韓国政府とサムスン電子、下水処理水を半導体工場の工業用水として供給する覚書を締結
弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「韓国政府とサムスン電子、下水処理水を半導体工場の工業用水として供給する覚書を締結」について紹介します。
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私たちの日常生活はもちろん、工業生産活動においても「水」は必要不可欠な資源のひとつです。このため、気候変動による降水パターンの変化や工業発展にともなう地域全体での取水量の増加といったことが原因で水資源が不足した場合、企業活動への影響は甚大になる恐れがあります。特に前者の気候変動のリスクはますます高まっており、水資源の適切な管理の重要性は今後さらに増すでしょう。
さて、コロナ禍以降に世間を騒がせたトピックのひとつとして「半導体」が挙げられますが、この半導体の製造において重要な要素が水です。半導体製造工場では水を大量に使用するため、水の安定的な供給が必須と言えます。半導体メーカーにとっては、半導体製造量を増大させるために水の確保が大きな課題となりますが、今回は韓国の「サムスン電子」による再生水利用の動向について紹介します。
サムスン電子と韓国環境部が2022年11月30日に締結した「下水処理水のリサイクル」を活性化するための覚書(MOU)では、政府機関、地方自治体、及びサムスン電子が協力し、サムスン電子の半導体工場において下水処理水を工業用水として供給することを定めました。具体的には、水原(Suwon)市、龍仁(Yongin)市、器興(Giheung)区、華城(Hwaseong)市、烏山(Osan)市における5ヵ所の下水処理施設から処理水をリサイクルし、1日当たり約47万4000トンに上る工業用水をサムスン電子の半導体工場に供給する予定です。環境部によると、下水処理水のリサイクル目標量は1日当たり約47万4000トン、年間で1億7300万トンであると説明し、国内において最大規模になるといいます。
本MoUにおける各機関の役割は以下の通りです。
- 環境部
- 下水を処理した再利用水を半導体工場に供給できる基盤の構築
- 下水を処理した再利用水の需要先の拡大
- 高度な浄水生産に関する研究開発投資
- 京畿道
- 再利用水を円滑に供給するための地方自治体の支援・取りまとめ
- 水原市、龍仁市、華城市、烏山市
- 下水を処理した再利用水の供給施設・再利用施設の設置支援
- サムスン電子から再利用水の供給に対する費用を回収し、地域経済の活性化事業のために活用
- 平沢(Pyeongtaek)市
- 再利用水の供給ラインを設置
- 韓国水資源公社
- 再利用水の事業化・環境部の研究開発投資に対する支援と運用
- 韓国環境公団
- 再利用施設の設置計画及び事業化
- サムスン電子
- 再利用水の供給を受け、ESGの実現
- 高度の浄水(半導体の表面を洗浄するためのもの)技術開発への研究開発投資
- 安定的な水の供給を確保し、経営リスクの削減
このように、サムスン電子は政府や地方自治体とも協力して下水再生水を利用することで、半導体製造に必要な水の安定確保を進めています。なおサムスン電子は、2030年頃に同社の半導体工場では現在の2倍に上る工業用水が必要になると見込んでいる一方で、2022年9月に同社が発表した「新環境経営戦略」では、水の再利用を最大限に増やすことで取水量を2021年水準で維持する計画となっております。このほかにも、同じく半導体分野では台湾のTSMCも排水の再利用を推進しており、2023年には使用する水の20%が再生水に替えられる予定となっています。
世界中で水のリスクは高まっており、各社が対策を進めています。さらに、自社だけでなく、サプライヤーが水リスクを抱えている場合には間接的な被害を被る可能性もあります。このため各社はいま、水リスクの特定とその解決策の実行に向けて動いています。
エンヴィックスでは水に関わる各国の規制・政策調査について対応可能ですので、関心がありましたら遠慮なく御連絡ください。
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