製造業界の機会・リスク発見のため
各国で強化・複雑化する「環境規制動向」を把握する

米国の連邦省エネ・プログラム

2021年11月19日、連邦省エネ・プログラムの通称「プロセスルール」が改正され、トランプ政権時代の呪縛が解かれた。その後、省エネ基準および評価手順の改正などの活動が活発に行われるようになった。従来は情報提供要請等、活動の初期段階が多かったが、この半年は、具体的な改正案や、最終規則の発行が増えている。ウェビナーではエネルギー省（DOE）が発行した官報のリストを紹介・直近1年間の動向について概説する。

カナダの化学物質規制

当初の予定では2020年度をもってカナダ化学物質管理計画（CMP）の活動を終了し、さらに『1999年カナダ環境保護法（CEPA1999）』を改正する予定であった。カナダにしては珍しくその計画は遅れ、CMPの活動は現在も継続され、2022年2月9日にCEPA1999改正に関する法案が議会にようやく上程された。改正案に盛り込まれた様々なテーマに関して利害関係者や専門家との協議が行われようとしている。その他、『2012年特定有害物質禁止規則』の大幅な改正、カナダ版GHSと言われる『危険有害性製品法』改正検討、プラスチック関連の規則、規則案が発行されている。その他多くの活動がカナダ環境・気候変動省とカナダ保健省の『2022-2024規制計画』に盛り込まれている。

米国バイデン政権下における環境政策～超党派インフラ法に焦点を当てて～
2021年11月15日、米国で超党派インフラ法と呼ばれる『インフラ投資と雇用に関する法』が制定された。本法は、環境正義の推進を含む環境施策に注力するバイデン政権の方針と一致するもので、本法に基づいて様々な部門への資金提供が発表されている。本講演では、超党派インフラ法に基づく環境施策の動向と、今後の展開予測について解説する。

オーストラリア・ニュージーランドにおける化学品管理にかかわる法規制動向
オーストラリア・ニュージーランドでは、それぞれ2021年より国連「化学品の分類と表示に関する世界調和システム」の第7版への移行期間が開始している。特に、オーストラリアでは、今後の規制の方向性・スピード感にかかわる化学品管理の中長期的な目標・方針が打ち出されており、その進捗状況が注目される。
本講演では、オーストラリア・ニュージーランドにおける化学品管理の最新動向を整理・解説する。

オーストラリア・ニュージーランドにおける製品の省エネルギーを取り巻く規制の現状と改正状況
オーストラリア・ニュージーランドでは、各個の製品省エネルギー規制のほか、地域を横断した共同規制が敷かれている。本講演では、これらの規制動向に関する現状の整理と、改正に関する最新動向について解説する。

近年、プラスチックによる海洋汚染や環境に対する影響が問題視され、国際的な、また各国における取り組むが進められている。具体的には、使い捨てプラスチック製品、マイクロプラスチックを含有する化粧品に対する規制や生分解性プラスチックの促進によって、環境保護並びにプラスチック廃棄物の削減、リサイクルなど循環型経済の構築に向けた施策が取られている。
本講演では、国連やOECDによるグローバルな取組からラテンアメリカにおける規制動向、更にラテンアメリカが政策や法規制について影響を受けやすいスペインの取組について紹介する。

• グローバルなプラスチック規制の動向
  • 第5回国連環境総会再開セッション
  • OECD 「世界のプラスチックの展望：2060年に向けた政策シナリオ」
• ラテンアメリカにおけるプラスチック規制の動向
  • ブラジル、アルゼンチン、ペルー、チリ、コロンビア
• スペインの取組
  • 企業における使い捨てプラスチック製品に替わる代替品供給の取組
  • 容器・同廃棄物に関する法（案）の検討

米国では、長年にわたって州が製品含有有害化学物質規制の中心的な役割を果たしてきた。最近は、2016年に改正された連邦有害物質規制法（TSCA）のもとでも製品や成形品に対する規制が強化されているようだが、州レベルでの取組みは依然として活発で、州ごとに規制の内容が異なる「規制のパッチワーク」は今も健在である。そうしたなか、弊社が注目している州法をいくつか紹介する。

• メイン州 ペル／ポリフルオロアルキル物質（PFAS）規制法、2021年成立
  原則、2030年より、意図的に添加されたPFASを含むすべての製品の州内における販売・流通を禁止すると定めている。2023年1月には、製造者による当局への通知という別の重要な要件の施行が控えており、現在、通知要件を具体的に定める規則案の公表が待たれている。
• ワシントン州 製品含有化学物質規制法、2019年制定
  5年周期で優先化学物質を含む優先消費者向け製品の規制措置を決定するという規制のしくみを定める法律で、現在、そのしくみにのっとって電気電子機器など10種の優先消費者向け製品を規制するための規則が策定中である。この8月には暫定規則案が公表され、具体的な規制内容の全貌が見えてきた。
• カリフォルニア州 「より安全な消費者向け製品」規則
  包括的な製品含有化学物質規制プログラムである「より安全な消費者向け製品」規則も、最近は実施ペースが加速され、新たな規制対象（化学物質と製品の組み合わせ）の提案や決定が相次いでいる。
• カリフォルニア州 プロポジション65
  予見される規制対象物質への曝露に対して事前警告を義務付けるカリフォルニア州のプロポジション65は、製品含有規制ではないが、米国に製品を輸出する日本企業に大きく影響する法律である。同法をめぐっては、2021年、消費者向け製品に認められている「簡易警告」の使用を制限する規則の改正が提案された。この試みは、法定時間内での規則の改正がかなわず、この5月に仕切り直しとなったが、当局は、近い将来、新たな改正規則案を提案し、規則策定プロセスを再開させるとしている。

本講演では、これら4つの法規を中心として、米国の州レベルにおける製品含有化学物質規制の現状と動向を解説する。

インドでは直近1年間において、化学物質や廃電気電子機器、プラスチック包装材、機器の省エネ規制など製品系環境規制の動向が確認されている。

インドの化学産業の規模は大きく、化学品の輸出額は世界11位、輸入額も6位で、国内主要産業として位置づけられている。インドでは国内化学産業を保護するため、化学品の品質について規定した「品質管理令」を定めている。物質毎に定められた本管理令は、対応するインド規格を遵守し、証明として「スタンダード・マーク」の貼付が義務づけられている。現在、50を超える物質が指定されているが、COVID-19による経済活動の制限により、これらの適用が延期されているものもある。

また、インドでは2016年から拡大生産者責任（EPR）に基づく廃電気電子機器の管理を行っているが、今年5月に対象製品の拡大や生産者責任組織（PRO）の規定の廃止などを含む改正が提案されており、規制対象となる事業分野が増えるとともに、廃電気電子機器の回収・管理のキャパシティが懸念されている。

廃棄物の枠組みという観点では、インドでは、プラスチック廃棄物についても規則を定めており、昨年より複数の改正案が審議され、公布に至っている。その中でも、特に注目を浴びているのが、プラスチック包装材に対するEPR規定の追加である。硬質プラスチック包装材や単層/多層の軟質プラスチック包装材類、多層プラスチック包装材などの生産者や輸入者は、定められた回収目標（EPR目標）や最低リサイクル目標を達成しなければならない。EPR証書の取引によるオフセットも導入されており、自身の翌年度への繰り越しにも利用できる。

製品の省エネ分野においても、インドでは、2008年より省エネラベル表示制度「Standards & Labeling Programme」が実施されている。本制度では、省エネラベルの表示が義務化される製品に加え、ラベル貼付が任意とされる製品も指定されている。省エネ基準とラベル表示に関する規定はそれぞれ電力省とエネルギー効率局が管轄しており、これらの法規制に基づきラベルを取得・貼付しなければ、インド国内に上市することができない。COVID-19の影響で省エネ基準やラベルの有効期限が延長されてはいるが、今年に入ってから任意製品であるUHDテレビや冷凍庫、扇風機などの製品のラベル表示を義務化する法案が審議されている。

今回の世界ウェビナーでは、上記の製品系環境規制の最新動向を解説する。

中国では、化学物質規制の根拠となる重要文書である「新汚染物質管理行動計画」が2022年5月24日に、中国国務院により公布された。以前に生態環境部が作成した意見募集稿とは異なり、具体的な物質名などは示されておらず、全般的な方針を定めただけの文書になったように思われるが、今後の化学物質規制の根拠となるものであり、また、初回の「重点規制新興汚染物質リスト」は2022年中に発表される予定であるため、注目されている重要な政策である。

また、2022年7月20日、同部のホームページにて「第1次化学物質環境リスク優先評価計画についての提案募集に関する通知」が発表され、重点物質が募集された。

同計画では、2025年までに高懸念、高生産量（高使用量）化学物質の環境リスクに対するスクリーニングを実施して、「重点規制新汚染物質リスト」を動的に発表し、「重点規制新汚染物質」の禁止、制限、排出制限などの環境リスク管理措置を講じるという目標が示されている。また、有毒有害化学物質の環境リスク管理法規制度や管理の枠組みの段階的な整備を図り、新汚染物質に対する管理を強化していくという計画にも言及されている。さらに、長江流域などの一部地域や、石油化学や塗料などの業種などで、新汚染物質管理の試験プロジェクトを実施することや、条件が整った地方都市では、企業による新汚染物質発生・排出削減試験事業の実施を促すという計画も記されている。加えて、製品中の重点規制新汚染物質の含有量を規制していくための施策も示されている。

本講演では、上記の「新汚染物質管理行動計画」を中心として、中国における化学物質規制の動向を解説する。

まずシンガポールであるが、デクロランプラス、UV-328を含む5物質の輸入、販売、使用等を規制する法令が5月に公布された。本法令は、国際条約（ストックホルム条約、ロッテルダム条約）に先んじて当該物質の規制を決定したことで注目を集めた。さらに、化学兵器禁止条約の対象物質を環境保護管理法のもと規制する案が6月に公開されるなど、有害物質規制を強化する動きが目立つ。また、GHSの実施については国連GHS第7版の内容を盛り込むことも検討されている。本講演では、こうした化学物質規制に関する最新の動向を解説する。

その他、環境保護管理法のもとでの温室効果ガス規制やエネルギーマネジメントシステム、気候関連情報の開示など、シンガポールで新たに導入された規制についても取り上げる予定である。特に温室効果ガスを使用する製品については、2022年10月よりGWP制限値の順守と製品登録が要求される。また、引き続き注目される「資源持続可能性法」にもとづくe-wasteと包装材のEPR規制の現状についても紹介する予定である。

次にフィリピンであるが、今年の最も重要なトピックといえば、長らく議論されてきたプラスチック規制法の制定である。これはプラスチック容器包装のEPR制度を規定するもので、最終的に制定された法律は、大企業を対象として、EPRプログラムの策定、回収・オフセット義務やインセンティブに関する規定を盛り込んだものとなった。違反した企業については高額な罰金も課せられる予定である。具体的な対応方法については今後制定される実施規則にて規定されるが、本講演ではプラスチック規制法の全体像とそのポイントを紹介する。

また、フィリピンについては、化学品管理令の新規公布・ドラフトの公開といった化学物質規制の動きについてもあわせて報告する。

上述した規制以外にも、シンガポール、フィリピンの直近1年間の主要動向を可能な限り紹介する予定である。

ようやくコロナの影響が収まってきてタイの入国規制が緩和されたため、旅行者や日本からの出張者が増えてきた。街にも活気が戻り、仕事の面でもいろいろな引き合いが増えてきた今日この頃である。

タイ法人グリーンアンドブループラネットソリューションズでは、2021年からグローバルな再エネ証書市場に参入、製造業を中心に電力消費者向けに証書を利用した再エネ調達をサポートしている。電気を使わない業種はほぼないので、弊社が得意な化学物質管理以上に裾野が広い分野であり、多くの問い合わせにてんてこ舞いの一年間であった。おかげさまでタイ国内に限らず海外案件の実績もでき、今後ますます注力していきたい分野である。本講演では、国際的な再エネ証書スキームであるI-RECをめぐるタイ国内外の状況およびカーボンニュートラルに向けた弊社の新たな取り組みについて紹介したい。

タイ国内を見ると、一番インパクトがあった法改正動向として、工場の化学物質管理に関する安全対策を定める新たな工業省告示が公布されたことがあげられる。2021年7月5日に首都バンコクの玄関口であるスワンナプーム空港近くで発生した台湾系プラスチック工場（Ming Dih Chemical Co.,Ltd）の大規模な爆発事故を背景に、1年もたたずにスピード感をもって法整備まで持ち込んだ状況に鑑みて、当局としても相当な危機感をもって急ピッチで作業を進めたことがうかがえる。タイ語によるSDSならびラベル義務を課すなど、広範な工場に影響を与える法令であり、タイ国内に製造拠点を有する企業は要注意の法令である。

国外の製造者が注目する動向としては、有害物質リスト5.6の届出制度がある。本制度はインベントリー整備のために運用されている制度であり、化学メーカーを中心に大きな注目を集めている。実際の運用開始は2023年になるが、本講演では来年の運用に向けて、ハイライトをお伝えする。

その他、上述した規制以外にも、弊社が注目するいくつかの動向をピックアップして紹介したい。

EUでは、経済活動が環境的に持続可能であるか否かを判断する基準を定めるために、タクソノミー規則（(EU) 2020/852）が2020年6月にEU官報にて公表された。規則は、環境的に持続可能とする金融商品や社債に関して、金融商品などを提供する金融機関が主な対象であるが、非財務情報の開示義務を果たす非金融機関も対象となっている。

規則では先ず、以下のような6つの環境目標を掲げている。

1. 気候変動の緩和
2. 気候変動への適応
3. 水・海洋資源の持続可能な利用と保護
4. 循環型経済への移行
5. 汚染防止・管理
6. 生物多様性・生態系の保護と回復

経済活動が以下のような場合、活動は環境的に持続可能として認められる。

非金融機関において非財務情報を開示しなければならない企業では、環境的に持続可能である経済活動から得られた売上高、関連する資本的支出、運営費用の割合を開示することになっている。

本講演では、タクソノミー規則、同規則を補足する気候委任法（技術スクリーニング基準を定める）、開示法（開示テンプレートを定める）の規制概要について述べ、タクソノミーに関連する規制の全体像、また金融機関以外の企業が対応すべきことを示し、さらにEU企業の開示例などを紹介する。

本講演は、米国の「有害物質規制法（TSCA）」および／または欧州連合の「規則(EC) No 1907/2006（REACH規則）」に基づいて禁止または制限される化学物質の最新の動向を報告する。報告形式としては、TSCAおよびREACH規則の禁止または制限に関わる法的枠組みについて図を用いて解り易く解説し、当該枠組みに基づいて禁止または制限される具体的な化学物質を報告する。従って、当該枠組みについて理解されたい方は是非ともご参加いただきたい。

米国TSCAについて、化学物質の禁止または制限に関わる条文は、「第5条 製造及び加工の届出」および「第6条 化学物質及び混合物の優先度、リスク評価並びに規制」である。米国環境保護庁（EPA）は、第5条に基づいて化学物質の評価を実施した結果として、「健康または環境を損なう不当なリスクを示すまたは示すおそれがある」または「環境への大量の放出または人への相当量の曝露があるまたは可能性がある」と判定した場合、当該化学物質の製造、加工、商業的流通、使用または廃棄を禁止若しくは制限する重要新規利用規則を制定する。また、EPAは、第6条の(b)項（リスク評価）に基づいて、化学物質が「ある使用条件」において「健康または環境を損なう不当なリスク」を示す場合、禁止または制限などの措置を講じる。更に、EPAは、第6条の(h)項（難分解性、生体蓄積性及び毒性を有する化学物質）に基づいて、化学物質が「健康または環境を損なう不当なリスク」を示す場合、製造、輸入、加工および／または商業的流通を禁止する措置を講じる。

欧州連合のREACH規則について、化学物質の禁止または制限に関わる条文は、「第VIII篇　ある危険な物質、混合物及び成形品の製造、上市及び使用に関する制限」の第67条から第73条までである。欧州化学品庁（ECHA）または欧州連合の加盟国は、化学物質が「人の健康または環境に許容できないリスク」を示す場合、制限プロセスに従って、当該化学物質を「附属書XVII（制限）」に追加するために修正する提案書を提出した後、公開協議および統合意見書の作成、欧州委員会による附属書XVIIを修正する欧州委員会規則の制定により、当該化学物質、当該化学物質を含有する混合物および成形品の製造、上市および使用を制限する。

上記のTSCAおよびREACH規則における化学物質の禁止または制限の流れについて、図を用いて解説する。