EU、木材規則とその動向(2015年6月更新)

本ページに記載する内容は、弊社情報サービス「海外環境法規制トレンドレポート」の第14号(2015年6月版)に収録する記事をサンプルとしてご提供するものです。

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法律/政策の名称
  1. EU木材規則
  2. EU木材規則に関する実施規則
現地語名称
  1. REGULATION (EU) No 995/2010 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 20 October 2010 laying down the obligations of operators who place timber and timber products on the market(EUTR)
    http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32010R0995&rid=1
  2. COMMISSION IMPLEMENTING REGULATION (EU) No 607/2012 of 6 July 2012 on the detailed rules concerning the due diligence system and the frequency and nature of the checks on monitoring organisations as provided for in Regulation (EU) No 995/2010 of the European Parliament and of the Council laying down the obligations of operators who place timber and timber products on the market
    http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32012R0607&rid=1
公布/施行日等
  1. 2010年11月12日、公布。
    2010年12月2日、一部条項のみ施行。
    2013年3月3日、全面的に発効。
  2. 2012年7月7日、公布。
    2012年7月27日、発効。

1. バックグラウンド情報

EU木材規則の概要

EU木材規則(EUTR)で定義されている“違法伐採”(第2条(g))とは、原産国で適用される法令に違反して行われる森林伐採を指す。EUTRの目的は、EU国内の事業者(輸入者)およびトレーダー*の活動を規制することにより、原産国での違法伐採や違法伐採木材の取引などの問題に対処することである。

*事業者(輸入者):木材および木材製品をEUに最初に上市する企業または個人
トレーダー:すでにEUに上市された木材および木材製品を売買する企業または個人

EUTRの対象は、EU圏内で生産および同圏内に輸入された違法伐採木材および木材製品である。本規則の附表に記載されている対象製品は以下のとおりである。

対象製品(合同関税品目分類表のCNコード)

  • 薪、木質チップまたは木材粒子、おが屑および廃木材(4401)
  • 材木(4403)
  • 鉄道に利用される枕木(4406)
  • 厚さ6mmを超えるひき立て材(4407)
  • 合板等に用いられるベニヤ板(4408)
  • 連続的に加工された木材(4409)
  • パーティクルボード、配向性ストランドボード、およびそれらの類似製品(4410)
  • ファイバーボード(4411)
  • 合板など(4412)
  • 圧縮木材(4413 00 00)
  • 絵画や写真、鏡などの木枠(4414 00)
  • 荷箱、木箱など(4415)
    ※他の製品を支持、保護、運搬するための包装材は除く
  • 樽や桶など(4416 00 00)
  • フロアリングパネルや屋根板などの建材(4418)
  • 合同関税品目分類表の47章および48章に該当するパルプおよび紙類(竹由来の品と再生品は除く)
  • CNコード9403 30、9403 40、 9403 50 00、 9403 60、9403 90 30に該当する木製家具
  • プレハブ(9406 00 20)

EUTRは違法伐採木材をEUに上市することに対して罰則を設けるよう加盟国に義務づけている(第19条)。またEUTRは、事業者に違法伐採木材が彼らのサプライチェーンに入るリスクを最小限にするために“デュー・デリジェンス(Due Diligence)”を行うことを要求している(第6条)。さらに、サプライチェーンの透明性を促進するために、EUのトレーダーが彼らのサプライヤーや顧客を記録する義務も設けられている(第5条)。

実施規則の概要

木材規則に関する実施規則は、デュー・デリジェンスおよび監督当局への検査に関する詳細を規定したものである。本実施規則に基づき事業者は、輸入業者ごとの木材または木材製品の各種類に対し、実施規則発効から12カ月以内にデュー・デリジェンスを実施しなければならない(第2条第1項)。開示しなければならない情報は以下のとおりである(第3条)。

  • 製品の商標および種類、樹種の一般名、一般名が曖昧な場合は正式な学名
  • 木材の伐採国、またその国内でも違法伐採のリスクが地域で異なる場合はその地域レベルの情報、またその国内または地域内でも違法伐採のリスクが伐採区画で異なる場合はその伐採区画の情報
  • 数量(体積、重量または単位数)
  • 事業者に納品した業者の名称および住所
  • 木材及び木材製品が納入された先の取引業者の名称及び住所
  • その木材及び木材製品が適用法を遵守していることを示す文書その他の情報

2. 最近の主な動向

違反事例――EU木材規則に基づく最初の押収事例

ドイツ食糧農業省は、2013年11月、コンゴ民主共和国の企業Bakri Bois Corporation(BBC)が販売し、ドイツに輸入されたウェンジ*材の違法性を確認し、EUTRに基づき押収した。このヴェンジ材は3回に分けてドイツ企業に引き渡された。そのうち最初の2回についてはドイツ企業Holz-Schnettler Soest Import-Export GmbH (HSS) とHolz-DreierによってEUに上市されたが、本省が押収措置を講じた。
ドイツ食糧農業省の取り締まりのきっかけを作ったのは、国際NGOのGreenpeaceのドイツ支部からの通報であった。Greenpeaceは本件において、EUTR第4条(事業者の義務)に違反している疑いがあるため、告発状を本省に提出するとともに、ドイツ国内法の木材流通-保安法(HolzSiG:Holzhandels-Sicherungs-Gesetz、2011年7月11日発効、2013年5月改正)に基づく措置を講ずるよう要求した。
BBCは、原産地のコンゴ民主共和国Equateur州で政府と結んだ特別伐採契約に基づく操業を行ったと主張したが、同国政府公認の森林保全NGOのResource Extraction Monitoringによって、本伐採契約は合法的なものではないと明らかにされた。さらに、BBCは木材商標の虚偽、地元住民との契約違反、環境汚染、特別許可なしにヴェンジ材伐採などの指摘も受けていた。そこでGreenpeaceのドイツ支部は、2013年6月、NGOのGlobal WitnessやRéseau Ressources Naturellesなどとともに現地に赴き調査を実施し、上述の指摘が正しいことを確認した。コンゴ民主共和国の環境・自然保護・観光省(MECNT)が発行した不正文書の事実も、今後検討しなければならない課題の一つとなった。

3回目はスイスのBois d’Afrique Mondiale S.A.(BAM)社名義の荷物がベルギーのアントワープからチェコに所在するドイツ企業Danzerのグループ会社Danzer Bohemi Dýhárnaに直接搬送されたので、チェコ当局の監督のもとに置かれた。Danzer Bohemia Dýhárnaによると、彼らは第三者のために木材を加工しているだけであり、購入や輸入といった類ではなく、EUTRが規定する最初に上市する事業者ではないと主張した。チェコ監督機関によると、彼らは事業者やトレーダーではなく、ただのサービス・プロバイダーであり、この木材は実質ドイツ企業Furnierhandel Winsen GmbHが所有しているという。2014年2月の段階では、この木材は押収されていなかった。チェコ農業省や監督機関は、事業者(輸入者)が他国籍の企業であるため、押収の進め方が明瞭でないと説明した。しかし、Greenpeaceはチェコ監督官庁(Competent Authority)がEUTRに基づき、その国土内に違法木材を上市または流通させないことを確実にしなければならないと主張した。また、木材の所有者の国籍はEUTRの義務に何の関係もなく、もし関係する場合、違法木材のディーラーは、彼らの拠点ではないEU加盟国の市場に違法木材を単に上市することで押収を免れることができると指摘した。

*ウェンジは学名をムラサキタガヤサンといい、絶滅が危惧されている熱帯樹種である。

FLEGT‐VPAの拡大――ライセンス材の輸出は未だゼロ

  • 2003年:FLEGT(森林法施行、ガバナンス、貿易)行動計画を採択
  • 2005年:FLEGT規則を採択

FLEGT(Forest Law Enforcement, Government and Trade)‐VPA(Voluntary Partnership Agreement、自主的二国間協定)は、EUが違法伐採問題を抱える木材原産国との間で二国間協定を締結し、取引される木材から違法木材の排除を輸出国側に要求する一方で、そのために必要な技術等をEUが支援する仕組みである。この協定の下では合法に生産されたものであることを証明された木材および木材製品以外はEUへ輸出することができなくなる。EU FLEGT Facility(http://www.euflegt.efi.int/home)によると、2015年6月現在、EUとの二国間協定を締結した木材原産国は、ガーナ(2010年3月19日)、カメルーン(2011年12月1日)、中央アフリカ共和国(2012年7月1日)、コンゴ共和国(2013年2月19日)、リベリア(2013年12月1日)、インドネシア(2014年4月、2014年5月1日より発効)であるが、協定を発効したのはインドネシアのみである。インドネシアの木材合法性証明システム(TLAS:Timber Legality Assurance System)は、2002年4月に英国との間で締結された違法伐採対策に関する覚書に基づき策定されたインドネシア木材合法性認証(SVLK:Standard Verifikasi Legalitas Kayu)である。しかし、SVLKはFLEGTに基づく合法性を証明するシステムとしての要件を満たしておらず、2012年に実証実験としてFLEGTライセンス材(仮)がEU市場へ輸出されたが、正式なライセンス材の輸出にはまだ至っていない。

一方、EUはFLEGT-VPAを拡大するために、他国との交渉を継続的に続けている。EU FLEGT Facilityによると、交渉中の木材原産国はマレーシア(2007年1月開始)、ガボン(2010年9月開始)、コンゴ民主共和国(2010年10月開始)、ベトナム(2010年11月開始)、ラオス(2012年4月開始)、ガイアナ(2012年12月開始)、ホンジュラス(2013年1月開始)、コートジボワール(2013年2月開始)、タイ(2013年9月開始)であるという。

EU加盟国の木材規則実施状況(更新版)を公表

欧州委員会は、2015年6月3日、EU28ヵ国の木材規則の実施状況を一般向けに分かりやすく図示した表を更新し、公開した(前回は2014年7月30日に公開)。木材規則は、その執行のためにEU加盟国に3つの主な義務(規則の所轄機関の設置、違反に対する罰則の制定、検査体制の確立)を課している。本図表は、この各項目についてEU28ヵ国の実施状況を3段階(実施済、実施途中、未着手)で評価している。欧州委員会はEU法を順守しない加盟国を欧州裁判所に提訴する権限を有しているため、2014年7月の段階で木材規則を順守していない国々に対し、その執行を十分厳格に行わなければ措置を講ずると警告していた。そして、2015年6月の調査結果では、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スペインの5ヵ国を除く23ヵ国の加盟国が3つの項目すべてにおいて実施済となっている。また、この5ヵ国においても、未着手の項目はなく、実施途中の項目を残すのみとなった。

EU28ヵ国の木材規則の実施状況(2015年6月更新版)http://ec.europa.eu/environment/forests/pdf/EUTR%20implementation%20scoreboard.pdf(同図表には、加盟国が制定した規則の規定違反に適用される罰則が効果的であるか、相応のものであるか、違反行為を思いとどまらせるものであるか、という評価は含まれていない。)

3. 今後の展開と展望

EU木材規則の公開協議を開始――改正案の提出も視野に

EUTRの規定により、EU加盟国は2013年から2年ごとに欧州委員会に報告書を提出しなければならない。また欧州委員会は、2015年12月3日までにEUTRに関する報告書を欧州議会および欧州理事会へ提出しなければならないため、2015年4月15日、EUTRの機能性・有効性をレビューするための公開協議を開始した。2015年7月3日までを協議期間とし、ステークホルダーは欧州委員会が作成したアンケートに任意で回答し提出する。欧州委員会は必要であると判断する場合、適切な法案を本報告書に付随して提出することができるため、上述の違反事例で浮上した多国間を巻き込む事象や木材原産国での偽造文書および違法契約などの違法伐採を助長する行動への対処などについて協議し、改正案を提出する可能性がある。

EU木材規則の公開協議に関する詳細
http://ec.europa.eu/environment/consultations/eutr_en.htm

FLEGT‐VPAの欠点――木材原産国の認証制度の必要性高まる

FLEGTは自主的な協定に基づくため、協定を締結した国にしか適用されず、それ以外の国々から輸入される違法伐採木材についてEU当局は関与できない。そのため、違法伐採木材および木材製品を完全に市場から排除するために、より厳格な規制の導入が必要である。FLEGTに参加する各国は、それぞれTLASを開発し、実施することで、違法伐採木材および木材製品がEUに輸出されるのを防ぐことができる。しかし、木材原産国の現状は、インドネシアのSVLKがFLEGTライセンス材を出荷する一歩手前まで来ているが、依然として改善が必要であり、出荷実績に結び付いていない。SVLKがFLEGTに基づき本格的に施行され、ライセンス材がEUに輸出されるようになれば、本認証システムがEUに木材を輸出する国の木材合法性認証システムの参考となり、違法伐採木材および木材製品の蔓延を防ぐ抑止力となる。また、今後はカンボジア、ミャンマー、フィリピンなどへの二国間協定の締結交渉が行われる見通しである。

4. EnviX見解

原産国での伐採木材に関する偽造書類の作成は、EU木材規則で取り締まることは難しい。また、EUに最初に上市する事業者においても、本物か偽物かを判断するには知識または第三者による証明など時間と費用を要する。そのため、EUは木材の原産国とFLEGT-VPAを結び、原産国が確かな方法で違法伐採を取り締まることで、輸出される前に違法伐採木材および木材製品を排除しようと交渉を続けている。しかし、目立った進展はインドネシアのSVLKのみで、その他の国々もFLEGT-VPAを締結してはいるものの、FLEGTに基づく認証システムを構築していないため、本協定の発効に時間を要している。また、協定を発効したインドネシアでさえ、FLEGTに基づくSVLKの運営には至っておらず、まだライセンス材を輸出できる体制は整っていない。

したがって、今後EUは木材原産国とのFLEGT-VPA交渉をさらに進め、原産国の木材合法性認証システムの構築を手助けする技術および知識の提供を積極的に行っていくと考えられる。また欧州委員会は、多国間に渡って起きた複雑な事象に対処する措置、および協力関係などを含む改善点の審議を、現在行われている公開協議後の報告書作成と並行して行うと考えられる。そして、2015年12月に改正案も報告書と一緒に欧州議会と理事会に提出される可能性がある。

EUTRは民間部門の木材調達にまで範囲を広げた違法伐採規則であり、日本企業のサプライチェーンの透明性、および木材調達の合法性を確認するための指針として参考になるものである。関連する日本企業は、今後もEUTRの動向を注視していくべきである。

以上、「海外環境法規制トレンドレポート」第14号(2015年6月版)に収録。

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