務付ける内容も含み、早期の対応を確保している。加盟国は特定の条件を満たせば、2030年の期限の延期を要請できる。

司法アクセスおよび補償を受ける権利

新指令は、指令の実施により影響を受ける、または受ける可能性の高い人々に、公正かつ公平な司法アクセスを保証している。また指令の定める大気質基準に加盟国が違反したことで健康に影響が出た場合に、市民が補償を求め、受ける権利などを明確に定めるよう加盟国に義務付けている。

2030年元日までに達成すべき基準

附属書I「大気質基準」のセクション1「健康保護のための制限値」の表1「2030年1月1日までに達成すべき健康保護のための制限値」を以下に示す。

  • PM2.5
    25 μg/m3(1日、暦年あたり18回を超えない)
    10 μg/m3(暦年)
  • PM10
    45 μg/m3(1日、暦年あたり18回を超えない)
    20 μg/m3(暦年)
  • 二酸化窒素(NO2
    200 μg/m3(1時間、暦年あたり3回を超えない)
    50 μg/m3(暦年あたり18回を超えない)、20 μg/m3(暦年)
  • 二酸化硫黄(SO2
    350 μg/m3(1時間、暦年あたり3回を超えない)
    50 μg/m3(暦年あたり18回を超えない)、20 μg/m3(暦年)
  • ベンゼン
    3.4 μg/m3(暦年)
  • 一酸化炭素(CO)
    10 mg/m3(日々の8時間平均最大値)
    4 μg/m3(1日、暦年あたり18回を超えない)
  • 鉛(Pb)
    0.5 μg/m3(暦年)
  • ヒ素(As)
    6.0 ng/m3(暦年)
  • カドミウム(Cd)
    5.0 ng/m3(暦年)
  • ニッケル(Ni)
    20 ng/m3(暦年)
  • ベンゾ(a)ピレン
    1.0 ng/m3(暦年)

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