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EU エコデザイン作業プログラム2020-2024の事前調査に関するステークホルダー会議

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EU 環境法体系ガイド(製品編)

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2021年3月26日、「エコデザイン作業プログラム2020-2024」の策定に向けた準備調査の成果を報告するステークホルダー会議が開催された。新作業プログラムは、欧州委員会が2024年までにエコデザイン指令の下で新たにエコデザイン要件を導入または見直す製品グループ/分野横断的イニシアティブを示すものである。会議では、現在準備調査を進めているコンサルティング企業3社(Viegand Maagøe、Oeko-Institute、VHK)が調査で特定した、作業プログラムへの追加が推奨される10の新製品グループと6つの分野横断的イニシアティブ(要件に考慮されるべき側面)を紹介した。

欧州委員会は、通常、エコデザイン枠組み指令に基づき、実施規則の採択を通して具体的な製品グループ別のエコデザイン要件を制定している。要件の導入・見直しの対象となる製品グループは、4年ごとに欧州委員会が定める作業プログラムの中で決められており、2020-2024年をカバーする作業プログラムの策定が現在進められている。当初の予定では2020年末までに発表される予定であったが、準備調査の遅れからプログラム発表が大幅に遅れ、欧州委員会による作業プログラム発表は2021年9月の予定となっている。会議に参加した欧州委員会のDeurwaarderバッテリー・エコデザイン担当政策オフィサーが会議で明かした詳細タイムラインは以下の通りとなる:

  • コンサルティング企業による準備調査終了(2021年4月末、4月14日までポジションペーパーを受け付け)
  • 準備調査の提言に基づき欧州委員会がロードマップを発表(4月予定)
  • ロードマップに対するコンサルテーション(6月までの予定)
  • 欧州委員会による作業プログラムの発表(9月予定)

また、Deurwaarder政策オフィサーによれば、最終的に欧州委員会が作業プログラムに盛り込んだ製品グループ/イニシアティブに関しては、さらに要件制定に向けた調査を経て個別要件を定める委任規則の策定プロセスが行われるため、実際に要件が商品に適用されるようになるまでには、最低でも4年~6年はかかるとのことである。

今回の会議では、欧州委員会が作業プログラムに盛り込むべきとして事前調査を実施したコンサルティング企業が最終的に選んだ16の製品グループ/分野横断イニシアティブが紹介された。もともと、準備調査の最初の段階では31の製品グループと分野横断イニシアティブが特定されていたが、その後の詳細分析を経て、最終的に16製品グループ/イニシアティブまで絞られている。しかし、欧州委員会のDeurwaarder政策オフィサーによれば、欧州委員会は、作業プログラムの策定に際し準備調査の提案は考慮するものの、最終的に提案されたすべての製品グループ/イニシアティブを盛り込むわけではなく、提案されていない製品グループ/イニシアティブが追加される可能性もあると説明している。そのため、下表では、「選ばれなかった」製品グループやイニシアティブも参考情報として取りまとめた。

製品グループ 分野横断イニシアティブ
選ばれた 商用洗濯機器、商用食洗器、商用調理機器、低温エミッター、プールヒーター、企業ネットワーク機器、家庭・事務所用小型ネットワーク機器、共通外部電源、UPS、商用スマートセンサー 軽量設計、リサイクル材、エコロジカルプロフィール、耐久性、ファームウェア・ソフトウェア、希少・クリティカル原料
選ばれなかった 小型調理機器、窓、脱炭器・軟水器、エアーカーテン、第3部門以外のコーヒーマシン、第3部門用ホットドリンク装置、ヘアドライヤー、PV街灯システム、温室カバー、無人飛行機(ドローン)、相互接続型家庭用オーディオ・ビデオ、共通電池、EV充電器、ベースステーション 市場監視

なお、エコデザイン指令をめぐる並行した動きとして、欧州委員会は現在、新循環型経済アクションプランの一環で持続可能な製品イニシアティブを進めている。同イニシアティブの下でエコデザイン枠組みが見直される予定となっているが、Deurwaarder欧州委員会政策オフィサーは、今回の作業プログラム2020-2024は、現行のエコデザイン指令の下での今後4年間の取り組みを示すもので、もっと先の動きとなる持続可能な製品イニシアティブ(エコデザイン枠組み指令の見直し)とは別の動きであると説明している。

一方、分野横断的イニシアティブは、「軽量設計」や「耐久性」といった、製品グループ別の要件とは異なり、対象となる複数の製品グループに横断的に適用される要件に関するものとなる。そのため、幅広い参加業界からの関心が集まった。

特に会議に参加したステークホルダーの反応が大きかったのは、耐久性などに関する要件の全製品グループに対する適用の提案であり(対象製品グループを定めるのではなく、前製品グループを対象とし例外を制定)、例えば、ホームアプライアンス業界(APPLiA)は、「個々のカテゴリーの中でも、製品ごとにその環境影響は大きく異なる」、「分野横断的な取り組みは、製品固有の規則との重複を引き起こすリスクがある」、としてこのようなアプローチには反対の立場を示した。また、バッテリーに関しても、充電式電池業界(RECHARGE)からは、全製品グループを対象とした分野横断的イニシアティブとバッテリー規制のような製品固有規制との重複をどのように回避できるのか、との意見が出た。この点に関しては、欧州委員会のDeurwaarder政策オフィサーは、バッテリー規則案の下で提案されているエコデザイン要件も考慮し、追加のエコデザイン要件が必要かどうか検討していくとしている。

もう一つ関心を集めたのは、分野横断的イニシアティブ間のトレードオフに関してである。例えば、軽量設計や耐久性、修理可能性は相いれないのではないか(どちらかを優先すればどちらかをあきらめることになる)との指摘が複数のステークホルダーから出たが、担当コンサルティング企業は、これらの分野横断的イニシアティブに関するメソドロジーの下で平等な測定方法を設定しバランスの取れた要件を設計する必要があるとしながらも、リサイクル可能性要件に関しては、製品がリサイクル可能でもリサイクルされるかわからないという不確実性が残るため、その面ではリサイクル材に関する要件の方が確実性が高く、重視される可能性はあるとしている。

製品グループ10こと分野横断的イニシアティブ6個の詳細は以下の通り。

製品グループ

商用洗濯機器
洗濯脱水機、トンネル洗濯機、洗濯乾燥機が対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用33PJ(ペタ・ジュール)、水66M3、温室効果ガス2メガトン(CO2換算)。2014年時点で候補になっていたが、産業規格の策定を待ち先延ばしにされていた。現在では、エネルギー使用の80-90%が欧州規格でカーバーさている(EN17116-4:2019、EN50640:2018など)。エネルギー効率のほか、洗剤使用による環境汚染などの影響も考慮される。また、商用の場合には衛生面への考慮から家庭用よりも高温で使用されることが多く、その点も考慮している。エネルギーラベルの導入は検討不要との方向で検討中。

商用食洗器
フード型・アンダーカウンター型食洗器が対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用20PJ、水17M3、温室効果ガス1メガトン(CO2換算)。商用洗濯機同様に規格が制定されるまでエコデザイン要件の策定が先延ばしされてきたが、エネルギー使用の約90%をカバーする規格が制定された(EN63136:2019)。エネルギー節約ポテンシャルはそこまで大きくないが、商用洗濯機器とまとめて対応される可能性がある。また、商用洗濯機器同様、洗剤使用による環境汚染などの影響も考慮される。

低温エミッタ―(45度以下の低中温ラジエーター)
低温エミッターが対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用170PJ、温室効果ガス10メガトン(CO2換算)ときわめて高い。低温エミッターは最近市場に流通し始めた製品であり、高温のものより必要なエネルギーが多い。ヒートポンプに適した低温ラジエーターを使用することによるエネルギー節約ポテンシャルが大きい。

商用調理機器
オーブン、コンロ・グリル、フライヤー、蒸し器、レンジフード、湯煎器、ブラットパン、パスタクッカーなどが対象として検討されているが、対象が広すぎるため、まだスコーピング(対象の決定)が完了しておらず、2021年4月後半に行われるステークホルダーとの会合でさらなる詳細が詰められる。オーブン、コンロ・グリル、フライヤー、蒸し器、だけでエネルギー節約の95%を占めるため、これら製品は優先度が高い。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用386PJ、温室効果ガス30メガトン(CO2換算)。エネルギーラベルの使用も検討されている。

スイミングプール
家庭用室内外プール、共有室内外プール、ホテル、ウェルネスセンター室内外プール、公共室内外プール、レジャーセンター室内外プールが対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用63PJ(家庭用は47PJ)、温室効果ガス4メガトン(CO2換算)。電気ヒーターやガスヒーターはエネルギー節約ポテンシャルが大きく、より効率的な凝縮ガスヒーターやヒートポンプなどの代替製品がある。

企業ネットワーク機器
企業や公的機関、データセンターで使用されるルーター、スイッチが対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用19PJ、温室効果ガス1メガトン(CO2換算)。企業ネットワーク機器自体の節約ポテンシャルはそこまで高くないが、関連するストックデータやエネルギー消費レベル、保存容量、冷却装置などによる節約ポテンシャルが大きいと想定される。

家庭・事務所用小型ネットワーク機器
IAD、無線ルーター、モデム、スイッチ、SAN、IoTゲートウェイ、IoTセルラーゲートウェイ、コンプレックス・セット・トップ・ボックス、その他ネットワーク機器が対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用69PJ、温室効果ガス3.5メガトン(CO2換算)。家庭用・事務所用小型ネットワーク機器は、製品寿命前に交換されることが多い。また、クリティカル原料の含有量も多く、エネルギー節約ポテンシャルも大きい。

共通外部電源
外部電源に関する既存のエコデザイン規制の定義に基づく外部電源が対象(ACで入力された電力を低圧のDCまたはAC電力に変換し出力するために設計され、機器とは離れていて、250Wattを超えない)。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用27PJ、温室効果ガス1.5メガトン(CO2換算)。EPSは、パソコン購入時に自動的についてくるため、不要であっても市場に流通してしまうため、節約ポテンシャルはEPSの販売量の削減に大きく左右される。ワイヤレス充電の対象への追加も検討されている。また、要件設定時には2~3つのタイプの電源に分別される可能性があるが、そのためにはより一層の調査が必要。

UPS
1.5kVA以下、1.5~5kVA、5~10kVA、10~200kVAのUPSが準備調査の対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、使用段階でのエネルギー使用55PJ、温室効果ガス2.5メガトン(CO2換算)。販売量が増えている製品であり、大きなエネルギー節約ポテンシャルから2014年にも準備調査の対象となったが、市場環境の変化によりこれまで要件が制定されなかった。また、欧州委員会が2020年12月に提案しているバッテリー規則案の下でのカーボンフットプリントや電池の健康状態、性能、耐久性要件などを合わせて検討する必要がある。

商用スマートセンサー
性能指標に関するデータの計測・処理・保存・通信の機能が対象。2030年時点の年間節約ポテンシャルは、接続された機器の使用段階でのエネルギー使用380-760PJ、温室効果ガス17-34メガトン(CO2換算)。センサー自体のエネルギー消費はそこまで大きくないが、接続される機器のエネルギー消費は大きい。センサーは振動や温度、その他の性能などの指標を測定し性能を最適化するため、エネルギー消費の削減やメンテナンス強化につながる。今後数年で大きな市場拡大が見込まれる。

分野横断的イニシアティブ

軽量設計
すべてのエネルギー関連製品を対象。年間180PJのエネルギー節約が見込まれる。循環経済にとって軽量設計は重要であるが、重要なのはすべてをただ軽くするということでなく、リサイクル可能性やリサイクル材の使用、修理可能性、耐久性など様々なアスペクトの間でバランスの取れたアプローチを採択すること。準備調査では、今後対象となる製品グループの特定、方法論の策定、完全な実施に先駆けたパイロットプロジェクトの実施を提言している。

リサイクル材
すべてのエネルギー関連製品を対象としたリサイクル材要件の導入により年間でリサイクルプラスチックが0.5メガトン増加し33PJのエネルギー節約につながる。同要件は、循環型経済の観点からのみならず、域外国からの輸入への依存軽減にもつながる。準備調査では、今後対象となる製品グループの特定、方法論の策定、完全な実施に先駆けたパイロットプロジェクトの実施を提言している。

エコロジカルプロフィール
複雑な製品/システム、原料採掘・製造・寿命時の影響の大きいエネルギー関連製品、エネルギー関連の消耗品、日直接的な影響のあるエネルギー関連製品が対象。メーカーがどのように情報を提供するかのテンプレートやベンチマーク、評価方法の定義を検討する必要がある。

耐久性
エネルギー関連製品(寿命やイノベーションサイクルの短いもの、故障率の高いもの、製造段階の影響が大きいもの、ソフトウェアアップデートへの依存度が高いもの)が対象。2030年時点で年間175-1052PJのエネルギー節約ポテンシャルがある。準備調査では、分野横断的な準備調査の実施や全エネルギー関連製品に対する共通要件としての導入を提案(例外を示す)。そのうえで優先的に取り組むべき製品グループを制定するよう提案。また耐久性ラベル要件の導入も提案している。

ハードウェア・ソフトウェア
メイン機能の実施にハードウェアやシステムソフトウェアを使用するエネルギー関連製品およびコンピューターシステムで特別な機能の実施に使用されるアプリケーションソフトウェアが対象。準備調査では、全エネルギー関連製品に対する共通要件としてアップデートを含む新要件導入を提案(例外を示す)。アプリケーションソフトウェアに関してはエネルギー・資源消費に関する実施可能性調査の実施を提案。

希少・クリティカル原料
クリティカル原料および/または環境・社会への影響の大きい原料を含むエネルギー関連製品が対象。エネルギー関連製品のエコデザインメソドロジーやEcoReportツールの最新のクリティカル原料リストに沿ったアップデートや準備調査/リビュー調査における体系的な原料分析の実施などを提案。

参考 ステークホルダー会議プレゼンテーションスライド

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製品設計・ラベル EU ErP指令(エコデザイン指令)、エネルギーラベル指令 2018年12月1日

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