国際、その他の国・地域の環境法規制情報

知らなかったでは済まされない…環境コンプライアンス違反事例から学ぶ

企業の環境コンプライアンスに対する社会の視線は、世界各地で年々厳しさを増しています。

本稿ではこれまでに「海外環境法規制モニタリング」で取り上げた各環境規制に対する違反事例を紹介します。「これくらいは大丈夫だろう」という油断や、法改正情報のキャッチアップの遅れが、時に大きな経営リスクに繋がるケースも少なくありません。貴社のリスク管理体制を再点検するきっかけとなりましたら幸いです。

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英国で包装規制などの環境法違反で民事制裁が相次ぐ

英国で2024年8月、環境関連の法令違反により、企業に相次いで民事制裁が科された。チェコのビール会社Budweiser Budvarの英子会社、英ペット製品販売会社Rosewood Pet Products、英防犯アラーム販売会社Kabaの3社が「2007年生産者責任義務(容器包装廃棄物)規則(The Producer Responsibility Obligations (Packaging Waste) Regulations 2007)」で定められる生産者登録やリサイクル義務を怠ったほか、英日用品大手Reckitt Benckiserがエアゾール製品工場の排水漏れを引き起こし、それぞれ約450万~7700万円の制裁金を支払うこととなった。

米国EPA、大気浄化法に違反している金属破砕・リサイクル業者に行政命令

2024年11月7日、米国環境保護庁(EPA)は、メリーランド州バルチモアの金属破砕・リサイクル業者Sims ARG Inc.に対し行政命令を発行したことを発表した。行政命令によると、Sims ARG Inc.は連邦大気浄化法(CAA)とメリーランド州の大気許可プログラムにより求められている許可を取得していなかった。行政命令は、Sims ARG Inc.にたいし、命令発効の60日以内に許可申請を提出するように求めている。テストデータによると、金属破砕作業は、1時間あたり最大200ポンドのVOCが排出されることが分かっており、長期間、特に郊外の恵まれないコミュニティの大気を汚染してきたと問題にされている。

チリ、汚水処理不備により、大手製紙企業に約7億5000万円の罰金を科す可能性あり

チリの環境監査局が、大手製紙企業のCMPC社を汚水処理不備により起訴した件が、2025年5月27日に公表された。「2つのパルプ製造ライン」、「固形産業廃棄物置き場」、「ビオビオ川への放流排水前の汚水処理施設及び緊急時に使用する32,000立方メートルの排水を保留するプールを有する敷地面積約120ヘクタールのパルプ工場」が、起訴の対象となった。CMPC社のビオビオ州のパルプ工場では、2022年11月の年次メンテナンスのための工場休止時に、有機物質の腐敗による悪臭の訴えが2件あり、これに対して住民が訴訟を起こし、2024年8月に最高裁判所が環境監査局に対応を命じていた。このため環境監査局が立ち入り検査や情報の検証を行った結果、2022年11月の工場のメンテナンス作業中に、工場廃水が排水保留プールに15日間放置されていたことが確認された。2023年及び2024年にも同様に排水が放置されていたが、同社が取得している環境許可では、排水保留プールは汚水処理施設で異常が起こった際にのみ使用することになっており、それ以外に使用すると容量を超えて悪臭やガスの発生リスクが高まる。また、排水保留プールでは、消臭剤(化学品)が使用されていたが、サプライヤーの推奨や内部手続きに基づく工場休止時に排出される汚水を使った事前試験が行われておらず、悪臭の発生が確認された。

ブラジル、危険物輸送検査を実施し、127万レアル(約3360万円)の罰金を科す

2024 年 10 月 11 日、ブラジル環境及び再生可能天然資源院(IBAMA:Instituto Brasileiro do Meio Ambiente e dos Recursos Naturais Renováveis)が、9月末から10月初めにかけて実施した州間道路における危険部輸送検査の結果について、報じられた。同検査は、国家年次環境保護計画において、26州と連邦区の間を結ぶ高速道路において行われる。100件を超える検査が行われ、違反に対し合計で約3360万円の罰金となった。IBAMAは、連邦道路警察の支援を得て、州間の道路で輸送された危険物の検査を行った。100件を超える検査が行われ、車両37台に違反があり計127万レアル(約3360万円)の罰金となり、17台が押収、24台が拘留された。

コロンビア、ボゴタの環境局が廃棄物管理許可不備のため、民間の建設工事を閉鎖した

2025年3月18日、ボゴタの首都圏環境局(SDA:Secretaría Distrital de Ambiente)は、建設廃棄物規則を遵守していなかったとして、民間の建設工事を閉鎖した。建設工事がSDAに登録されていなかったためで、工事を行う事業者は、工事を実施する少なくとも30日前までに、環境当局に登録し、建設及び解体の作業において廃棄物を排出する事業者に割り当てられるID番号を取得していなければならない。今回の工事は、SDAに登録がされず、建設及び解体の廃棄物(RCD:residuos de construcción y demolición)の排出者に割り当てられるID番号が取得されていなかった。また建設業の環境管理ガイドラインに関する2013年決議1138号(Resolución 1138 de 2013)及びRCDの包括的管理例とガイドラインに関する2023年政令507号(Decreto 507 de 2023)が遵守されていなかった。

メキシコ、廃棄物保管、亜鉛メッキ、塗料製造、自動車修理の事業者に一時閉鎖を命令

メキシコ環境監査局が、有害廃棄物の保管業者、亜鉛メッキ業者、塗料製造業者、自動車修理場に立ち入り検査を行い、環境規則の遵守不備により、一時閉鎖措置を科した件が、同局のサイトで公表された。主に有害廃棄物の管理不備によるものとなっている。以下、事業者の違反(抜粋)。

  • 塗料製造業者
    メキシコ州のAcuario社が、環境アセスメントによる許可を取得できていないまま操業を開始し、4万リットルのトルエンや、4万リットルのアセトン、3万リットルのキシレン、5万4千リットルの圧縮ガスが保管されていたため、事業所の一部の一時閉鎖措置を科す。
  • 自動車修理場
    チアパス州の3つの自動車修理場に対し、使用済潤滑油やガソリンがしみ込んだフィルターなどの固形廃棄物、有害物質が入っていた使用済プラスチック容器などの管理不備、有害廃棄物の未分類・未梱包・未表示、使用済鉛蓄電池の管理不備などにより、一時閉鎖措置を課す。

韓国、BPR法令を違反した570種製品に行政処分を実施

韓国環境部は2025年2月5日、韓国のBPR法令である「生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律」で定める安全基準と表示基準を違反した約570種製品に対し、製造及び輸入の禁止命令と回収命令を実施したと発表した。環境部は、570種製品のうち、市販前の申告義務を違反した製品が413種と一番多いと説明し、特に申告義務を違反した事業者に対しては、行政処分を実施した後も、その営業活動を周期的に監視する予定であると述べた。

ベトナム、化学品総局による2024年の化学物質規制検査の結果を公表

ベトナム商工省・化学品総局は、2024年12月17日、2024年に実施した検査活動の総括を公表した。2024年の検査総数および違反件数は発表されていないが、化学品総局の発表によると、違反件数は増加傾向にあるという。違反内容として最も割合が高いものは、「安全講習に関する違反(定期講習を行っていない、講習の内容が網羅的ではない、講師が基準を満たしていない等)が22%で、もっとも高い割合を占めている。その次は、「年次報告」および「化学品事故予防対応計画/措置」に関する違反で、それぞれ20%を占めている。また、化学品の安全データシート(SDS)に関する違反も12%を占めている。これらの違反に対して、罰金総額は23億ベトナムドン(約9万USD)となった。この総額は2023年と比べて82%の増加であるという。また、化学品総局は、罰金による金銭的な処分に加えて、条件付き化学品取引資格証明書の取り消し(2社)、および、制限化学品取引許可書の取り消し(1社)を行った。化学品総局の分析によると、違反件数の増加には様々な要因があるが、その中でも重要な点として「化学品安全に関する企業の認識が十分ではない」ことが挙げられている。

タイ、汚染のかどで廃棄物処理業者に対して17億バーツの賠償金支払い命令の判決

タイ天然資源環境省(MONRE)・公害管理局(PCD)は、2024年9月3日、環境汚染を引き起こした廃棄物処理業者のWIN PROCESS CO., LTD.(以下、W社)に対して、17億バーツを超える賠償金の判決が下ったことを発表した。W社は判決から1ヶ月以内に控訴する権利があるが、判決に対する控訴状が提出されず、本件が決着すれば、PCDが関連機関と調整して執行手続きを行い、裁判所の判決に従い賠償金を使って環境の復旧を進めることになる。

中国生態環境部、VOC含有排ガスの違法な排出などを含む大気汚染関係の違法行為摘発事例を紹介

中国生態環境部は、2024年11月24日、同部のホームページ上で大気汚染関連の違法行為摘発事例を紹介した。生態環境部は、重点地域の大気質改善を図るため各地域に対する監督支援業務を実施し、現地の大気汚染防止業務を監督している。今回、生態環境部が公開したのは、上記監督支援業務で判明した5件の事例である。同事例には、バイパスを利用した排ガスの不法排出、排ガス検査装置の不正改造、大気汚染防止施設の不正運用、建設プロジェクトの環境保護検収における不正報告、虚偽の自己モニタリング報告提出などが含まれる。上海市の某企業による大気汚染防止施設の不正運用事例では、RTO処理施設が正常に使用されておらず、一部のVOC含有排ガスが直接排出されていたため、同社の違法行為に対して10万元(約200万円)の罰金が科された。

インド、メルセデス・ベンツ社の工場で廃水・排ガス等の違反事項が多数摘発

インド・マハラシュトラ州公害管理委員会(MPCB)は2024年9月19日、同州プネ市で稼働している大手自動車メーカーであるメルセデス・ベンツ社の工場に対して、特に廃水や排ガス規制への違反に関する通達を公布した。2024年8月23日および9月4日にMPCBによる立ち入り検査を実施し、同工場敷地内で複数の違反事項が摘発された。本通達では、同社に対し15日以内に不遵守の理由を説明するよう求めた。本通達では計9件の違反事項が指摘されており、以下一部抜粋して示す。

  • 工場内の廃水処理施設の遠心分離機を稼働していない
  • 逆浸透膜浄水器に備え付けたpH値、溶解固形成分を計測するメーターを調整していない
  • 廃水処理施設および下水処理施設の全体的な稼働状況・保守点検状況が基準を満たしているとは言い難い
  • 揮発性有機化合物(VOC)の排出が計測されているものの、その適切な処理がなされていない

フランス競争当局、中国ファッションブランド「シーイン」の不当な価格表示や環境主張に罰金

フランス競争・消費・不正抑止総局(DGCCRF)は2025年7月3日、中国のファストファッションブランド「シーイン(Shein)」のフランスにおける事業運営を担当しているInfinite Style E-commerce LTD(ISEL)に対し、価格表示や環境主張において消費者を欺く行為があったとして4000万ユーロ(1ユーロ=170円換算で68億円)の罰金を科すことを発表した。DGCCRFは2022年10月1日から2023年8月31日にかけて、シーインの公式通販サイトfr.shein.comを対象に調査を行った。その結果、数千もの商品の「安売り」や「値下げ」の表示に実体が伴っておらず、フランスの法規に違反していることが明らかになった。

その他、欧州連合(EU)では「刑法を通じた環境保護に関する指令2008/99/EC(いわゆる環境犯罪指令)」を強化・代替する新指令(EU) 2024/1203が2024年4月30日付の官報で公布されました。環境犯罪の定義と制裁についてEUレベルの最低限のルールを定め、環境犯罪の調査・追及を改善するもので、対象犯罪の拡大や厳罰化、非意図的な場合でも重大な過失がある場合は罪に問えるとする点などが特徴です。対象となる犯罪は20種類に増え、化学物質関連法(REACH規則(EC) No 1907/2006など)の重大違反や、水銀規則(EU) 2017/852の重大違反、水資源の不法枯渇、木材の密売、船舶の汚染部品の違法リサイクルなどが含まれます。一部については、意図的ではなく、重大な過失による場合でも犯罪となります。

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