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EU理事会、企業の持続可能性報告(CSRD)とデューデリジェンス(CSDDD)の簡素化法案の修正案

弊社基幹サービス「海外環境法規制モニタリング」の配信情報より「EU理事会、企業の持続可能性報告およびデューデリジェンスの簡素化法案の修正案まとめる」について紹介します。

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EU理事会(各加盟国の閣僚で構成)は2025年6月23日、欧州委員会が2月に提出した「企業持続可能性報告指令(EU) 2022/2464(略称CSRD)と企業持続可能性デューデリジェンス指令(EU) 2024/1760(略称CSDDD)を簡素化する法案」に対する修正案をまとめた。修正案は、CSRDの対象を純売上高4億5000万ユーロ以上の企業とすることや、CSDDDについては(1) 対象企業の閾値を従業員数5000人、純売上高15億ユーロに引き上げる、(2) デューデリジェンス(DD)要件の対象をtier 1の企業に限定しリスクベース方式を採る、(3) 気候変動緩和のための移行計画の策定義務を2年延期する、(4) 国内法化期限を1年延ばす、ことなどを要求。今後、EUの共同立法機関のもう片方である欧州議会が同様に修正案をまとめると、両機関の代表による妥協案作りの交渉が始まる見通し。

EU理事会の修正案のポイント

欧州委員会の提案(原案)およびEU理事会の修正案の内容は下記のとおりである。

  • CSRD: 対象企業
    • 原案:従業員数の閾値(thresholds)を1000人に引き上げ、指令の対象企業の約80%を対象から外す。
    • 修正案:企業の報告負担をさらに軽減するために、新たな閾値「純売上高4億5000万ユーロ以上」を追加する。また、企業の持続可能性に関する情報の十分な利用可能性を確保するため、対象範囲の拡大可能性に関する条項も導入する。
  • CSDDD:対象企業
    • 原案:ー
    • 修正案: 対象の閾値を従業員数5000人、純売上高15億ユーロに引き上げる。これらの大企業はバリューチェーンにおいて最も大きな影響力を持ち、DDプロセスのコストや負担を吸収する力も十分あると考える。
  • CSDDD:悪影響の特定と評価
    • 原案: 原則として、DD要件をtier 1(自社、子会社、および直接のビジネスパートナー)に限定している。
    • 修正案:欧州委員会の提案を堅持するが、企業ベース(entity-based)からリスクベースのアプローチへと焦点を変え、潜在的な悪影響が発生する可能性の高い分野に焦点を当てる。企業は包括的なマッピングをする必要はなくなり、より一般的なスコーピングを合理的に入手可能な情報に基づき行えばよくなるので、大幅な負担軽減となる。
      直接のビジネスパートナー以外にも悪影響があることを示唆する情報がある場合には、その特定・評価の義務を拡大する。さらに、これらの義務をtier 1を超えて拡大する可能性に関する条項も追加する。
  • CSDDD:気候変動対策
    • 原案:気候変動緩和のための移行計画に関する規定を、CSRDと整合させることで簡素化する。
    • 修正案:企業の義務を同移行計画の策定のみに限定し、同計画に実施措置(計画段階および実施済み)を明確に含ませる。また、企業の負担をさらに軽減し、企業が十分な準備期間を確保できるよう、同移行計画の策定義務を2年延期する
  • CSDDD国内法化期限
    • 原案:ー
    • 修正案: 1年延ばして2028年7月26日までとする。

欧州議会では、本法案の所轄委員会として法務委員会(JURI)が指定され、担当議員が2025年6月6日に修正素案を示し、同委員会で審議中(次のJURI会合は6月24日の予定)。今後、本会議で欧州議会としての修正案がまとまった段階で、EU理事会との代表交渉に入る見込み。なお、EUでは2025年4月16日に、CSRDおよびCSDDDの適用開始日を延期する指令(EU) 2025/794が公布されている。

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