米国EPA、GHG排出報告規則の廃止を提案
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2025年9月12日、米国環境保護庁(EPA)は、大規模温室効果ガス(GHG)排出者にGHGの排出量の報告を義務づけているGHG報告プログラム(GHGRP: Greenhouse Gas Reporting Program)の廃止を提案しようとしていることを発表した。廃止の理由として、GHGRPは、規制対象者に重い負担を課している、今後の規制に直接関連していない、人の健康と環境の改善に実質的な影響を与えないこと等をEPAは挙げている。
本提案が最終決定されれば、大半の大規模施設、全ての燃料・工業ガス供給業者、およびCO2注入施設の報告義務が免除され、24億ドル(約3528億円、$1=\147で換算)の規制遵守費用が削減されるとEPAは述べている。
ただし、廃棄物排出賦課金(WEC)の対象となる10の石油・天然ガス部門のうち9つの部門からの報告義務はCAAの§136(g)の改正で、2034暦年以降まですでに延期されている。本提案が最終化されると2024年のGHG排出報告は不要となる。2025年11月3日まで、本提案について意見が求められている。
提案の概要
- EPAはGHGRPを審査した結果、廃棄物排出賦課金(WEC:Waste Emissions Charge)の対象となる石油・天然ガス排出源カテゴリー以外の部門について、GHG排出情報を収集する法的要件は存在しないと判断した。
- 2025年9月12日、EPAはGHG報告プログラム(GHGRP)の46の排出源カテゴリーの8000を超える施設、供給業者、地下注入サイト等について、プログラム義務を恒久的に廃止する。
- Subpart W「石油・天然ガス部門」の改正案は以下の二部で構成されている。
第一に、天然ガス流通セグメントの施設に対するプログラム義務を恒久的に廃止。本提案により、2024年度報告年以降、報告義務を免除される。
第二に、Subpart Wの残り9セグメントについては、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」に基づき改正され、2034報告年度までプログラム報告要件を停止。
Subpart Wの対象セグメントは、米国規則集40CFR Part 98、 Subpart W、§98.230「対象排出源の定義」に下記のように規定されている。
(1) 海洋石油・天然ガス生産、(2) 陸上石油・天然ガス生産
(3) 陸上天然ガス処理、(4) 陸上天然ガス輸送圧縮
(5) 地下天然ガス貯蔵
(6) 液化天然ガス(LNG)貯蔵
(7) LNG輸出入設備
(8) 天然ガス流通
(9) 陸上石油・天然ガス集約・増圧事業
(10) 陸上天然ガス輸送パイプライン事業 - 提案通り最終規則化された場合、2025暦年のデータの報告を提出する必要がある産業セグメントは存在しなくなる。ただしEPAは、2026年3月31日の報告期限を2026年6月10日まで延期することを提案している。この延期が2026年3月31日以前に最終決定されれば、EPAは2025年度報告の期限前に最終規則を発行する時間を確保できる。
過去の経緯
- 2009年10月30日、GHG報告プログラムを設立。2008会計年度統合歳出法により、CAAの§114に規定された様々な産業部門にわたる大規模排出源および供給業者からのGHGデータの報告を義務付けた。
- 2022年、CAAの§136に基づき、EPAは2024年暦年排出データから、天然ガス流通産業セグメントを除くSubpart Wで規定される石油・天然ガスシステム部門全セグメントの施設に対し、WEC(廃棄物排出課金)の適用とデータ収集を義務付けた。
- 2025年3月14日、トランプ大統領は議会審査法に基づく共同否決決議に署名し、2024年11月のWEC最終規則を廃止した。下記関連記事参照。
- 2025年7月4日、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法」が成立し、CAAの§136(g)がWECの賦課・徴収対象期間を2034年暦年以降の排出量報告から開始するよう改正された。
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