フィリピン、プラスチック容器包装についてEPRを導入する法令を制定
フィリピンで2022年7月23日、共和国法(RA)第11898号「拡大生産者責任法2022年(Extended Producer Responsibility Act of 2022)」が制定された。本法は、同国の固形廃棄物管理に関する法令であるRA 9003「2000年生態的固形廃棄物管理法」を改正し、新たに追加する「第III-A章」において、廃棄物管理、特にプラスチック廃棄物の管理に関してEPRを導入することを規定している。対象事業者(プラスチック包装廃棄物を発生させる総資産が1億ペソ以上の製品生産者)には、EPRプログラムの策定、実施やリカバリー目標の順守、監査の実施を義務が課される。本法は、官報または一般紙での公布から15日後に施行される。
対象包装材
プラスチック包装とは、輸送、流通、販売のために商品を運ぶ、保護する、または包装するために使用される製品を指す。具体的には、以下の製品が含まれる。
- 単層または多層(他の材料を含むか否かを問わない)構造の小袋、ラベル、ラミネートその他の軟質プラスチック包装製品。
- 飲料、食品、家庭用品、パーソナルケア製品および化粧品などの容器、それらのカバー、キャップ、蓋、その他の必需品や販促品(例えばカトラリー・皿・ストロー・スティック、防水シート、標識、ラベル)などの硬質プラスチック包装製品(他の材料と層になっているか否かを問わない)。
- プラスチック袋(使い捨てプラスチック袋を含む)で、商品の運搬または輸送に使用され、販売時に提供および利用されるもの。
- ポリスチレン。
EPRプログラム
対象事業者は、本法の施行から6か月以内に、プラスチック包装廃棄物の効率的な管理およびプラスチック包装の生産、輸入、供給または使用を削減するための「EPRプログラム」を策定または段階的に導入しなければならない。EPRプログラムは生産者責任組織(PRO)の有無を問わず個別に、または共同で策定することができる。対象事業者またはPROは、天然資源環境省を通じて国家固形廃棄物管理委員会(NSWMC)にEPRプログラムを提出しなければならない。提出期限は、本法の施行から6か月以内である。なお、対象事業者またはそのPROには、EPRプログラムへの順守を確認するための年次順守報告書の提出も求められる。
リカバリー義務
硬質または軟質プラスチック包装を発生させる対象事業者は、プラスチックニュートラルを達成するためのリカバリープログラムを策定、段階的に導入し、使用したプラスチック包装をリカバリーまたはオフセットしなければならない。また、リカバリープログラムに関する順守報告書を天然資源環境省に提出する必要がある。
前年に発生したプラスチック製品の量に対するリカバリー目標は以下の通りである。
- 2023年12月31日 20%
- 2024年12月31日 40%
- 2025年12月31日 50%
- 2026年12月31日 60%
- 2027年12月31日 70%
- 2028年12月31日以降 80%
監査
対象事業者またはそのPROは、独立した第三者監査人に依頼し、報告されたプラスチック製品の使用量の発生、リカバリー、EPRプログラムの順守の信憑性を確認する監査を実施し、監査報告書を天然資源環境省に提出しなければならない。
インセンティブ
対象事業者やPROは、内国歳入法の第13章(税制上の優遇措置)で規定された承認プロセスに従って優遇措置を申請することができる。また、EPR費用は、内国歳入法第34条(A)(1)に従って総所得から差し引くことのできる必要経費とみなされる。
罰則
EPRプログラムを登録していないまたはリカバリープログラムに関する規定に違反した対象事業者には、本法令で規定された額の罰金(500万ペソ~2000万ペソ、約1200万円~4800万円)が科せられる。ただし、リカバリー目標を順守できなかった場合については、本法令で規定された額の罰金または使用量の回収・転換費用もしくはその不足分の2倍のいずれか高い額の罰金が科される。
拡大生産者責任(EPR)法の実施規則を発行
フィリピン環境天然資源省(DENR)は2023年1月24日付けプレスリリースにおいて、環境天然資源省行政命令2023年2号「2022年拡大生産者責任法の実施規則」(以下、本IRR)を発行したことを発表した。本IRRは、本法の実施にあたる具体的なガイドラインを規定するもので、特にEPRプログラムの内容や登録方法、監査について詳述している。本IRRは、官報または一般紙による公布から15日後、かつ国家行政登記局(ONAR:Office of the National Administrative Register)による写しの受領確認を以て発効する。
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本IRRでは、EPRプログラムに含める以下の項目の詳細要件を規定している。
- 容器包装材の種類および当該容器包装材を使用している製品のブランド名
- プラスチック容器包装材フットプリント(12暦月の間に市場に持ち込まれたプラスチック容器包装材の種類、材料形態、一般形態ごとの検証可能な重量(kg))
- プラスチック廃棄物転換目標(リユース、リサイクル、処理または適切な処分のためにリカバリーおよび転換されるプラスチック容器包装材フットプリントの目標量(kg))
- その他のEPRプログラム
- 容器包装材のラベル表示
- 実施状況
- 順守状況
例えば(3)について、当該目標は所定のリカバリー目標(上述)を下回るものであってはならない。また、(4)のその他のEPRプログラムには、本法第44-A条の(a) 環境に配慮していない製品の削減、および(b) 廃棄物リカバリープログラムに示されたような活動および戦略を含めることが想定されている。
その他、本IRRの重要な点は以下の通り。
- 監査のマニュアルおよび監査人認定システムは2023年9月30日までに整備され、2024年1月より実施される。これらに沿った統一的な監査が実施されるまでの間は、本IRRの要件に従って計算、データ記録および監査システムを確立、実施しなければならない。
- 本lRRの発効から1年以内に、本法のもと罰せられる行為の裁決に関する規則および手続き、課せられる罰金の等級を定義、規定する罰金等級制度が公害裁定委員会(PAB)により公布される。
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規制分野 | 製品区分 | 製品・サービス名 | 発売・更新日 |
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全般 | 法体系ガイド | フィリピン環境法体系ガイド | 2015年11月1日 |
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容器・包装材 | 法規和訳 |
フィリピンEPR 2022年拡大生産者責任法(共和国法第11898号)実施規則
本法ではプラスチック容器包装材の生産者責任制度を規定しており、EPRプログラムの策定・実施や回収目標の順守、監査の実施を義務付けています。 |
2023年8月25日 |
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下表はフィリピンの容器・包装材規制情報に関する報告書の一覧です。
規制分野 | 規制テーマ(報告書の名称) | 更新日 |
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容器・包装材 | フィリピン 拡大生産者責任法 | 2024年5月24日 |
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