米国、有害物質規制/ナノマテリアル規制動向(2015年6月更新)

本ページに記載する内容は、弊社情報サービス「海外環境法規制トレンドレポート」の第14号(2015年6月版)に収録する記事をサンプルとしてご提供するものです。

海外環境法規制トレンドレポートでは各国の重要規制テーマの解説と動向を年2回、約50件ずつまとめております。この機会に是非とも購読をご検討ください。

» 海外環境法規制トレンドレポートについて
» 海外環境法規制トレンドレポート 第14号(2015年6月版)目次

*

法律/政策の名称
  1. 有害物質規制法
  2. 連邦食品・医薬品・化粧品法
  3. 労働安全衛生法
  4. 連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法
現地語名称
  1. Toxic Substances Control Act(TSCA)
  2. Federal Food, Drug, and Cosmetic Act(FFDCA)
  3. Occupational Safety and Health Act(OSHA)
  4. Federal Insecticide, Fungicide and Rodenticide Act(FIFRA)
公布/施行日等
  1. 1976年制定、最新改正は2010年7月7日
  2. 1938年制定
  3. 1970年制定
  4. 1947年制定、最新改正は2007年

1. バックグラウンド情報

規制の枠組なし

すくなくとも連邦レベルにおいては、ナノマテリアルに関して、確たる規制の枠組が出来上がっているわけではない。そもそも、ナノマテリアルとは何かということについて法的根拠のある定義がどの政府機関においてもまだなされていないし、ナノマテリアルが健康と環境におよぼすリスクの管理に特化した法律や規則が実施されているわけでもない。

では、ナノマテリアルの規制はどのようにおこなわれているかというと、上の表に示したような既存の法律にもとづいて各規制機関が個々の問題ごとに対応しているというのが現状である。

ナノマテリアル規制の所轄官庁

  • 環境保護庁(EPA):
    おもにふたつの法律――有害物質規制法(TSCA)と連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)――を根拠に規制をおこなっている。
  • 労働省労働安全衛生管理局(OSHA):
    おもに労働安全衛生法(OSHA)にもとづき、労働安全衛生面での規制をおこなっている。
  • 保険社会福祉省食品医薬品局(FDA):
    おもに連邦食品・医薬品・化粧品法(FFCDA)にもとづき、食品、医薬品、医療機器、および化粧品に含まれるナノマテリアルの規制をおこなっている。
  • その他:
    上記のほかに、ナノマテリアルの規制には、保健社会福祉省疾病対策予防センター(CDC)の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)なども関わっている。

2. 最近の主な動向

EPA、ナノマテリアル報告・記録保存規則案を公表:

EPAは2015年4月6日、特定の化学物質がナノスケールで製造または加工される場合に製造者や加工者にその報告と記録保存を義務づける規則案を官報で公表し、90日間の意見募集を開始した。この規則案による報告は、化学物質データ報告(CDR)規則の場合とちがい、定期的にではなく、最初の1回だけでよい。

EPAは現在、新規化学物質がナノマテリアルとして製造または加工される場合に、事前にその安全性を確認するための審査をおこなっている。今回の規則案は、すでに市場に出回っている化学物質についても、ナノマテリアルとして製造または加工される場合には曝露情報や健康と安全に関する情報をTSCAにもとづいて集めようというもので、こうした目的でEPAがTSCAによる権限を行使するのはこれが初めてとなる。

報告すべき内容:

この規則案がナノマテリアルの製造者や加工者に求めている報告内容は、概略、以下のとおりである。

  • 化学的特定名などの物質情報
  • 生産量
  • 製造と加工の方法
  • 曝露と排出に関する情報
  • 環境と健康への影響に関する既存のデータ

今回の規則案は、ナノスケールのマテリアルが健康や環境に有害であると結論づけているわけではない。EPAは、提案されているこの規則によって収集した情報を、さらなる情報の収集が必要かどうかを含めて、TSCAのもとでのさらなる措置が必要かどうかの判断材料に使うとしている。

NIOSH、カーボン・ナノチューブの職業曝露を調査:

カーボン・ナノチューブ(CNT)への曝露が懸念されるなか、保健社会福祉省疾病対策予防センター(CDC)の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は2015年4月、CNTを製造または使用している職場13ヵ所と、カーボン・ナノファイバー(CNF)を製造している職場1ヵ所を対象に実施した職業曝露に関する調査の結果をAnnals of Occupational Hygiene誌上で公表した。

この調査では、上記の職場の労働エリアと個人呼吸ゾーン(PBZ)――労働者の鼻と口から半径0.3メートル以内――における吸引性(鼻腔や気管に捕まる100マイクロメートル超の)および吸入性(肺胞まで到達する10マイクロメートル未満の)元素状炭素の質量濃度が測定された。また、集塊状および繊維状のCNTおよびCNFの量と大きさを調べるため、透過型電子顕微鏡(TEM)による分析もおこなわれた。

調査結果の概要:

調査の結果、ほとんどのケースにおいて、CNTとCNFの濃度はNIOSHが推奨する曝露限界――吸入性微粒子サイズの元素状炭素の8時間加重平均で1立方メートルあたり1マイクログラム――以下だった。また、CNTの製造サイトと使用サイトを比較すると、製造サイトのほうが濃度が高い傾向が見られた。

PBZにおける元素状炭素濃度の8時間平均は、吸入性炭素が1立方メートルあたり0.16マイクログラム、吸引性炭素が同0.38グラムだった。TEMによる分析では、8時間平均で1立方センチメートルあたり0.003本のCNTまたはCNFが検出された。最も多く見つかったCNTは、大きさが2ないし5マイクロメートルの集塊、および5マイクロメートルを超える集塊だった。

PBZで採取された全サンプルのうち、96%がNIOSHの推奨曝露限界以下だった。吸引性炭素の濃度が吸入性炭素の濃度より高かったことの原因についてNIOSHの研究者らは、ほとんどのCNTおよびCNFが集塊状であるためとしている。したがって、職業曝露が起きるとすればそれはおもに比較的大きな吸引性の集塊によるものと考えられるが、吸入性の炭素の濃度が曝露限界を超えていたサンプルもわずかながらあった。

研究者らは結論として、比較的大きな集塊が健康におよぼす影響についてさらなる情報が得られるまでは、吸入性と吸引性の両方の元素状炭素をモニターして浮遊CNTへの労働者の曝露を評価したほうがよいとしている。

ナノシルバー規制の動向:

環境NGOらによれば、米国市場には現在、ナノシルバーの使用を謳った製品がおよそ500種類出回っているという。こうした製品を、環境NGOらは連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)のもとでの抗菌剤ないしは駆除剤として規制するよう、2008年から求めてきた。

抗菌効果を謳ったナノシルバー含有製品の規制は、EPAとFDAが所轄している。FDAは現在、ナノシルバー含有石鹸など、ヒトや動物に使用するいくつかの製品を規制している。いっぽうEPAは、2008年以来、ナノシルバー含有製品に関してはごく一部の例外を除いてこれといった具体的な規制を実施してこなかった。こうしたEPAの姿勢に対して、環境NGOのなかには、EPAの対応が遅すぎるとして同庁を相手取って訴訟を起こす団体もあらわれた。

このような状況にあって、EPAは、米のNPOである国際技術評価センター(ICTA)が2008年5月1日にEPAに対してナノシルバー含有製品を駆除剤として規制することを求めておこなっていた請願に、2015年3月19日付で回答した。以下はその要旨である。

  • EPAは、ナノシルバーを含有する製品を、それが駆除剤としての使用を意図したものであれば、たとえ駆除剤であるとの明白な主張がない場合でも、FIFRAのもとでの駆除剤として扱う。
  • EPAは、ナノシルバーを含むすべての製品が駆除剤のカテゴリーにはいり、駆除剤として規制されるべきであるとのICTAの主張を退ける。
  • 何が駆除剤であるかの判断基準については、EPAは今後も、ケースバイケースで適用していくこととする。
  • 駆除剤製品中にナノシルバー成分を使用することによる健康および安全面での影響を精査せよとのICTAの要求については、EPAはこれを受け容れる。
  • ナノ駆除剤に関するEPAの意思決定が環境におよぼす影響を、国家環境政策法(NEPA)にしたがってEPAは評価すべきとのICTAの主張については、EPAはこれを退ける。
  • すべてのナノシルバー製品が駆除剤であるとの認識のもとに、国内で販売されているかまたは流通している未登録駆除剤への取組を強化する戦略をとるべしとのICTAの要求については、EPAはこれを退ける。

3. 今後の展開と展望

ナノマテリアル報告・記録保存規則案の今後:

「最近の主な動向」で紹介したナノマテリアル報告・記録保存規則案への意見募集は2015年7月6日に終了する予定になっている。その後、この規則案が最終規則としていつどのように制定されるのかは、まだ明らかになっていない。

4. Envix見解

TSCAにもとづくナノマテリアルの規制について、EPAは以前から、同法section 5(a)(2)にもとづく重要新規利用規則(SNUR)と、section 8(a)にもとづくナノマテリアル報告・記録保存規則の制定を提案して行政管理予算局(OMB)に審査を仰いでいた。しかし、EPAは2014年10月にSNUR案のほうを取り下げた。この案は、指定されたナノマテリアルを新規用途のために製造、輸入、または加工しようとする者に対し、すくなくともその90日前までにEPAに届け出ることを義務づけるもので、これは多くの電子機器メーカーに大きな影響をおよぼすおそれがあった。国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)が指摘しているように、「この10年間に製造された高性能の電子デバイスはほとんどが何らかのナノマテリアルを使用している」からだ。

だが、ナノマテリアル報告・記録保存規則のほうはもとの提案のまま残され、EPAはいま、この規則の制定を推進しようとしている。

5. その他関連動向

有害物質規制全般に関する動向については、本トレンドレポート米国編の「有害物質規制(TSCA、CPSIA)」を参照されたい。

また、重要新規利用規則(SNUR)に関する動向については、本トレンドレポート米国編の「有害物質規制(TSCA:SNURに焦点を当てて報告)」を参照されたい。

以上、「海外環境法規制トレンドレポート」第14号(2015年6月版)に収録。

ご注文・お問い合わせ

製品のご注文、お問合せは「製品注文・お問合せフォーム」、またはお電話にて承ります。
電話番号: 03-5928-0180(平日10時~17時受付)

製品注文・お問い合わせ

ご注文から納品までのプロセス:

  1. 注文フォームを入力後、弊社担当者よりメール添付で納品いたします(一部製品を除く)。
  2. 後日、弊社より請求書をご郵送します。