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日本 2050年カーボンニュートラル達成に向け法改正

2021年5月26日、地球温暖化対策推進法の一部改正案が成立し、同年6月2日、公布された。今回の改正では、2020年秋に宣言された2050年カーボンニュートラルを基本理念として法に位置づけるとともに、その実現に向けて地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や、企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化を推進する仕組み等が定められた。

今回の改正では、特に以下3点が要点とされる。

  1. 2050年までの脱炭素社会の実現を掲げる基本理念の設定
    地球温暖化対策の推進は、環境の保全と経済及び社会の発展を統合的に推進しつつ、日本における2050年までの脱炭素社会の実現を旨として、国民並びに国、地方公共団体、事業者および民間の団体等の密接な連携のもとに行われなければならないものとする。
  2. 地方創生につながる再エネ導入を促進
    2050年までのカーボンニュートラルの実現には再生可能エネルギーの利用が不可欠である。一方、再生可能エネルギー事業に対する地域トラブルが見られ、地域における合意形成が課題となっている。こうした課題を解決するため、地方自治体が策定する地方公共団体実行計画において、地域の脱炭素化や課題解決に貢献する事業の認定制度を創設し、関係法律の手続きのワンストップ化を可能とするなど、円滑な合意形成による再生可能エネルギーの利用促進を図る。
  3. 企業の温室効果ガス排出量情報のオープンデータ化
    地球温暖化対策推進法では、一定以上の温室効果ガスを排出する事業者に対し、排出量を報告させ、国が取りまとめて公表する制度が存在する。同制度においてデジタル化を推進することにより、報告する側と使う側の双方の利便性向上を図る。
    また、開示請求を不要とし、オープンデータ化を勧め、企業の脱炭素に向けた前向きな取り組みが評価されやすい環境の整備を進める。

以下、関連情報。

地域での脱炭素社会の実現に向けたロードマップ

2050年までのカーボンニュートラルを達成するためにも、一部の地域では先行して取り組んでいくことが求められている。これは「地域脱炭素ロードマップ」と呼ばれるもののなかで現在議論されており、このロードマップでは、2030年までに100か所の「脱炭素先行地域」をつくっていくことが目標として掲げられている。具体的な対策としては以下の8点が挙げられている。

  1. 屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
  2. 地域共生・地域裨益型再エネの立地
  3. 公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
  4. 住宅・建築物の省エネ性能等の向上
  5. ゼロカーボン・ドライブ(再エネ×EV/PHEV/FCV)
  6. 資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
  7. コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり
  8. 食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立

これらの対策を一部の地域で先行して進め、その成功モデルを国内の他の自治体に普及させていくことで、2050年カーボンニュートラルの目標を実現していくことが日本政府の狙いである。

内閣官房が2021年6月8日に発表した「地域脱炭素ロードマップ(案)」については、以下よりダウンロード可能である。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/dai3/siryou1-1.pdf

カーボンニュートラルに対する企業の取り組み

一方で、企業側でもカーボンニュートラルに対する意識がますます高まってきている。例えば、国内最大規模の製造企業であるトヨタ自動車は2021年6月11日、工場のカーボンニュートラルの達成を従来の2050年から2035年に前倒しすることを目標として掲げた。工場での塗装工程など中心に新技術を取り入れることで、二酸化炭素の排出抑制に繋げる考えであるという。

トヨタ自動車の発表資料は以下より閲覧可能である。
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/35433196.html

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