インド、水質汚染・水資源管理(2015年6月更新)

本ページに記載する内容は、弊社情報サービス「海外環境法規制トレンドレポート」の第14号(2015年6月版)に収録する記事をサンプルとしてご提供するものです。

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法律/政策の名称 水質汚染(防止および管理)法およびその他の関連法令
現地語名称 Water (Prevention and Control of Pollution) Act, 1974など
公布/施行日等 1974年3月23日公布、本法はインド全土に適用されるわけではなく、施行日は州により異なる。1988年改正。

1. バックグラウンド情報

インドでは、人口増加や急激な都市化、インフラの未整備などにより、水質汚染および水不足が大きな問題となっている。同国では、人口が5万人以上の都市から排出される汚水量が1日当たり380億リットルであるのに対して、汚水処理能力は1日120億リットルしかない。垂れ流された汚水は河川に流入し、ガンジス川をはじめとする動向河川は、深刻な汚染問題を抱えている。また、都市部と中心に、同国では水供給量が不足しており、地下水の過剰搾取も懸念されている。インドは世界最大の地下水利用国であり、その使用量は、年間230km3に達する。この値は、世界の全地下水使用量の4分の1以上に当たり、現在の状況が続けば、同国の地下帯水層の60%は今後20年間で危機的な状況に陥ると予想されている。

実際、同国の多くの地域はすでに水不足に直面し始めている。インドは世界の人口の18%を抱えているが、水資源をみると世界の4%を有しているにすぎない。このことにより、インドは節水のための効果的な方策を執る必要に迫られている。国民1人あたりが1年間に使用できる水の量は1947年の6042m3から2011年に1545m3にまで低減している。水資源省の試算によれば、国民一人当たりが1年間に利用できる水の量はさらに減り、2025年まで1340 m3に、そして2050年までに1140 m3 になるという。さらに、インドの年間の必要水量は2050年までに1兆1800億m3になると予測されている。一方で、現時点で1年間に「利用可能な」水の量(地表水+地下水)は潜在的には1兆1230億m3 にとどまっている。

水質汚染(防止および管理)法の制定(1974年):

同国では、水質汚染を防ぎ、水資源を安定的に管理するため、同国では1974年に水質汚染(防止および管理)法が制定された。本法は、基準を超えて汚染物質を水系に排水することを禁じるとともに、中央政府に対して中央公害管理委員会(CPCB)を、また州政府に対して州公害管理委員会(SPCB)を設立するよう規定している。本法は、実質的に、インドで最初に制定された環境規制であり、同国の基本的な環境保護法である“環境(保護)法(1986年制定)”より以前に制定された。

ところで、インド憲法は水に関する管理権限を州に与えており、原則として連邦レベルでは水に関する法律を制定できない。従って、本法は無条件にインド全土に適用されるものではなく、本法を受け入れるとの議決が州議会でなされた州にのみ適用される。

水に関する排水基準:

産業施設から排出される廃水の排出基準は、環境保護法の下位法令である“環境(保護)規則(Environment (Protection) Rules, 1986)”にて規定されている。本規則に基づき、同国では、特定の産業施設を対象とした排水基準および、それ以外の施設を対象とした一般的な排水基準が策定されている。

2. 最近の主な動向

中央公害管理委員会、高汚染事業者に対して排ガスおよび排水のオンライン・モニタリングシステム導入を要求

インド中央公害管理委員会(CPCB)は、2015年3月、州レベルの公害管理委員会に対する2件の指示書を発し、この中で、産業界に対して、排ガス・排水のオンライン・モニタリングシステムを2015年6月30日までに導入するよう命令した。以下、当該2件の指示書について概説する。

  • 高汚染産業を対象とする指示書(2015年3月2日付け指示書)
    本指示書は、国内すべての州の17の高汚染産業および排水処理施設と有害廃棄物焼却施設に対して、排ガスおよび排水のオンライン・モニタリングシステム導入にかかるコストの100%に相当する金額の銀行保証を提出するよう義務付けている。対象企業は、2015年6月30日までにオンライン・モニタリングシステムを導入しなければならず、導入すれば、銀行保証金が解除される。17の高汚染産業とは、大規模製紙・パルプ、酒造、製糖、皮革、肥料、大規模発電、セメント、アルミ、亜鉛めっき、銅、鉄鋼、石油化学、石油精製、クロル・アルカリ、染料・染料中間体、農薬、医薬品である。なお、6月30日までにシステムが導入できない場合には、銀行保証金の没収および操業許可(Consent to Operate)の取り消しを行う旨が、指示書にて記載されている。本件に関する指示書は、以下のURLより閲覧できる。
    http://cpcb.nic.in/Directions23-03-15.pdf
  • ガンジス川およびその支流に排水を行う事業者を対象とする指示書(2015年3月27日付け指示書)
    本指示書は、ガンジス川流域の11州の高汚染事業者(GPI:Grossly Polluting Industries)に対して、排水のオンライン・モニタリングシステム導入にかかるコストの100%に相当する金額の銀行保証を提出するよう義務付けている。対象企業は、2015年6月30日までにオンライン・モニタリングシステムを導入しなければならず、導入すれば、銀行保証金が解除される。11州とは、ウッタラーカンド州、ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州、デリー、ハリヤナ州(一部)、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ラジャスタン州、マディヤ・プラデーシュ州、チャッティースガル州、ジャールカンド州および西ベンガル州であり、GPIリストに掲載される事業者は、この義務の対象となる(EnviXコメント:これらの11州は、2014年2月にすでにCPCBからガンジス川およびその支流に排水を行っているGPIのリストを作成するよう要請されているが、このリストが作成、公表されているかどうかは不明)。なお、6月30日までにシステムが導入できない場合には、銀行保証金の没収および操業許可(Consent to Operate)の取り消しを行う旨が、指示書にて記載されている。本件に関する指示書は、以下のURLより閲覧できる。
    http://cpcb.nic.in/Direc18(1)(b)_27032015.pdf

水消費量の増加により求められる節水対策

2014年12月末に現地で報じられたところによると、インド国内の各州において企業から徴収された水税の総額が、過去3年間で合計約4億ルピー(約7億5500万円)増加したことがわかった。中央政府に収めた水税の額で上位5位を占めた州は次のとおりである:ウッタルプラデシュ州、統一アーンドラ・プラデーシュ(AP)州(AP州+テランガーナ州)、マハーラーシュトラ州、クジャラート州、およびパンジャーブ州。1977年に制定された“水質汚染(防止および管理)税法(Water (Prevention and Control of Pollution) Cess Act, 1977”は、州の公害委員会に対し、企業および地方自治体の機関が使用した水の量に基づいて水税を収集するよう義務づけている。この水税は、インドの汚染を低減する措置のために使用されている。現在、1日の水の消費量が10キロリットル未満の企業を除くすべての企業に水税が課税されている(ただし、この適用除外は有害廃棄物を排出する企業には適用されない)。公表された数字によれば、すべての州および連邦直轄地域で徴収された水税の額は合計で以下のとおりである。

  • 2011~12年度 22億180万ルピー(約41億9000万円)
  • 2012~13年度 22億619万ルピー(約42億7000万円)
  • 2013~14年度 26億173万ルピー(約49億4100万円)

水税として徴収される額は決して大きなものではないものの、その増加傾向はインドの企業が使用する水の量が徐々に増加していることを示唆している。中央政府が掲げる「Make in India(インドでものづくりを)」との目標の下で、製造業企業の水使用が増えることは必至であり、インドの国民一人当たりが利用可能な水の量はここ何年も減少していることに鑑みれば、水の節約がますます重要な課題となってくる。現在、インドの工業セクターは国内で利用可能な水の合計量のうち約6%を利用しており、他方で70%の水を農業セクターが利用している(灌漑利用)。インド商工会議所連合会(FICCI)が2011年に実施した調査では、工業セクターの水需要は利用可能な水のうち、2025年に8.5%、2050年に10.1%を占めるとの予測が示されている。

WBCSD、インドの持続可能な水資源管理のためのツールをリリース(2015年2月)

2015年2月27日、インド工業連盟(CII)のイベントWater India 2015において、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)はIndia Water Tool(IWT)の新バージョン(IWT 2.0)を発表した。IWTは、ユーザーが水リスクを理解し、持続可能な水管理のために優先すべき行動を理解するためのシステムである。WBCSDのリードの下、10の企業(ACC、Ambuja、Aditya Birla Group、BASF、ITC、Jain Irrigation、Mahindra、Monsanto、Nestle、およびPepsiCo)と3つのシンクタンク(世界資源研究所[World Resources Institute]、CII-Triveni Water Institute、およびSkoll Global Threats Fund)メンバーとするワーキンググループにより、インドのために共同開発されたツールである。

このIWTは、ユーザーが水リスクを計測・マッピングすることを可能とし、これを通じて水不足の課題に対する対応策を支援するものである。誰にでも利用可能な、ユーザーフレンドリーな設計のこのツールは、インドの政府機関から提供された14の利用可能なデータセットに加えて、世界資源研究所およびコロンビア水センターが公開している水ストレス指標(water stress indicator)を統合するものである。WBCSDによれば、IWT 2.0オンラインプラットフォームを使用することで、ユーザーは重要かつ包括的なデータへのアクセスとその分析を容易に行うことができる他、水リスクのマップを作成し、あるいは重要な水リスクを捕捉するために選定された指標が含まれたExcelベースのスプレッドシートをエクスポートすることができる。さらに、IWTを利用して新たな土地を対象とした第一段のスクリーニングを行い、企業および投資家による潜在的リスクの評価に役立てる他、グローバル・レポーティング・イニシアティブやCDP Water、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスなどの情報開示イニシアティブのためのアウトプットを提供する役割も果たすという。

当局も水に対する意識を高め、法令違反の取り締まりを強化――水リスク拡大の兆し

(1)水源保全のためコカコーラ社の製造工場建設予定地の借地契約を解消、50億ルピーの製造工場計画は白紙に戻る――タミル・ナードゥ州

インド南部に位置するタミル・ナードゥ州の産業促進公社(SIPCOT:State Industries Promotion Corporation of Tamil Nadu)は、2015年4月20日、契約不履行を理由に、コカコーラ社に対して土地の借地契約を解除した旨を通知した。コカコーラ社のインド子会社Hindustan Coca-Cola Beverages Pvt Ltd(HCCBPL)は、同州のペランドュライ(Perundurai)に50億ルピー(約93億5000万円)の製造工場を建設することを目指し、同州政府と土地のリース契約を結んでいた。しかし、製造工場が与える水源への影響を危惧した周辺住民や農家の人々による活発な抗議活動、および政府の許可の遅れのため、コカコーラ社の計画は困難に直面していた。契約解除の通知を受けた直後の4月22日、同社は声明を発表し、予測できなかった数々の問題のためにプロジェクトを断念することを明らかにするとともに、同社がこれまでに支払った全額を返還するよう州政府に請求していることを発表した。

タミル・ナードゥ州では、抗議者が製造工場の建設に2年間反対し続けていた。同地域ではすでに水不足の問題が深刻であったため、同製造工場が1日に200万リットルの水を使用することが地下水の水位を下げ、有害化学物質を含む工場廃水による水質汚染を引き起こす可能性があると彼らは主張した。いっぽう、HCCBPLは地下水およびインド南部を流れるカーヴィリ川から製造工場が使用する水を取水せず、水源の汚染を引き起こすことはないと主張したが、HCCBPLの水資源管理および汚染防止に関する低い実績を強く懸念するコミュニティの理解を得ることはできなかった。コカコーラ社が発表した同声明文によると、これらの問題に対処するために最大限の努力を注いだが、同計画に反対する抗議活動や政府から許可を得ることに過度の遅れが生じたことなど、予期できなかった問題が生じたため、製造工場の建設計画を実施することができないという。

(2) 雨水収集システムに不備がある高級ホテルやモールに罰金――地下水保全のため

インドの環境裁判所は、2015年5月18日、首都デリーに位置する3件の高級5つ星ホテルに合計90万ルピー(約180万円)の罰金を科すことを決定した。これらのホテルは、当局が注意したにもかかわらず、雨水収集システムの設置を怠ったか、または設置されていても正常に稼動していなかった。デリーでは、地下水の過剰採取による地下水面低下が大きな問題となっており、同裁判所は、2013年以降、病院、ホテル、政府系建物および民間の建物に対して雨水収集システムの設置を求めるいくつもの命令を出している。このたび罰金が命じられた3件のホテルとその違反事例概要は、以下の通りである。

ホテル名 違反概要 罰金額
Hotel Excelsior Ltd
(シャングリラホテル)
雨水収集システムNo.1:
よどんで悪臭を放った水を確認。またシステムのサイズが測定できず、施工者もそのデータを提示できない。
雨水収集システムNo.2:
システムがごみに埋もれており、検査不能。
50万ルピー
(約100万円)
DoubleTree by Hilton Hotel New Delhi – Noida – Mayur Vihar
(ダブルツリーbyヒルトン・ニューデリー・ノイダ・マユール・ビハール)
3つのすべての雨水収集システムが汚い水で満たされている、または浸水している。
タンクがあふれること防ぐ排水管が、下水網に接続されている。
20万ルピー
(約40万円
Crowne Plaza New Delhi Mayur Vihar Noida
(クラウン プラザ ニューデリー マユール ビハール ノイダ)
3つうちの2つの雨水収集システムが汚い水で満たされている、または浸水している。
3つのシステムすべてで、タンクがあふれること防ぐ排水管が、下水網に接続されている。
20万ルピー
(約40万円)

また、これに先立つ2015年5月11日、同裁判所は、デリー市内の複数の病院、モールおよびホテルに対して、雨水収集システムの不備を理由に同様の罰金命令を出しており、最大で75万ルピー(約150万円)の罰金が命じられた。

3. 今後の展開と展望

インドでは、水資源の重要性に対する認識が高まってきている。上述のIndia Water Tool(IWT)に関して、現在CII-Triveni Water Instituteの主導の下、新たなバージョンであるIWT 3.0の開発に向けた作業が進められている。

4. Envix見解

水資源はその分布に地域差があるものの、インドでは、水質汚染および水不足に対するリスクが日々増加している。経済発展とともに、河川や湖沼では水質汚染が深刻化、また利用可能な水資源に対するストレスもますます高まっている。水ストレスをめぐる状況は、その地域により偏りがあるので、同国で継続的、安定的に事業を行うためには、まず、その事業場所の水リスクを特定し、そのリスクが高い地域であれば、雨水収集や排水リサイクルなど、可能な限りの手段を通して水の有効利用を推し進める必要がある。

以上、「海外環境法規制トレンドレポート」第14号(2015年6月版)に収録。

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