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英国が北アイルランド向け食品の通関猶予期間を延長、EUは反発

本稿は環境規制とは関わりありませんが、Brexitを欧州の動静の一端としてご紹介します。

EUの欧州委員会は2021年3月15日、英国がEU離脱協定の一部である北アイルランド議定書に違反したとして法的措置に乗り出した。主にスーパーマーケットに納入される食品について、英国が一方的に、グレートブリテン島から北アイルランドへの移送の際に新たに必要となる通関手続きの猶予期間を延長したことが原因。20年12月31日にEU離脱移行期間が終了した後、コロナ禍も相まって企業や税関の対応がなかなか追い付かない英国にとって苦肉の策だったとはいえ、さらに問題がこじれれば、EUが英国からの輸入品に関税を課すなどの動きに出る恐れもある。

北アイルランド議定書とは

30年間にわたる北アイルランド紛争を終結させた1998年の和平合意「ベルファスト合意」を尊重し、アイルランド島内で陸続きの北アイルランド(英国の一部)とアイルランド共和国(EU加盟国)の間に物理的な国境を置かないようにする取り決め。そのため、北アイルランドは実質的にEUの単一市場に取り込まれる形となり、EUと英国をまたぐ可能性のある物資について、いずれも英国の領土であるグレートブリテン島と北アイルランドの間での通関手続きが必要となる。

猶予期間の延長

グレートブリテン島から北アイルランドのスーパーマーケットなどに納入される食品を巡ってはもともと、EUとの合意の下、新たに必要となる通関手続きが3カ月間免除される「猶予期間」が設けられていた。だが英国は3月3日、EUから事前に了承を得ないまま、この猶予期間をさらに6カ月延長し10月1日までとすることを発表した。

今後の流れ

英国は、この件に関してEUから正式な通知を受け取った3月15日から1カ月の間に自国の立場を表明することができる。欧州委員会はそれを精査した上で、必要に応じて見解を示す。北アイルランド議定書を巡る問題を管轄するEU司法裁判所は、英国に制裁金の支払いを命じることが可能だ。さらにEUは、英国に対し、双方が納得できる解決策を目指して合同委員会で話し合うことを呼び掛けている。英国が話し合いに応じなければ、EU離脱協定に定められている紛争解決制度に従い、仲裁手続きまで進むことがあり得る。すると仲裁パネルは金融制裁を課すことができ、英国が支払いに応じない場合は、EUが英国と結んだ協定の履行を停止し、英国からの輸入品に関税を課す可能性がある。

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